花は何時でも憂鬱で

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chapter7

影1

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「心先生。これであってる?」

「そうだなぁ……。よく書けてるけどまずは、ちゃんと筆を立てへんとええ字は書けへんかな。そやし、……」

「先生!先生っ!!お客人どす!!!」


バタバタと騒がしい足音が廊下を駆け抜ける音が響いて
障子をスパァンッと
乱雑に開ける音と一緒に肩で息をしながら
現れた長い黒髪を括った可愛らしい女の子に一気に
視線が注がれた。

「騒がしいどすよ、葵」

「で、でも先生、矢井島はんが来た時は何が何でも早う教えろって言うたんではおまへんどすか?!
そやし、あたし、急いで伝えようと思って……。」

「矢井島はんが……。随分、早いおいでどすな。そないなら、粗相のないよう客間に通してください」

「分かりましたっ!!」

来た時と同様、忙しなく障子を閉める葵に
諦めたように肩をすくめると子供達の視線に気づいた先生と呼ばれた男は、一人一人に視線を合わせながら告げた。


「ちょい、用事ができたさかい、いなくなるけど、すぐにさっきの葵が先生の代わりに来るから安心してええよ」

「えぇー。葵姉ちゃんは、習字下手そやし嫌や」

どこからともなく子供達の笑い声が湧くが
心先生は、片手に持っていた扇子で言い出しっぺの男の子の頭をコツンと叩いた。

「そないなこと言うたら、あかんどすよ。まぁ、下手なことは事実そやけどもね」






襖を開けて、客間へと入り客人の姿を見つけると
ゆっくりとした足取りで客人の手前に敷かれた座布団の上に腰を下ろした。


「こないな遠い所までご足労頂きまして申し訳ない」

「たまたま仕事の帰りに寄っただけなんでねぇ、気にしないで下さいよ。ウチと違いすぎてこう言った所は、どうも性に合わない。あ、コレ土産の柏餅です」


真っ黒なスーツを身に纏って
胡座をかく矢井島が大きな風呂敷に包まれた柏餅を
ドンっと目の前に置く。



「こら、どうも。ほして……例の件は」

「わしからしたら、やっとというかんじですがねぇ。ウチの子供があの学園にいる所を見つけたようで……。」

「ほんまに確かどすか」

「それは、何とも言えませんね。今の彼は、貰った写真と随分と違うようなので。何かあったんですかねぇ……。」

「詮索は結構どすが彼のことを調べあげでもしたら黙ってはおりませんよ」

「そんな怖い顔しないで頂きたい。そちらがそういうんなら調べたりはしませんよ。誰だって、平安から続く陰陽師をも恐れ敬遠した月城家を敵に回したくはないんでね。それでも……少しくらい聞かせてくれたって損はないでしょう。」

矢井島が出されたお茶を一気に飲み干して
探るような視線を向けてくるのに先生はふっと鼻から抜けたようにもらして扇子を開いて口元を隠す。


「矢井島はん。1つ、忠告を。みな終わったなら何があってもその子には関わり合わない方がええ」

「そいつは、何故だ……。あんたの考えてることは分からないな。宗心さん。じゃあ、何で探しているんだ。宝物なんだろう?」

目を細めて、冷えた眼差しで矢井島を見据えると
宗心は告げた。

「自分のしたことが正しかったのか正しかなかったのか知るためどす」

「ほぅ……。それで」

「その後の選択は、自分の目で確かめてから判断します」

「宗心さん。それじゃあ、会ってみるか?彼に」

「それは、いつどすか」


矢井島はニィッと笑うと場所と日にちを指定し、美音から送られてきた写真を渡した。







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