花は何時でも憂鬱で

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chapter3

胸に残るもの

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唯賀駿(生徒会長)side



「駿。キミって人は、何がしたいんですか。」

「何がいいたい、悠介。」

夕日が沈み出し
陽の光が夜に溶けていく空を後ろに
何時もの指定位置に座って書類の整理をしていたら
少し苛立ちげな悠介がはぁっ、と深い溜息を吐いて
一息に告げる。


「惚けるのもその辺にして下さい。新歓の時と言い、今日の親衛隊の件といい面倒ごとばかり増やさないで下さい。学園が始まって間もない時は、上級生は、新入生に手出しはしない。暗黙のルールですよ。」

「お前に面倒はかけていない。」

「これからかかるんですよ。親衛隊が全員とは言いません。けど、褒められた行いをする生徒だけじゃあないってこと分かってますよね。」

「だから?」

「問題が起これば君にだって皺寄せがいくんですよ。それとも、風紀には帝がいるの忘れてるんですか。」

「………別に。どうでもいい。それとアイツの話はするな。」

眉がピクリと動いたのが自分でもよくわかった。
キャスター付きの椅子を動かして、身体のむきを悠介からそらす。


「……分かりました。これ以上面倒ごとはよして下さいよ。親衛隊にも話は通して下さいね。やめさせるように。」

「それは、無理な相談だ。」

「………そんなに君が彼に執着するのは何でなんですか。」

「_________は?」

「執着じゃあないなら何なんですか。」

「俺が、アイツに執着……?」

「違いますか?それとも、次の的なんですか。」

「冗談でもやめろ、悠介。俺が、あんなのに執着してるって言いたいのか?………有り得ないな。ただ、俺は負かされて終わるつもりはない、いち生徒に恥かかされたんだ潰してやるよ。この学園から追い出してでもな。」



ムカつくんだよ。



こっちを見もしない瞳が



あの一瞬だけ見えた



俺を見ているはずの蒼色が。



俺を見ていなかった。



視線は合っているはずなのに、俺とアイツはしっかりと目を見て話していたと思うのに。



アイツは、俺を見てなんかいなかった。



それが酷く苛だたしい。さっさと記憶から消え去るのが一番いい方法だろうに。



なのに、どうして。





どうして





あの綺麗な蒼色が忘れられない。




どうして、言葉のひとかけら、ひとかけらが胸に残って
忘れさせてくれないんだ。




____あの瞳は、何を見てるっていうんだよ。



わからない          俺には            わかるわけがない



「ムカつくんだよ。」

「駿。」

諦めたように溜息をついた悠介が机に着こうと
椅子を引いた時だった。


「……………いでっ」

ガチャリとドアの開く音がしたと思ったら
小さい悲鳴があがる。

「蓮治、またですか。」

「…………………ごめん。悠介」

「入る時は屈んで入ってください。ただでさえ、背が高いんですから。」

「ハハハ、うん。気をつけます。あ、あのさ。何かこの部屋寒くないかな?」

俺と悠介に控えめに聞いてくる声に
視線をやり、目が合うとヘラリと困ったように笑った。

「何時もと変わりませんよ。」

「いや、ホラ!雰囲気が、ね。寒いような気がしたんだけど………ヒッ!あっ、やっぱり何でもないです。」

言いづらそうに告げていた蓮治の言葉じりが段々と
弱まってくるのを感じていたら
唐突に小さく悲鳴をあげた。

「蓮治くん。そういえば、さっきから。何でつなぎ何ですか?」

「………あはは、忘れてたんで。着替えてきます、はい。」

そういうや否や、慌てたように生徒会室にある
ロッカールームに蓮治は駆け込んだ。


それと同時に、また、バンっと生徒会室の扉が
開いて、それに凍りつくような冷たい声を悠介はあげた。

「今度は、誰ですか。」

「あららー、ご機嫌斜めやなぁ。副会長。」

「瑠夏」

瑠夏がこちらに視線を投げかけてきているのに
気づきながらも適当に視線を逸らし
俺は、新しい書類に手を伸ばした。

「後から親衛隊隊長が来るとは思うんやけど。会長、アンタの目当ての人物見つからんかったみたいやで。」

「「見つからなかった?」」

「白髪の人物なんて目立つの中々、おらんし。しかも、新入生にそんなやつ1人もいないんやなぁ、これが。」



いない?


それなら、俺が話していたのは



「だったら、アイツはいったい誰なんだ。」

確かに目の前にいた人物への
ほんの少しの糸口はそれしか分からなかった。
白髪の新入生。


けれど、それを断たれてしまえば
見つける術はもうない。



見つからないのなら
なかったことにだってできる。



なのに、どうして。



「……………何でこんなに苛つくんだ。」


俺以外に聞こえない声で漏らした言葉は
すっかり暗くなった夜の闇に吸い込まれるように溶けていった。


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