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chapter5
夜の足音4
簡易テントから機材を運んで
宣伝用の看板を作ったり
屋台の中の配置だったりとで
時間は、あっという間に過ぎ去り
夕方になりなんとか無事に準備は終わった。
というよりは、先輩たちはお面選びだったり
この短期間で有志の出店を用意したらしく
どちらかと言えば
それに世話しなく動いていた。
「探さないと。」
昼間のあの白髪の先輩を探しに
行こうと思ったが
まず、アレが本当に俺の指輪なのか確認しなければならない。
もし本物だとしたら
指輪を取り返すためには、少なからず
接触しなければならないので問題はない、が。
もしも、あの指輪が俺のものではないのなら、厄介に違いない。ただでさえ、昼間の一件で近づきたくない目立つ部類の人だということは分かっていたから。
それには、まず_____資料室にいかないといけない。
あそこに指輪があれば、あの人との接触もしなくて済む。
「でも、あそこは一般生徒は立ち入り禁止。」
ずっと、資料室に行く機会を伺っていたけれど、今がそのチャンスには違いないけれど。
鍵もないからには、入ることもままならない。
どうにかできないかと
考えを巡らせていた時だった、その声が聞こえてきたのは。
「あら、美味しそうね。このりんご飴」
薄いピンク色の髪を束ねて
楽しそうにりんご飴を受け取る横顔を目に留めて
その人物の元へと足を運ぶ。
「桜崎先生、ちょっといいですか。」
「このりんご飴食べてからでもいいかしら?」
手に持つりんご飴を指差しながら
どうにもげんなりとした表情で肩を落としながら
告げられる言葉に頷いた。
屋台がある場所から離れて
時計台前のベンチへと腰掛けると
桜崎先生からりんご飴を差し出される。
「はい。りんご飴よ」
「どうも……ありがとうございます。」
戸惑いながらもお礼を言うと
桜崎先生は、口元を緩めて隣へと座った。
「素直でよろしい。それで、何の用かしら?
私の模擬店の邪魔をしてまでの用事なんでしょうね。」
「先生の言う言葉じゃあないですね」
「確かに。そうねぇ。それじゃあ、先生らしいことを1つ、荒谷君とは何かあったのかな?」
その言葉に、目を丸くしながら
桜崎先生の方へと視線を向けた。
それに、可笑しそうにクスクスと先生は笑った。
「意外と可愛らしい反応もできるのね。」
隣からカリッとりんご飴を齧る音がして
俺もつられて、目の前のソレを齧る。
「まぁは、ふぇんはくは、しなぁいはよ」
「食べてから、喋ってください。先生」
隣から、急いで嚥下する音がして
咳き込んでいたが、落ち着いてからもう一度
告げられた。
「まぁ、詮索はしないわよ。最近は、そういうので訴えられちゃうしね。」
「そういう、問題なんですか。」
「えぇ。そういう問題よ。で?本題は何なの?」
「お願い聞いてくれるって約束、今、いいですか?」
「内容にもよるけど、いいわよ。」
「資料室の鍵、貸してください。」
また、隣から咳き込む音がして
それを黙って見て、落ち着くのを待ってから
桜崎先生がすごい表情で声をあげた。
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「どうしてですか。」
「あの時、凄く怒られたのよ。挙げ句の果てに、あそこにいた生徒は誰かって散々問い詰められたし。何とか言いくるめたのよ」
「そこを、何とかお願いします。」
「何か……理由でもあるのかしら?」
「…………探し物を。」
「…………いいわ。その反応からして、きっと、大事なものなんでしょ。まぁ、そこまで食い下がられて断るほど私も鬼じゃあないわ。」
先生の肯定の返事に視線をあげると
手に光るものを翳していた。
「それ」
「マスターキーよ。失くさないでよね。」
桜崎先生からハートのキーホルダーがついた
その鍵を受け取ると、急いで資料室へと向かった。
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