80 / 178
chapter5
夜の足音7
しおりを挟む「蒼くん!ヨーヨーやろっ!あっ!型抜きもっ!ちょっと待って、やっぱり、射的やりたい!!」
さっきまでの作られた表情は見る影もなく
楽しそうにあちらこちらへと引っ張られまくる
弟がいたなら
こんな感じだったのだろうかと
同い年の矢井島を見ながら思う。
いや、“普通”の兄妹であったなら
経験できたことなのかもしれない。
どうしようもない事を思っていたら
矢井島がいなくなっていることに気づき
お面を上にあげて辺りを見回すが、いる気配はない。
「矢井島……?」
「くらえっ!」
「、つめ、た、っ!」
何処からか飛んできた掛け声とともに
顔に冷たい何かがかけられて
声をあげた。
顔にかけられた何かを指で拭うと
水滴のようなものがついていて
目の前には、水鉄砲をこちらに構えた矢井島がいた。
「へへっ。僕とデートしてる身分にも関わらず、楽しくなさそうにした罰だよ。蒼くん。」
「どんだけ、自信過剰なの。」
「何言ってるの。自信過剰なんじゃなくて僕が可愛いから当たり前なの。」
「はぁ。」
「これ以上、つまんないって顔したら水鉄砲かけちゃうからね。」
勝ち誇ったように笑う矢井島は
そう言ってのける。
それから、クタクタになるまで歩かされ連れまわされて
時間が過ぎるのも忘れるほどだった。
そして、時計台の針が6時を指し
鐘を響かせた。
「この後、天ちゃんと一緒に回ることになってるんだけど。蒼くんも一緒に回る?」
「いや、遠慮しとく。」
「えぇー、いいじゃん回ろうよ!」
「あの人“イヤに勘が鋭い”ならやめといた方がいいだろ?」
「あー、それもそっか。それじゃあ、また、明日ね?」
どこか名残惜しげに手を振りながらも
矢井島は、楽しみなのを抑えきれないのか
軽やかに駆けて行った。
「さてと____。」
あの白髪の先輩を探しに行くのもいいが
お面をつけているオプション付きのお祭りでは
見つかる気がしない。
明日の片付けの時にタイミングを見計らうか。
今日は、こうしていてもしょうがないかと
寮へと帰ろうと足を向けようとしたが
その最中に、人だかりに当たり足止めをくらう。
お面を上にずり上げて
その様子を覗くと一緒に綿あめを売っていた
赤パーカー先輩が剣呑な雰囲気の2人に詰め寄られており
その3人を取り囲むようにして
円状のひとだかりができていた。
「ちょっと。佐伯良これは一体どういうことなの?」
「どういうことって言われても……妄想的な?」
「無断でこんなことしてていいと思ってるわけ。」
「これ結構面白いんだよ。今回は、生徒会の会計様と隠れ美人の一匹狼系の恋愛モノで攻めて見ました!!」
その詰め寄った生徒が見えるように赤パーカー先輩は
本を裏返してパラパラと捲る。
「面白いとかは関係ないの!!」
「えー、今回は健全モノだから安心だよ!」
「だ~か~ら~っ!」
「あ!そうだ、リクエストある?次回作の参考にしようかと思ってるんだけど。」
「リクエスト……?」
「うんうん、あ。次は、君たちをモデルにしようかなー。」
「え、僕たちですか?」
「うんうん。かわゆい子が多いしね~?」
いつのまにか丸めこまれてることも知らずに
その詰め寄っていた生徒2人は
満更でもない様子で赤パーカー先輩の話に聞きいっていた。
「へ~ぇ。その話の続き俺も聞きたいな~。ねぇ、良ちゃん~?」
随分と久しぶりに聞いたその軽い口調の人物へと視線を走らせる。
すると、さっきまで赤パーカー先輩へと
詰め寄っていた生徒たちは身を固くして
すぐにその先輩、会計___美波京の元へと擦り寄る。
0
あなたにおすすめの小説
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない
タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。
対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる