花は何時でも憂鬱で

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chapter5

白猫の跡3




寮へと引きずりながら委員長を持って帰ってきて、何とかこの委員長の部屋の前まで辿り着いた。


「あの……鍵は?」

「1102」

1102……?

その数字を頭の中で反芻すると
ドアの横に0から9の数字のボタンの羅列があるのに気づいて、風紀委員長までなると扱いも大分変わってくるのだと頭の片隅で思いながら1102を押すと、電子音が鳴ったのでドアの取っ手を引いた。




ベッドの上に委員長を降ろすと、俺もベッドの端に座りながら、息があがっているのを感じて深く呼吸をする。

「重い、疲れた……。」

暗闇の中で、ゆらりと白猫の尻尾が揺れ
その白猫は委員長の枕元で丸くなった。


「ぬいぐるみが多いな。この部屋」

タンスや机の上、枕元
至る所にぬいぐるみが置いてあって
加えて、ぬいぐるみだけを入れたタンスまで置いていた。


明らかに女の子が好きそうな可愛らしいぬいぐるみが
欄列してる事を考えると、貰った
ぬいぐるみが捨てられないのだろう。


それにしても、多すぎるとは思うけど。


「……帰るか」

ベッドから立ち上がった瞬間
後ろ手にひかれて、凄い力で抱きすくめられる。


「あの、離して、」

「行くな。」

「………あの、どうかしたん、」

「…行くなっ」

悲痛で切実な声は何かに縋りつく子供のようで
何がこの人にそんな声を出させているのか、考えたとしても分かるはずもない



けれど______。



身体が痛くなるほど骨が軋むほど抱きしめられているのに
何もしなかったのは、きっとこの人が、震えているから。


(何となく、ほんの少し似てるんだ。)


それを何とか窘めようと、後ろから抱きすくめられている身体を捩って、背中をポンポンと叩き続けるとほんの少し、抱きしめられる力が弱まった気がした。


そして、腕の力が抜けていくのを感じて
委員長を見るとその瞳が不安やら恐怖でごちゃまぜに
なっていた。




ニャーという鳴き声に反応して視線を下にさげると
白い猫がじっとこちらを見て微動だにしなかった。


「行きませんよ。……どこにも」

その言葉を紡いだ瞬間、その瞳が嬉しそうに細められて
抱きしめられたまま布団へと倒された。


「………甘い。」

委員長は、さっき道端でしたように俺の首筋の匂いをかぐと同じ台詞を呟いた。

「甘すぎ。」

「………っ、近いです。」


ダメだ。
完全にこの人は寝ぼけてる。


「いい加減、寝てください」

この人が寝てしばらくしたらこの部屋を出ようと
考えていると首筋に鋭い痛みが走った。

「………ぃ。」

「こっちみろ。」

「なに。」

「俺のこと好き?それとも、嫌い?」

「……っぃ、たい。」

その問いに答える間も無く
首筋を噛まれて鋭い痛みが走っては消え走っては消えを繰り返す。
その行為をやめさせようとするが、指を絡めて手の抵抗を封じ込められる。


(寝ぼけてるからって、手加減してる暇はない。)


「……や、めっ。」

視線を逸らしていると委員長の動きが変わって
噛むだけかと思ったら、噛んだ所に唇で何度も何度も繰り返し撫でるように癒すように触れて
この人が何をしたいのか何をされているのか訳が分からなかった。

「好きだって信じさせて。」

指を絡めている手が僅かに震えているのを感じながら
ぎゅっと瞼を閉じた。


(……悪いけど)


3………


2……


1…

頭の中でカウントをしていく。

委員長の眉間めがけて
おでこをぶつけて気絶させようとした
その瞬間______。




目の前を白い何かが通って
ベシッと委員長の顔に当たった。


その攻撃のおかげか睡魔がたたってか
倒れた委員長は寝息をたてて眠っていた。


そして、その白いものの正体が猫だと分かって
その頭をひと撫ですると
その猫の甘えたげな声を背に受けながらその部屋を後にした。








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