魔法で生きる、この世界

㌧カツ

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Episode.1 これが始まりの物語

13話 その魔法、どんな魔法?

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「もう帰って良いですか?」
 青緑色の服に身を包んだ衛兵と話をし始めてから約二十分。
 僕は未だに役所から解放されずにいた。

「でもね? あの現場を見た一人が言ってるんだよ。突然何も無いところから赤い閃光が現れ、犯人の服を貫いた。って。君も周りの人達も詠唱した気配は無かった。それなのに何故魔法が発動するんだ? って何回も聞いてるよね?」
「知りませんよそんなこと。誰かが隠れて詠唱したとかじゃないんですか? って何回も答えてますよね?」
 それだけは、絶対に言うわけにはいかない。
 あの操作魔法を知る人は少ないほうがいい。少ないほうが、噂が広まりにくい。

 このやり取りは、もう何回目だろうか。

 繰り返し行われる質疑応答に疲れを感じ、先に折れたのは衛兵の方だった。
「はぁ……分かったよ。その点についてはもう言及しないことにする。だからその代わり、何かあったら直ぐにここに来てくれ。いいかい?」
「……はい」
 僕が子供だからということもあるのだろうか。
 それ程重くは見られていないようだが、あまりいい印象は受けなかったかもしれない。

「それでは、僕はこれで……」
「あ、ちょっと待ってくれ」
 帰ろうとした僕を引き止める衛兵。まだ何かあるのか?

「はい、なんでしょうか?」
「君が使った魔法は、どんな魔法なんだ?」
 そんなこと聞くまでもなく、あれは『熱光線ヒート・レイ』だと見たら分かるだろう。
 と思ったのだが、ただの『熱光線ヒート・レイ』とは思えない速度で、そのうえ当たった瞬間消えるというのは、とてもじゃないが『熱光線ヒート・レイ』には見えない。

「何って……ただの『熱光線ヒート・レイ』ですよ」
「はは、そうか。あれがただの『熱光線ヒート・レイ』、か……」
「あれ? まるで見てたかのような口ぶりじゃないですか」
 僕がそう言うと、衛兵は少し驚いたような表情になり、答えた。

「あぁそうさ、ちゃんと見てたよ。この目でしっかりと、見せつけられた」
 そこから衛兵は一言も喋らず、ずっと上の空で、どこか遠くを見ているようだった。

「じゃあ、今度こそ僕はこれで帰らせていただきますね」
 衛兵に声をかけ、僕はその場から立ち去ろうとしていた。

 どんな魔法、か。
 あの鍵に掛けられていた魔法、店長に直接聞けば分かるだろうか。

 いや、もう忘れることにしよう、そうしよう。

「分からないことは、考えれば考えるほど答えが気になってしまう。人ってのは、そんなもんなんだ」
 なんて、ちょっと知ったようなことを言い過ぎかな。

 さて、そろそろ冒険者ギルドに行かないと。
 さっきからいろんな事件で行けないままだから、早く行きたいんだよな。


---------------------------------------


 役所から歩き始めて約三分、僕はレンガ造りの大きな建物の前に立ち尽くしていた。
「ここが、ファストの街の冒険者ギルド……」
 いや、なんていうか、予想以上に大きい。

 これ何階建てなんだろう?
 えっと、窓の数からして……
「三……いや四? ……よ、よん!?」

 四階建ての建物なんて、今までほとんど見たことがない。
 普通サイズの街でこれなら、王都にある冒険者ギルドなんてどんな大きさなんだ……

「とりあえず中に入ろう、うん」
 少し圧倒されてしまったが、まぁ問題ない。
 僕はドアノブに手をかけてゆっくりとドアを……

 ――ドーン!

「おっと」
 問題しかなかった。
 静まり返るギルド。中にいた人々の視線を一斉に受け、思わず固まる僕。

 キィ……キィ……

 とりあえず、何か言わないと。

「えっと、失礼致しました?」
 ……や、やばい。何を言ってるんだ僕は。
 これは、確実にまずいパターンだよな……

「はっ……」
「は?」
 ここは子供の来るところじゃねぇぞ、とか言って馬鹿にされるんだろうな……

 と思っていたのだが。
「はははははっ!」
「え?……えぇ?」
 一斉にギルド中に笑いが広がっていく。
 その中で笑いが治まった一人が、困惑していた僕に声をかけてきた。

「はー……大丈夫か? ちょっと緊張しすぎじゃないか?」
 突然声をかけられたので、少し応えるのに時間がかかった。
「あ、いや、大丈夫……じゃないかもしれません」
 この状況で、大丈夫だ、なんて見栄張れないよな。

 僕がそう言うと、その男は少し微笑んで、
「そっか、じゃあ俺が案内してやるよ。今日は何をしに来たんだ?」
と言った。

 案内とは、そりゃあ有難い。初めて来たもんで、ちょうどどうしようか困ってたところだし。
「ありがとうございます。……今日は、この辺りの地図を買いに来たんですけど」
「地図か……それなら奥から二番目のカウンターで買えるよ。一応付いていってやろうか?」
 せっかくだからお言葉に甘えたいところだが、別にそこまでして貰わなくてもいいんだよなぁ……

「遠慮することないんだぜ? 俺は結構暇なんだよ」
 まぁ、朝からこんなところで騒いどいて忙しいなんてことは無いだろうな。
「おいおい、俺達とワイワイやっといて、暇なんて言うなよー」
「暇だから一緒に騒いでるんだよ。ていうかお前ら、いつから呑んでんだ」
「うるせー。いつでもいいだろー」
 いやいや、いいことなんてあるか。
 この口ぶりからして、結構前から呑み続けてるんだろうな。

「よくねーよ、そんなことしてる暇があるんならクエストでも受けて……」
「あーはいはい、分かりましたよー。全く、ギルマスさんはお堅いねぇ。ていうか、あんたもさっきまでここで」
「うるせえ! 余計なこと言うんじゃねえ!」

 ……は?

 いや、ギルドマスターって、え、この人が?
「なんでギルドマスターだって、そう言ってくれなかったんですか」
「あ……いや、てっきりみんな知ってるもんだと思って、ました」
 なんていうか、この街色々と大丈夫なのか?

「はぁ……」
「う……あ、ほら、早く地図を買いに行こう。ね?」
 思わずため息をついた僕を見て、彼、ギルドマスターは慌てたようにそう言った。
 まぁ最初からそのつもりだったからそれはいいんだけど。

 案外こんなに離れた場所でも、楽しく暮らせそうだな。

 僕は何やら言い合っているギルドマスターさんと先程の客を見て、そんなことを思っていた。


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 今回も閲覧していただき、ありがとうございます。

 前回ロトルがスリの脛を蹴り、スリが呻き声を上げているシーンがありました。
 物攻1のロトルに脛を蹴られても痛くないんじゃないか、と思うかもしれませんが、あれはロトルに蹴られたというよりも脛を蹴られたことが痛かったというだけです。
 物攻1の設定を忘れていたわけではありません。

 ほ、本当ですよ?^^;
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