魔法で生きる、この世界

㌧カツ

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Episode.2 君と再会、冒険の始まり

4話 エラメル洞窟

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 ――あの日は、星が綺麗だった。
 雲一つない空の上、様々な星が輝いて見えた。
 街も、その日だけは闇に包まれていた。

 ――あの日は、星が見えなかった。
 降りしきる雨の中、俺は君を探して彷徨った。
 でも、君は何も残さずに消えてしまった。


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 あの日は、あの後無事に薬草を採集完了し、また一つクエストをクリアした。
 冒険者ランクとともに周囲からの期待も高まったが、もう僕はその辺を気にしないことにした。期待するなら勝手にしててくれればいい。
 そんなことよりも、だ。冒険者ランクがFからEになったことで、受けられるクエストが増えたのだ。
 これは行くしかない。小遣い稼ぎのためにも。

「エラメル洞窟に生息するマッドスパイダーの討伐……か」

 報酬は銅貨20枚。
 蜘蛛は少し苦手だが、エラメル洞窟とやらに行ってみたい気持ちもある。

「うーん……」

 少し迷ったが、やはり行くことにしよう。蜘蛛だって足を切断して倒す訳でもないんだし、そこまで悲惨な光景になることは無いだろう。
 僕はそこまで考えると、張り出されていた紙を剥がし、クエストを受注するカウンターへ向かった。

「すみません、このクエスト受けたいんですが」

「あ、はい。分かりました。では、冒険者カードをお願いします」

 「またか」みたいな顔をしつつも、受付嬢は僕が差し出した冒険者カードを受け取り、紙にかざす。カードの光が少し強くなったかと思うと、すぐにその光は収まり、元の淡い光へと戻る。

「はい、登録が完了しました。お気を付けて、行ってきてください」

 全くそんな心配はしていなさそうな顔で、受付嬢はそう言った。

「いやいや、一日でこれだけやったんならまだしも、一日日をまたいでるんだからさ」
 いやいや、どこに二日でクエスト三つも受ける十三歳が居るんだよ。
 ロトルはかなり常識から外れた発想をしているようだが、本人はそれに気づかない。

 マッドスパイダーというと、俊敏な動きで冒険者を惑わし、蜘蛛の糸で動けなくしたところに攻撃を仕掛けるという、頭が良く残虐な魔物だと聞いている。
 しかし強力に見えるのは噂だけで、一度糸を吐くとその俊敏な動きは衰え、その蜘蛛の糸も『火球ファイアボール』で溶かせるという始末。
 この魔物がEランクのクエストの討伐対象なのは十中八九このせいであろう。
 そして魔法使いが居ると攻略が楽になるというこのクエストは、恐らくパーティーを組ませるためのギルドの策略と見える。パーティーを組めばこれ以降のクエストもクリアしやすくなり、ギルドへの貢献にもなる。

 そして案の定、僕がEランクになったと聞きつけ、パーティーを組んでくれという戦士共が現れたが、丁重にお断りした。パーティーなんて御免だ。いつ秘密が漏れるか分からない。

「じゃ、エラメル洞窟に行きますか」

 エラメル洞窟は、ファストの森に行く道を西に外れたところにある。外れた、と言っても、道はしっかりと作られており、迷うようなことはまずない。
 僕は昨日とは違ってその道に進み、エラメル洞窟を目指す。
 今回はちゃんとヒールポーションも買ったし、一本しかなかったマナポーションも補充しておいた。普通に挑んで死ぬことはまず無いだろう。

「怖いのが、昨日みたいに油断して死にかけることなんだよな……」

 あの時は本気で死ぬかと思った。意識が薄れ、自分が分からなくなる感覚は、僕を恐怖と混乱に陥れた。あんな目には、もう会いたくない。

「ここが、エラメル洞窟か」

 周りを岩で覆われたその洞窟。入ってみると、壁に緑色に輝く宝石のようなものが埋め込まれており、その石が放つ光のおかげで洞窟の中は少し明るかった。

「敵は……あ、いた」

 スライム。それはいつの日か僕を二度も苦しめた最弱モンスター。
 だが大量発生しない今、それは敵ではない。

「『火球ファイアボール』」

 詠唱とともに小さな火の玉が発生し、放たれる。それは目の前にスライムに命中し、その役割を終えた。
 一方スライムは、火の玉が当たると同時に弾け、そのまま消えた。

「うん、やっぱりスライムはスライムだな」

 所詮はスライムなのだ。だが『火球ファイアボール』でも弾けるその体は、素材に使うことも出来ない。ただ体力と魔力を吸って消える。

「全く、迷惑な魔物で――ん?」

 僕はスライムへの愚痴を呟いている時、前方に違和感を感じる。
 何かの気配を感じる。だが、それはスライムのものでもゴブリンのものでも無い。

「ということは、これは」

 マッドスパイダー。討伐対象である魔物だ。
 マッドスパイダーは素早く、魔法を撃っても当たらない。だから蜘蛛の糸を吐いて動きが鈍くなったところを狙う。

「マッドスパイダー、うまく倒せるだろうか」

 距離が縮まり、こちらに気づいたそいつを見ながら、僕はそう言った。
 負ける気は無いし、負ける気がしない。目標は一つ、マッドスパイダーを五匹倒すだけ。


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 エメラル洞窟じゃなくて、エラメル洞窟です。
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