魔法で生きる、この世界

㌧カツ

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Episode.2 君と再会、冒険の始まり

6話 パーティー

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 あの後ミクトは自分が泊まっている部屋に戻り、それぞれで夜を明かした。ミクトに会えたことは驚きだったが、僕にとってはそれよりも大切なことがもう一つあった。
 何故僕の記憶が無く、その空白の時間に僕の身に何があったのか。そういうことだった。

「何がきっかけであの状態になったのか……」

 昨日はあれほど感じていた不気味な感覚も、今は不思議と薄れていた。そのことを考えても、特に何かを感じるようなことは無かった。
 だが、何がきっかけでああなったのか。それを突き止めて対策しなければ、これからもこういうことが起こるかもしれない。あの時僕は何を思っていたか……

「やばい、って思ったよな。こいつを倒さないとって、そう思ったはずだ」

 ならば自分に危機が訪れるのがトリガーになり、その危機を回避しようとするということか? いや、違う。それならば何体も倒す必要はないはずだ。

「じゃあ何が……」

 危機が訪れるのがトリガーでないとしたら、他に何がある? あの時僕は思ったはずだ。
 やばい、って。こいつを倒さないと、って。ならば、その中に答えはあるはずだ。
 あの時は外部から刺激を与えるようなものは無かった。蜘蛛の脚だって、あれが届く前に、僕は突然変わったんだ。

「何が……ぁ?」

 そうだ。あの時僕は思ったんだろ、って。なら、それが答えなんじゃないのか? 魔物を『倒す』と思うこと。それがきっかけになるんじゃないか?

「そういえば……」

 本当にそういえばだが、最初にファストの森に行った時。あの時はゴブリンの焼死体を見ても何とも思わなかったし、次に行った時もそうだった。腹を貫かれて倒れるゴブリンは、かなりグロテスクなものだったはずだ。

「うっ……」

 駄目だ。やはり今思い出すと吐き気がする。
 だがこれできっかけは分かった。はっきりとはしないが恐らくこれで正解だろう。今日はクエストに行かずに、街を歩き回ろうかな。
 そう思い着替え始めた時、突然ドアが乱暴に開かれ、外から誰かが声をかけてきた。

「ロトル! クエスト手伝ってくれ!」

 お前は本当に、タイミングが悪いやつだな……
 だがまあ、ミクトも居るなら、倒れたとしても大丈夫だろう。

「外で待ってて」

「ありがとう! 早く来てくれよ!」

 声大きすぎるだろ。叫んでないと死ぬのかお前は。
 そう思いつつも、僕はさっさと着替えて宿の外へと向かった。


------------------------------------


「で? クエストって何しに行くの?」

 それが分からないことには、僕は何をすればいいのか分からないのだが。
 僕が聞くと、ミクトはすぐに大きな声で返してきた。

「ずばり、ゴブリンの討伐だ!」

「帰っていい?」

 それぐらい一人でやってくれないかいミクト君。そう思ったのだが、次の彼の言葉に少し惹き付けられるものがあった。

「まぁ待てよロトル。お前、パーティー組んだこと無いだろ?」

「パーティー……まぁ、ないけど」

 パーティーなんて組んだら、いつ秘密が漏れるか分からない。だから僕は一回もパーティーを組もうとは思わなかった。絶対に大丈夫という確信があるのなら組んでもいいが……あぁ、そうか。

「お前、僕の隠してること知ってるんだったな」

「そういうこと。俺となら心置き無くパーティーが組めるってわけだ」

 僕がそのことを思い出して言うと、彼はしたり顔でそう言った。
 あぁ、何かこいつ腹立つわ。やっぱり一緒に行くのやめようかな。
 そう思っていることがかなり顔に出ていたらしい。彼は少し慌てた様子で僕に喋りかけてきた。

「ごめん、ごめんって。一緒に来てくれるだけでいいから。出来ればパーティーも組んでほしいけど! 倒すのは俺がやるからさ!」

 ほう、倒すのは俺がやる、とな?
 それなら、僕が行かない理由はない。こいつのわがままに付き合ってやろうじゃあないか。

「そこまで言うなら、パーティー組んでもいいけど」

 僕がそう彼に告げると、彼はすぐに目を輝かせて言った。

「マジか! ありがとうロトル!」

 お前テンション高すぎだろ。こいつと一緒にあの森行って大丈夫かな……
 前の僕のように、油断して殺されかけたりしないだろうか。

「じゃあ、早く行こうぜ」

「あ、ちょっとまって」

 僕は催促する彼の横を通り過ぎ、よろず屋へと向かう。

「すみません、ヒールポーション二つください」

「ヒールポーション二つね。大銅貨一枚だよ」

「あ、銀貨でいいですか」

「全然いいよー」

 お釣りとして大銅貨四枚を貰い、ミクトの下へと小走りで戻る。
 そして買ったばかりのヒールポーションのうちの一つを、彼に差し出しながら言った。

「はい、一本あげる」

「銅貨五枚だよな」

「いや、要らないよ」

「え、いいのか?」

「うん」

 銅貨五枚なら、すぐに集めることが出来る。別にそこまで気にしてもらう必要は無い。
 でも一応、選択肢は与えておこうかな。

「まぁどうしても払いたいって言うなら、クエストクリアの報酬で……」

「ありがと。貰っとくわ」

「おい」

 やっぱり心配だ。こいつ、冒険者やっていけるのか?
 まぁ、それがこいつの歩み方なら、僕は邪魔をしたりはしないけれど。
 ヒールポーションを片手に、ミクトは歩き出す。僕も慌てて追いかけ、横に並んで歩いて行く。

「ロトルは、森に行ったことあるんだよな」

「うん、二回ほど」

 ただ聞きたかっただけなのか、彼はそこから先は何も喋らなかった。
 長い沈黙が流れ、気がつくともう、ファストの森に着いていた。久しぶり、という程ではないが、でもやっぱり久しぶりに見た気がする。

「よし、行くぞ」

 ミクトが、そう言って森の中へと入っていく。それに続いて、僕もゆっくりと森の中へと入っていった。
 ミクトは、クエストをクリアするのにどれぐらいかかるだろうか。僕の場合は戦闘というよりも、魔法による一方的な攻撃だったが、彼は近接型なのでそう簡単には行かないはずだ。どう戦うのか、しっかり見ておこう。
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