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助言
「そこで何してるの。」
暗闇のため、その人の顔は見えず
大きな黒い影だけがそびえ立っていた。
「頼まれごとです。」
とりあえず、倒れた上体を起こして
立ち上がりながらそう告げた。
「頼まれごとって、誰から?」
「それは、言わないとだめなんですか。」
「別に俺はいいんだけどね、監督者の先生がうるさいんだよ。それに、ここは一般生徒は立ち入り禁止だから。」
あの担任は、本当に。何なんだ、これじゃあ踏んだり蹴ったりだ。
「担任からの頼まれごとです。」
「担任?担任の名前は、まさか桜崎先生?」
「そうですけど。」
その人は大きくため息をついた。
「じゃあ、俺は出て行きます。」
「ちょっと、待って。」
咄嗟に肩を掴まれて、ビクリと肩を揺らす。
「何ですか。」
「追われてるから。」
「追われてる?って、何に……っ!」
暗闇の中で、見る間に縮まった距離に声を上げる前に、突如、口を手で覆われ塞がれる。
その手を引き剥がそうとすれば
申し訳なさそうな声色で悪いなという言葉が降ってくる。
それとほぼ同時に、扉の外から男子にしては高い声をしている数人の男子生徒の声が聞こえた。
「早くどっかいって。お願いしますから。」
俺の口を塞いでいる人からしたら切実な願いであることはその様子だけでもよく分かった。でも、暗闇の中からの俺の視線に気づいてか謝りながら手を離し、距離を置く。
とゆうか、追われている状況というのが全く予想がつかない。
「何かしたんですか」
「は、ぇ、いや?!違う違う、何もしてない、断じて違う。」
「じゃあ、追われている意味が分からないんですが。」
「俺は、一応、誕生日なんだけど。
それで、プレゼント渡したいって追われてて少し困ってる。置き場所もなくなってきてるし。もういらないかな、と思って。
あと君、もしかして外部受験かな?
だったら、一つ忠告。ここは男からの告白なんて当たり前の世界だよ、中等部の頃からさ。」
「そうですか。ご忠告ありがとうございます。でも、その自信家みたいな発言はどうかと思いますけど。………後は、誕生日おめでとうございます。」
そう言うと
数秒遅れてからその人は
軽く笑ってそうだねと言った。
「……なまえ。」
「名前?」
「名前を教えて。何ていうの?確認のために聞いておきたいんだ。」
「………はる。」
瞬間
しまった、と思った。
どうしてか、するりと口から滑り落ちた
言葉を俺は後悔した。
__________まずい。
頭の中がそのことに占領され
桜崎先生には自分から渡すと言うので
その言葉に甘えてさっさと資料を渡して
その資料室を出た。
何時も肌見はなさずに持ち歩いていた
指輪がないことにも気づかずに。
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