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chapter6
微笑1
部屋の前に戻ってくると
真昼間に矢井島といた親衛隊総隊長がいて一瞬、驚いて動けなかったが俺に気づいたその人は小走りに近づいて来た。
「やっ!久しぶりじゃあ……ないかな。佐藤くん。」
「あの、何かご用ですか?」
「あぁ、思い出してね。佐藤蒼くん。どこかで聞いたことあると思ってたんだけどね、唯一、あの捜索の日にいなくて、桐島先生が後で僕の所に行くように言っとくって言われてたんだけど」
「聞いてません、ね」
あの先生から一ミリたりとも言われた覚えがない事を伝えると
八色先輩は腕を組んで溜息をついた。
「やっぱり。まぁ、僕としては君が来てもこなくてもどっちでもよかったんだよね」
「……どっちでもいいんですか。」
「だって、これ以上この件を長引かせても余計に刺激するだけでしょ?隊員達を、ね。だから、仰々しく呼ぶこともしなかったし、ひらりはあの大々的に探した日に、君がいなかったの知らないから分からないだろうけど。会長のこと大好きだから、ひらり。まだ、根気よく探してるよ。」
見た目に似合わず、中身は冷めているというかクールというか大人な人なのだと思った。
「でも、まぁ………会長がまだ、諦めてないのが気がかりなんだよね。探すにしても、白髪ってことだけじゃあね?まぁ、見つかったとしても差し出さないけど。」
「差し出さない……?」
「その子が酷い目にあうの分かってて何であの独善的で欠陥だらけの会長、に………コホン、会長様に差し出すわけないよね。各々の隊長達は、暴走しがちだから僕がそのストッパーなんだけど。皆んな、揃いも揃って言うこと聞かなくて困っちゃうよねぇ。秩序を守る側が乱しまくってるし。」
『総』隊長がこんな発言してる事を知ったらきっと、阿鼻叫喚だろう。
特に会長辺りは黙ってないだろう。
「おっと、喋りすぎちゃったなぁ。でも、まぁ一応親衛隊代表として来てる身としては一応、質問するけど………って、それどうしたの?」
八色先輩が、首元を指してポカンと口を開けている様子に
さっき噛まれた事を思い出して
手のひらでその痕を隠す。
「これは、あれです………。寝ぼけた猫に引っかかれました。」
「本当……?」
「はい。それで、質問というのは何ですか。」
若干、隠し通せてない気はするが
何とか押し通そうと質問の続きを促す。
「あ。そうだったね。質問っていっても1つだけだよ。君があの例の人物が現れた時、一緒にいた人はいる?」
「いますよ。」
どんな質問をされるかと身構えていたが
存外、拍子抜けするような内容だった。
「同じグループだったので生徒会の会計様と後は、矢井島ですかね。」
「そっか。了解。あぁ、そうだ演劇部で君を見た人がいるって聞いたんだけど、何してたの?」
「演劇部には行ってませんよ。勘違いじゃないですか、黒髪なんてそこら中にいますし。」
「だよね、鎌かけてみただけだよ。それじゃ、僕帰るね。………あ、そうだ。美音のことよろしくね?」
悪戯が成功したような笑みを称えると
手を振りながら背を向けた。
最初に見つけても差し出さないと油断させたり鎌をかけたりと抜け目のない人だなとその後ろ姿を見ながら思った。
「そういえば、あの風紀委員長って恋人いるんじゃなかったっけ」
部屋に入って
首筋に散らばる赤い斑点を
視界に入れるとため息をついた。
こんなの、恋人にバレたら非常にマズイ案件だと思う。
※
祭りの夜から一夜明けて
片付けが終われば特にもう何もないので
祭りの片付け作業を早々に終わらせようと
ジャージ姿の生徒たちがいそいそと片付けに勤しんでいた。
そして、12時を少し過ぎた頃
片付けが終わり始めているグループも点々と出だしていて
それは、うちの班も同様だった。
「はぁー。」
あからさまに深い溜息を吐いている赤パーカー先輩に
視線を向けていると、漫研らしい別の先輩が補足するように話しかけてきた。
「アレは、気にするな。大事な写真、3枚中3枚無くした馬鹿だから。」
「そんな大事な写真なんですか。」
「金払っても、欲しい奴いんじゃねぇ?例えば、会長付親衛隊隊長の九重とかな。どんだけ金つんでも欲しいだろうなぁ。つうか、もう拾われて売っぱらわれてるかもな。」
「もしかして、普段から売ってたりしてるんですか?」
「……まぁな。ま、特に写真部の連中とかがね。恭ちゃん先輩とか止まらないからなぁ。ま、バレたら怒られるの確定だけど。あ、今手に待ってる道具、用具室に置いてきたら、もう、帰っていいぞ」
「分かりました。」
そんなにお金払ってまで、写真って欲しいものなのかと
頭の隅によぎったが口には出さなかった。
体育館の横にある用具室に持ってきたものを置いて用具室を出ようとしたところで地面に影が差しているのを目に留めて顔を上げると、空にヒラヒラと何かが舞っていた。
「今日は、風が強いな」
その光景を目に留めながら
朝から冷え込んでいたのもあり、一応と巻いてきたマフラーに顔を埋めて呟く。
ふと、空を舞っていた何かが明らかに葉っぱだとか花びらなどの自然的なものじゃないのに気づいて目を眇める。
ヒラヒラと風にのって
地面に落ちてきた長方形の形をした
ソレを手に取って裏返すと
「_________っ。」
何故かあの名前も分からない先輩が持っていたものとほぼ同じ新歓の時の写真に
驚愕して、言葉を詰まらせていると
「見つけちゃった。君が_____________そう?」
ヒラヒラと写真を片手に振りながら
目の前で佇んだ誰かがほくそ笑んだ。
「………誰で、」
「分からないなら、教えてあげる。」
見たことのある、黒いバッジ
見たことのある、その人の名前は
確か__________。
「九重ひらり。会長様の親衛隊隊長。以後お見知り置きを。」
「そんな人が、何か用ですか」
「何で________?分かってるでしょ、最初に言ったじゃない。」
そこで、言葉を切ると
目の前の九重ひらりという人は
極上の笑顔を見せ、言った。
「見つけちゃった。________会長様の探し物。」
その瞳に、非情さをたたえて。
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