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chapter3
似てない兄妹
No side
「なずなお姉さま。見てコレ!綺麗でしょ?!」
「うん。綺麗なお花の冠ね。」
木陰の下で長い髪を靡かせている
少女の元に小さな男の子が駆け寄って
どこからか摘んできた花の冠を嬉しそうに
見せるのを見て、少女は男の子の頭を撫でる。
「なずな様、蘭様。風邪をひいてしまいます。中に早くお入りください。」
黒と白を基調としたメイド服姿の人物は
大きめの傘を携えて
淡々と声に音ものせずに屋敷の庭で遊ぶ2人に声をかける。
「冬野。」
「えーっ。まだ、僕、遊びたいよ!冬野」
「ですが、お風邪を引いてしまってはいけないので。」
「なずなねぇ、なずなお姉さま、いいでしょ?」
なずなと呼ばれた少女と同じく
綺麗な栗色をした髪を靡かせる男の子は
冬野と呼ばれる
メイドの提案を拒否して
頰を膨らませて
なずなの服を握りながらせがむ。
「冬野。その傘を貸してもらえる?」
「___ですが。」
「雨が降ったら、すぐに戻るわ。蘭もすぐに飽きると思うから。」
「分かりました。なずな様、蘭様。お早くお戻りください。」
軽く会釈をして去っていく冬野の後ろ姿をなずなは
視界にいれて、蘭に視線を戻した瞬間には
蘭が消えていた。
「蘭?どこにいるの?___もう。また、泣いても知らないわよ。雨が降りそうなのに。」
返事が返ってこないのに
なずなは焦りを感じながら
雲行きの怪しい空を見て
焦り混じりのため息を吐いて
足早に蘭を探して回ることになった。
「蘭ー?蘭!どこにいるの?」
そうして、なずなはお婆様が大切にしている庭園に行きつくとその中央で蘭の姿を見つけたと思ったら隣には久しぶりに見る姿があった。
「………っあやめ姉さま。」
楽しげに話している2人の姿に
なずなは話しかけもせずに
じっと見つめ続けていた。
が、なずなに気づいた蘭がなずなの方に駆け寄ってきて
手を握って庭園の中央へ連れて行こうと手を引く。
「あ!なずな姉さま!あやめ姉さま。体調良くなったんだって。姉さまも一緒に遊ぼうよ!」
「蘭。帰るわよ」
「えー。もうちょっと、遊びたいよ!」
「いいから!帰るの!」
なずなの強くなった口調に
蘭はびくりと肩を揺らせて、みるみる瞳を潤ませていく。
「なずな、ねぇ?……うっ、……っふ、」
「蘭、ごめん。泣かないで」
なずなはしゃがんで蘭の小さな頭を抱きしめて
ポンポンとあやすように撫でる。
「もう、今日は帰りましょ。もうすぐ、雨だって降るわ。お屋敷で蘭の好きなプリン作ってもらいましょう。」
「………うん。わ、かった。………プリン食べる。」
そして、蘭を抱きしめていた手を離すと同時に
庭園の中央にいるあやめと視線があう。
あやめは、なずなと視線があうと
ふんわりと微笑んだ。
「………ムカつく。」
なずなは
ぎゅっと口をひき結んで、ポツリと呟いた。
そして、蘭を連れて屋敷へ戻って一緒に
プリンを食べている時だった。
なずなは使用人の1人ががあからさまになずなの様子を伺っているのを肌で感じて、廊下に出ると冷たい声色で言い放つ。
「何なのよ。チラチラ、チラチラ、と。」
「えっと、その………あやめ様が外から戻らなくて。どうしたものか、と。思っていまして。」
「勝手に探しにいくなり何なりすればいいでしょ。いちいち、私にそんな話をするんじゃないわよ。二度と、私にあやめ姉さまの話はしないでちょうだい。」
「も、申し訳ありません!」
謝罪の言葉と同時に
頭を下げるその新人と思しきメイドをなずなは冷たい瞳で見下ろしていた時だった。
「何か、失礼がございましたか?なずな様」
その新人メイドの目の前に立って
流暢な動きで会釈をしながら鈴森は尋ねた。
「鈴森。使用人の管轄は貴方でしょう。しっかり、教育してちょうだい。目障りだわ。私にあやめ姉さまが帰ってこないからと、相談をしてきたわ。」
「申し訳ありません。なずな様。私の責任です。一度、お部屋に戻るようお伝えしたのですが断られてしまい、先程、お部屋にあやめ様をお連れしたのです。」
「そんな事聞いてないわよ。ほんとムカつく。愛人の子のくせに、ね。」
「……ぇ、」
小さく驚きの声をあげた
メイドになずなは視線をその新人メイドに移す。
「あら、知らなかったの。使用人の中でも有名な話だったのに。あやめ姉さまは、お母様の子じゃあないわよ。
だから、お婆様にも使用人にも疎まれてるのよ。まぁ、それ以上に嫌われてる人もいるけど。」
「なずな様。その辺で」
「何よ、本当のことでしょ。それとも、庇っているの
実の母親にも見捨てられて、ここで隠れながら生き続けるしかない。愛されなくて嫌われて当然よ。それに、あんなに似てない2人が双子だなんて、面白いものね。本当に兄妹なのかも怪しいものだわ。」
「なずな様、申し訳ありません。お先に失礼いたします。君、行きますよ。」
「ぇ……、はいっ!」
迷いながらも新人メイドは
覚束ない足取りで鈴森のあとをついていきながら
言いにくそうにしながらも鈴森に尋ねる。
「………双子とはどういうことなのですか?あやめ様と同い年の方がいるなんて、聞いたことが」
「………忘れなさい。」
「___ぇ、?」
「君は確か、一週間ほど前に屋敷に来たメイドだね。来て早々酷な話ですが。忠告しておきますよ。このことは忘れなさい。」
「忘れ、るとは。」
「そのままの意味です。屋敷をでていきたくないのなら
あやめ様のことといま聞いたことは忘れなさい。特に奥様となずな様にはその一切の情報が入ることがないように配慮して、決して聞くことはないようにね。」
「…….は、い。」
鈴森のきらりと反射する眼鏡のせいで
見えない瞳に動揺を煽られながら
新人メイドは一度だけ、首を縦に振った。
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