花は何時でも憂鬱で

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chapter6

微笑3




「何々、楽しそうな事してんねぇー?」

ニタニタと笑いながら入ってきたピアスをつけた男は
九重ひらりの肩をポンポンと叩いて寄りかかった。

「勝手に入ってくるなって、何度言ったら分かるのかな。河井。」

九重ひらりに触れた手を退かせるかのようにあのマスクの生徒がその部屋に入ってきた生徒へと拳を振り下ろす。


「……っと、ぶねっ」

それを飛ぶように退いて、一歩、下がる。

「おいおい、九重。おまえんとこの犬、怖すぎるっつぅの」

そのピアスをつけた生徒の言葉に、答えることもせずに
九重ひらりが視線で出ていけというように訴えるが
部屋に入って来た生徒は
特に気にしたそぶりもなく肩をすくめると、今、気づいたというようにこっちに視線をよこした。

「今度は、こいつなわけ?なになに今度は、唯賀になんかしたのかよ。つーかよぉ、お前が、そんなに焦ってるの初めてじゃね。こーんな所に連れこんでまで、痛めつけたかったの。」

「それ以上喋ったら、その口縫うよ」

「おぉー。こっわぁ。へいへい退散すれば……」


ピアスをつけた生徒が踵を返そうと背中を向けたが、ピタリと足が止まり視線だけをジッと俺に向けてくる。その生徒の動きを不審に思った九重ひらりが
再び、出ていくように促すが


「なぁ、九重。コレ、俺にやらせろよ。」


ピアスをつけた生徒は振り返って言った。



九重ひらりは、怪訝な表情をそのピアスの男に浴びせた後で口を開いた。

「アンタの好みのタイプじゃ、無いと思うけど?」

「コイツにはちょーっと、借りがあるんでな。それに、そういう意図はねぇよ。」

「借り………ね?僕は、別に構わないけど。16時までならね」

含みのある視線をそのピアスをつけた生徒に向けると、あの背の高い生徒を連れて、九重ひらりがその部屋から消えた。


「なぁ、覚えてるかよ、新入生。」

近寄ってくるピアスの生徒を見るが
全くと言っていいほど記憶にない男に無言を貫いていると


「覚えてないのか。……覚えてないねぇ?」

そのピアスの生徒は、そう呟いて
繋がれていない方の手錠を手首にかけて
手錠を繋ぐ鎖を鉄格子の窓の下にあるフックにかける。


「ブハッ。お似合いだねぇ。おい、知ってるか新入生。こんな部屋作った奴は誰なのか」

答えずにいると、そのピアスの生徒は苛立ちげにダンっと音がなるほど
壁に足を打ちつけて威嚇する。

「会長様だよ。会長様。」

「………会長?」

「あぁ。違った違った“今”の会長じゃなくて“元”の方だったわな。リコールされた方の会長が作ったんだった。なーんか、話ずれたな。まぁ、いいか。そんじゃまぁ、ここでたっぷりお礼させてもらおうかね。屋上でのお礼参りだ。」



屋上?


屋上…………おく、じょう。


思考をまとめる暇もなく
何かが風を切ったような音がした瞬間
重たい蹴りを腹にいれられ
その痛みに引きつったような呼気の音が洩れた。




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