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chapter3
約束を纏う契約
「やぁ。佐藤くん、よくきたね。」
校長室のドアを開ければ、妙な既視感。
どこかで見たような家具の配置。
微かに香る紅茶の匂い。
「遅いから、桐島くんがまだ探してるかと思ってたんだよね~。さてと、見返りをもらおうか。」
「……見返り?」
「救護室で面白いことしてくれるっていうから新歓のスクリーンジャックまでしてあげたのに。挙句、君が困ると思ってそのスクリーンの記録まで抜き取ってあげたのに。その代価に、君がしてくれることは何かな?」
「聞いてない、ですけど。」
「うん。だって言ってないからねぇ!」
目の前の人の無邪気さを称える
その瞳からは、その真意を読み取ることはできない。
「まぁ、立ち話もなんだしぃー?座ろうか。あ!紅茶、いれてくるから座っててねー。」
どこか軽やかに校長先生は
給湯室である部屋に入っていった。
そこから視線を移して
ローテーブルを挟んでいる奥のソファーに座ろうと
足を進めるたびにやっぱり妙な既視感に襲われる。
「どこかで……見た気がする。」
そして、その捉えがたい不安定な既視感が
確信に変わるモノがあった。
「……卒業アルバム?」
けれど、はっきりとその記憶が何であるのかは
捉えることはできなくて
その見たことのあるアルバムを手に取ろうとした時
後ろから声がかかって、その伸ばした手をひいた。
「ありゃ?まだ、座ってなかったの?ほら、座って座って。」
校長先生に促されるまま座ると
紅茶とクッキーが出される。
「さてと、話の続きをしようか。佐藤蒼くん。いや、天宮春くん。」
ドクリと心臓がイヤな音をたてて鳴った。
背筋がひえる様な心地がする。
「えっ…………と。」
喉から掠れて音にはならない様な
声がもれた。
ただ穏やかに笑い続けているその瞳をみて
さらに、動揺した。
「あぁ、ごめんごめん。君のことは聞いてるよ、天宮くんからね。偽名で入学させることを。だから、そんな驚かなくてもいいよ。」
校長先生は、淹れた紅茶の取っ手を掴んで
一口、飲むとカチャリと音をたてて
ティーカップを目の前に置いた。
「代価の前に、1つ聞こうかな?君がこの学校にきた目的は何かな?」
にこやかな笑みのまま
けれど、スッと細められた瞳が鈍い光を纏ったきがした。
「ここ最近まで、天宮くんにこんな大きい子供がいたなんて聞いたことがなかっからね。あの噂が流れるまで、ね。
【天宮には、隠し子がいる。誰も見たことがない隠し子が】
最初は、そりゃあ信じなかったさ。でも、天宮くんに君のことを頼まれて驚いたよ。でも、この学校に来たのは天宮くんの意思じゃあない。わざわざ、15年も隠し続けてきた子をこのタイミングでしかもこの学校に送ってきた理由はなんなのか。
私も、考えて考えて出た答えは_____1つだけだった。君が望んだからだよ。天宮春くん。君の目的はいったい何だい?偽物の名前を使ってでも、バレないようにカモフラージュの口調で話してまでここにいるその目的は。」
「_____目的ですか。」
俺が、ここに来た理由は___。
偽りの名を使ってでも、ここに来たかった理由は1つだけ。
たった1つ。
手首に巻かれるその贈り物に視線を移して
校長先生へと視線を戻す。
「約束したんです。」
「約束?」
「約束なんです。」
きっと、この約束は他人から見れば歪でゆがんだ
契約のようなモノ。
最後の、そして、2度目の契約。
この学園で過ごす時間と引き換えに
その自由と引き換えにかけがえのないタイセツを手放すことになる契約。
手放したくなくて大切で
守ろうとして、でも、もう守れないことを知ったから。
もうそばにいられないならと最後に出来ることは何なのか残していけるものはあるのかと考え抜いて
そして、結んだ契約。
最初から今までもこれからも
望むことはたった1つ。
「その約束は、大切な人を捨てていく約束です。でも、それじゃあ、あの子は幸せにはきっと慣れない。
だから、大切な人が俺にとっての一番大事にしたい子がいつまでも笑顔でいられるように。いつまでも守れるように。
俺は、春栄学園(ここ)に来たんです。」
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