花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
89 / 185
chapter5

白猫の跡2



「ん?」

足元に視線をやるとこの前の真っ白な猫が
トテトテと後ろをついてきていた。


お面をあげて、その猫を撫でると
甘えるように擦り寄ってきた。


「お前、飼い主はいないの。」

俺の質問に答えるようににゃーと鳴いたその猫の
顎をグリグリと撫でてやる。

「浮気者な猫だな」

「たしかに、ほんとそろそろ怒ってもいいよな」

突然、後ろから差した影に驚いて目をみはると
声をかける前にその人はしゃがみこんだ。

「高いところに登って降りられなくなったり、迷子になったの忘れたのか」

あからさまに深いため息をついて
その白猫に悪態をついてるのにこの白猫は気にしたそぶりもなく毛づくろいを始めた。

「……てゆうか、眠い」

つけられていたお面を外して、瞼を押さえて
うつらうつらとしている様は今にも寝てしまいそうだ。

「あの………大丈夫、ですか。」

「うん……全然」

「どっちですか」

「眠いような眠くないような、微妙な気持ちだな」

寝ぼけ目でジトッと見つめてきたその人の顔に
見覚えがある気がして俺も見つめ返した。

「アンタ、俺と会ったことあるか?何処だっけ?」

「さぁ。分からないです。」

「うーん。でも、絶対どこかで見たんだよなぁ」

顔を近づけられて、壊れ物を扱うように
頰を両手で挟まれる。

「てゆうか、顔みづらいな。」


何でもないように前髪をサラリと流されて
見つめられる状況に顔を逸らし
その手から逃れるため、後ろに退こうとすれば
手首を掴まれて引き寄せられた。



「うーん?分かんないな。けど、」

頰に添えられていたままの右手が、目の下をスルリと撫でる。


「好きだよ。俺は、君の瞳(め)。」

「っ、寝ぼけてるんですか、冗談でも言っていいことと、」

「………寝ぼけてませんー。それに、俺は嘘はつかないよ。」


その人の視線から逃れようとしても、その度に、悪戯っ子のように無邪気に笑いながら下から覗き込まれて、ふにゃりと笑ったその表情に言葉が出てこなくて、その人から視線を外す。



「……ぁ。」

「ん?」


図らずも視界に入ってくるこの人の顔を見て
あの風紀委員長だと気づいた。



左手が頰に戻されて、覗き込むようにして
視界の真ん中に入り込んでくる人にもう諦める。
それでも、目だけは合わせなかった。


「何か、耳熱い。」

そろりと頰から耳へと指先を這わせた委員長が
寝ぼけた声で告げた言葉に反論した。

「熱くないですよ。」

「いや、熱いし何か赤い。」

「第一、こんな暗いところじゃ見えません。」

祭りの屋台から離れた寮への帰り道に
しゃがみこんでいる、この場所は白い街灯がポツリポツリとあるだけだった。

「いや、俺は目いいし、それに絶対熱い」

「熱くないです。」

「ふーん。じゃ、俺の目をみて言ってみて。」

意地悪めいた声色で告げられた言葉を取り合わずにいて、暫くしてから捉えられていた頰も解かれたことに、安堵していた俺はあの白猫は目が合うと長い尻尾をゆらりと揺らしてベシッと風紀委員長へと攻撃した。


「……ったい!リア、俺、何かしたか?」

鼻を押さえながら白猫に構う風紀委員長を見て
小さく笑った。

白猫の頭を柔く撫でたら、甘い声で鳴いた。
それに、不機嫌になった風紀委員長に、つい、笑い声が漏れた。


「笑ったな。さっきまで真っ赤だったくせに。」

「真っ赤じゃないです。」

「あー、そうだね。ソウダッタ。」

「性格悪いですね。」

「そんなこと、言われたの初めてだ。くくっ、でも、不正解です。俺は、性格いいんだよコレが。」

「性格いい人は、そんな事を言わないと思いますけど」

「えー。酷いなぁ。_______あぁ、じゃあアンタだけには性格悪くなるんだよ、きっと。だってなんか……泣かしてみたくなる。」

「……は?」

風紀委員長は、眠たげな瞳をさらに
とろんとさせて無邪気に笑った。


委員長が腕を背中へと回して、んーと唸りながら
感触を確かめるようにぎゅっと腕に力がこめられて、しゃがんでいた体勢が崩れて尻餅をつく。

「何ですか、。離してください。」

「今夜の……抱き枕に丁度、いいかと思って」

首筋に顔を埋められて
髪がさわさわと首を撫ぜる。

「抱き枕……って。」

「細っこいし、何か………甘い。」

「ふざけてないで………離れっ……!」

委員長が喋るたびに首をくすぐるのに身をよじって
くっついている委員長の身体を押しのけようとした時だった、委員長の全体重が傾けられ地面に背を打ちつけた。


「……いっ。」

その衝撃に声をあげたはいいが
一向に上から退こうとしない委員長を不思議に思い
視線をあげると寝息をたてて眠っていた。


「………厄日だ。」

目元に腕を当てて、自然と溢れた声には疲れが滲んでいた。


風紀委員長、しかも顔を見られた。
こんな所に置いて行ったら後で、なんて言われるか_____。



選択肢は、1つしかなかった。





感想 0

あなたにおすすめの小説

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

平穏な日常の崩壊。

猫宮乾
BL
 中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)