花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
63 / 185
chapter4

オーロ世代の犠牲





「アァ~っ!!やっと帰ってきた!!!」

寮の中へと入るとビシッと指でこちらを指してくる
オーバーオールの鳴川さんが大きな声で声をあげた。


「ちょっとちょっと!!消灯時間すぎてるんだけどっ!!」

腕組みをしてジトッとこっちを見据える
オーバーオールの鳴川さんに、この名の知れぬ人は
軽い調子で答えた。

「すんません。今度から、気をつけるんで後はこの新入生くんが聞くんで、よろしゅう頼みますわ。」

ぽんと肩を叩かれるや否や
頑張りやと言って、ヒラヒラと手を振りながら
さっさとエレベーターに乗り込んでいった。


「うんぬ~。手強い子だな~。っしょうがない。」

全てをのみ込んだかのような深いため息を吐くと
鳴川さんは、親指と中指を丸めると
俺のおでこ目掛けてピシッと所謂、デコピンをした。

「………痛っ。」

「ふははははっ!これに懲りたら、消灯時間後に帰ってくるなんて考えないことだね!」

おでこをさすりながら
そろそろ部屋に戻ろうかと思ったら
鳴川さんに呼び止められた。

「ねぇ?佐藤くん、荒谷新しいくん……じゃなくて。えっと、何だっけな~。えっと~、そう!荒谷新品くんだ!」

「新です。荒谷新。」

「あっ!そうそう、新太くんね。」

「………それで、荒谷がどうしたんですか。」

「僕に、紹介してくれるって言ったじゃん!!もう忘れたの?!」

そういえば、そんなこと言ったような
気がする。

「すいません。他を当たってください。」

「えぇ~。僕楽しみにしてたのにぃっ!!何々、何かあったの?」

「いや、少し……まぁ。」

「ふーん。あ!もしかして、喧嘩でもした?」

「喧嘩するような仲じゃあないです。」

「じゃあ、どんな仲なの?気になるなぁ~。」

「他人ですよ。何の関係もない、他人。」

「他人ねぇ。」

そう呟いた鳴川さんは、ガサゴソとポケットを探って
棒付きキャンディーを差し出す。

「これ、あげるよ。特別にね。貰ってくれないと部屋に返してあげない。」



そのキャンディーを受け取る。



「ほら、繋がった。」

脈絡もない発言に
パチパチと瞳を瞬かせる。

「これで、君とは他人じゃなくなった。僕と君の関係は、飴をくれた人と貰った人だよ。他人じゃない。」

鳴川さんは
誇らしげにふふッと笑い声をこぼす。

「他人から、知り合いへ。知り合いから友達へ。そして、恋しい人へ。最初から、他人から始まらない関係なんてないんだよ。でも、君が他人という関係にしてる。それは、何でかなぁ?」

「別に、特に意味はないですよ。」

「もっと周りをみないと、独りで生きられるなんて傲慢だよ。この学園では、それじゃあ生きられない。どうするのさ、宿題を忘れた時!それにだよ、お腹空いたなーって思って学食に行ったら財布がない!こんな時、友達がいればっおごって貰って後はナァナァに……じゃなくて、お金を借りることだってできるんだよ!どう!友達欲しくなったでしょ!!」

「取り敢えず、鳴川さんとは友人関係にはなりたくないと思いました。」

「ガァーン。そんなぁ~っ。僕に、奢ってよぉ~。」

あからさまに落ち込んで手を床につけて
肩を落としている鳴川さんをどうしようかと思っていたら、寮のドアが開く音がして



振り返ったと同時に、勢いよく何かに抱きしめられる感触がした。


「ふふふっ。驚いてるぅ~。メモしとかないとね。」

昼休みの先生だと認識した瞬間
背中に回った腕に力をいれられて
バランスを崩した身体は大理石の床へと倒れていく。


背中に衝撃は感じたものの
頭にはそれは感じなくて、瞑っていた目を開けると
その先生によって腕が回されていたのが分かった。


「何を」

突然の出来事に回らない頭では
その言葉しか出てこなかった。


「選ばれたんだ。君は」

「え?」

首元に頭を埋められて
スゥッと匂いをかぐような仕草をした後
顔を上げて、片手で上体をおこして
その片手は大理石の床、俺の顔の横につけられる。


「校長からの伝言。『園芸部』の再結成だ。君は、選ばれた、最後の犠牲に。オーロ世代の間違いの犠牲に、春田叶多の代わりに選ばれたんだ。」


「先生…?」

「ごめんね。ごめん。」

「いったい、どういう。」

「君にはあるの_____『悪魔』になる覚悟が。」


苦しげな先生の表情。
鳴川さんから聞こえる詰めたような息遣い。



何を言っているのか意味が分からなかった。



それでも、その先生から流れ落ち



頰に当たった



その一雫の結晶だけが物語っていた



学園を揺るがすその事態を。



俺がその『何か』に選ばれてしまったのだということを。



そして、その何かを絶対に成さねばならぬことを。











感想 0

あなたにおすすめの小説

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

平穏な日常の崩壊。

猫宮乾
BL
 中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)