花は何時でも憂鬱で

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chapter3

出会の小悪魔





教室で本を片手にペラペラとめくるが
集中できるはずもなかった。


その原因は、きっと今朝の情報のせいだ。
それと、もう一つ。


「ねぇ、昨日のスクリーンに映ってた人って誰なの?」

「あ、あの白い髪のっ?!」

「会長様に近づくなんて許せないんだけど。」

「でも、何処かで見たことある感じだったよね!」

「あんな目立つ人、うちの学校にいるかな?」

「少しだけど、副風紀委員長の白様に似ていらっしゃるような……。」


この話題でどこもかしこも盛り上がっている。
どうやら、うちのクラスは会長の親衛隊が多いらしく
その話題で持ちきりだ。


「集中できないな。」

開いていた本をパタリと閉じる。
じっと本を見ながら今朝のことを思い出す。


よほど気に入ったのか
結局、会計はいちご牛乳を三本ほど持ち帰った。
そして、思い出したかの様に会計は帰り際に告げた。


「昨日の勝負、正式なものじゃあ無かったけど。君のお願い叶えてあげようかな~、いちごなんたらのお礼にねぇ~。」

「お願い?」

「まだ、知らなかったんだ~。正式な勝負に勝てば
何でも望むものが手にできる。まぁ、それには色々と規則があるんだけどねぇ~。根グラくん、君のお願いはなぁに?」

「……無駄な干渉はやめてください。」

「成に近づかないでくれってことぉ?」

金色の瞳が冷たく細められた。

「あなたのいう弱者への干渉です。」

「ふぅん。別にいいけどさぁ、根グラくん。君は、それに入ってないけどいいのかなぁ?」

俺の様子を伺うような
視線を受けながら
クスリと口元を緩ませて会計は告げる。


「だって、君は。俺と同じ。こっち側の人間だからね。それに、昨日は負けたしねぇ。白組」

「それは……。」

「根グラくんのせいじゃあないけどねぇ、うちの広報がやらかしてくれたからねぇ。【特別ルール  その3 ゲーム不参加者がいた場合は、そのチームの負けとする】って決まりがあるからねぇ。俺にしては、譲歩してあげた方だと思うけどぉ?」

会計は、いちご牛乳のパックにストローを差し込んで
一口、口に含んだ後、俺と目線を合わせるようにして屈みながら口を開いた。

「残り時間少ない中で、倉庫からマット用意しろっていったり、根グラくんが注意をひくからその間に人を潜り込ませろっていったり、挙句のはてに俺たちに逃げ回れとかいったりする人間、何時もならどうでもいいんだけどさぁ。


君の正体がバレたら俺にまで火の粉がふりかかるのやだからなぁ。だからさぁ________。」


そこで会話を切ると会計はずいっと顔を寄せて
微笑む。

「_____絶対に見つからないでくれるかなぁ?
今日の昼休み。親衛隊が探しにくるよ。
会長って親衛隊に頼み事とかしないわけ、だから要するに血眼になりながら必死なわけね。この意味分からなくないでしょ?」

そう言い切ると、会計は玄関の取っ手を引いて
出ていくと思ったら、何かを思い出したのか
あ、と声を漏らすと振り返って


「あぁ、そうだ。〝弱者がただ散っていくだけじゃない〟ってところ_____俺に見せてくれるんでしょお?だったら、もっと見せて楽しませてよ。根グラくん?」


俺を試すように告げた。


「ほんと……めんどくさい。」

「……ぇ?………てるの?おーい!」

「……ぇ?」

「聞いてるのー?」

「………何のよう、_____だれ、ですか?」

目の前に現れた見知らぬ人物
少し色素の薄い黒の髪色に
ピンクのピン留をつけた人物が目の前に座っていた。

「えー?知らないの。僕、結構有名人なんだけどなぁ~。」

頰を膨らませながら
上目遣いで見上げてくる初対面の人物は
相当な有名人らしい
クラスがざわめいているのを肌に感じた。

「はじめまして。美音、矢井島美音だよ。佐藤蒼くん?」

「何の用事でしょうか?」

「用がなかったら来ちゃダメだったかな。ゴメンね。」

あからさまに落ち込んで見せる
その矢井島という人物に微妙な罪悪感が生じる。

「その矢井島。」

「美音って呼んでくれていいんだよ?」

ウルウルと瞳を潤ませて両手をぎゅっと不安げに握りしめる矢井島への対応に困っていた時
周りから刺さる視線を感じた。

「それに、僕___」


さっきまでの小動物を思わせる表情から例えるなら悪魔のように口元が弧を描き、歪められる。
そして、矢井島は口元を俺の耳に寄せ片手を添えながら囁いた。


「君のヒミツ知ってるんだけどなぁ」

今までの柔らかい繊細な声とは違ったような
ドスの効いた声が飛んできて
言葉が出なかった。

「昨日の白い髪の人って、君だよね?」

「______っちがうけど。」

「僕、偶然見ちゃったから言い訳してもダメだよ?
バッチリ写真までおさえてるしね。ここで、君のこと悪者にして。バラすことだって簡単なんだけどなー?」

「……何が望みですか」

「ただ、君に興味あるんだよねー。今日の用事はこれで終わりー。じゃあ、またね。蒼くん?」


バイバイと手を振って教室を勢いよく出ていった矢井島は何の用事で来たのかという疑問とクラス中から刺さる
視線を残して去っていった。



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