花は何時でも憂鬱で

青白

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chapter5

夜の足音6




無許可の祭り当日
何とかそれぞれの準備を終え
パンっ、パンっと青い空に花火があがり



祭りの開催が知らされた。  


そして、
午前中店番の午後は自由の予定になっていた俺は



黙々と
綿あめを売っていた。


のだが、
来る人来る人のお面が厳ついものが多かった。



般若、狐、真っ白い能面のようなもの
悪魔をモチーフにしたものと多種多様だった。



「蒼くん。蒼くん、いつまで綿あめ売るの。僕、待ちくたびれちゃったんだけど!」


屋台の机に手をついて
身を乗り出して
顔をずいっと突き出しながら問いかけてくる
人物に驚いて、後ずさった。

「だれ?ですか。」

「もうっ!僕だよ。僕、美音っ!!」


その声には聞き覚えがあるし、その上
蒼くん、何て呼びかけてくる人物、矢井島以外いないのだがそのつけているお面が鳥のお面でくちばしが異様に突き出た赤い不気味なお面をしていて、


問いかけてくる声のアンバランスさに伴って
より、不気味さを増していた。


つけているお面をずいっとずり上げて
不満げに頰を膨らませる矢井島へと
視線を合わせて、驚いて後ずさった足も元の位置へと戻す。

「そんなこと言われたって、仕事だから。矢井島は午後からか?」

「ううん。皆んなが変わってくれるっていうから、頼んじゃった?」

矢井島は
こてりと首をかしげながら
上目遣いで悪意もなしに満面の笑みで
笑いながら言ってのけた。

「そう。でも、仕事あるから。」

「ムー。蒼くんいないと、つまんない~。」

チラリと意味ありげに上目遣いで送られる視線に
心の中で溜息をつきながら
近くにあったボックスティッシュの中から
数枚引き抜く。

「これに、クラスの連中は騙されてるわけね。」

「そんなこと言うなんて、ひどい!僕、蒼くんに会うためにきたのに。」

「そういうのは、口についてるソースとか取ってから言ってね」

瞬時に瞳を潤ませる矢井島の口元へと
ティッシュを持っていって口についている
ソースを拭う。

「えへ。バレた?もう、じゃあ綿あめ1つちょうだい」

矢井島からお金を受け取って
綿あめの機械をじいっと覗いてくる
矢井島を視界に入れながら
くるりくるりと割り箸へと白い綿を巻きつける。

「綿あめなんて、いつぶりかなぁ。僕、一番、綿あめが好きかなぁ。蒼くんは、何が好きだった」

「さぁ?祭りは、行ったことないから、分からないよ。」

「一回も?!」

「一回も。はい、綿あめ。」

矢井島は、大きな丸い瞳を更に大きくさせながらも
綿飴を受け取ってそれを口に含んだ。
そして、何か考え込むようにして綿飴の割り箸を持ってる手とは反対の手を口元に持っていって数秒。

「うん!」

と、元気よく声をあげて腕を掴まれた。


「蒼くん!いこっ!」

「行くってどこに。とゆうか、まだ、1時間くらい仕事が」

矢井島からその返事は返ってこず
俺の隣で看板を首から下げながら
メモを片手に持って、時に写真を撮っている
赤パーカー先輩の方を向く。

「せ~んぱいっ!」

「へっ。な、なに?」

突然、話を振られた赤パーカー先輩は
どもりながらも返事を返す。

「あの、お願いがあるんですけど。」

「な、何?」

「この蒼くん借りてもいいですか。お願いします。」

綿あめは、そんなに売れないだろと踏んで2人体制で屋台のシフトを回してるので
矢井島のとんでもないお願いが却下されることは目に見えていた。


「僕、他に回る人が居なくて、えっと、だから……お願いしたいんですけど。やっぱり、駄目ですかぁ?」


自信なさげに後ろで手首を掴み
瞳をうるうるっと潤ませて
頼み込む矢井島に赤パーカー先輩は鼻血を流して
倒れこみそうになりながらもグッと親指を立てて


「か、かわゆい。行っといで!初、祭りデート!」

「いや、そういうんじゃ、」

「蒼くん。行こーっ!」

と、あらぬ誤解とともに
屋台から出ることになった。


「ほんと、たまに怖い。」

腕を引く矢井島の後ろ姿を見ながら
屋台を出る時に何とか掴んで持ってきた
鬼の面を被り、ボソリと呟いた。


「何が?」

「いや、何でも。」



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