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chapter7
影3
しおりを挟む「あー、忘れてたわ」
俺の手にあった携帯型生徒手帳を奪い取ると
何かを打ち込み終わると、放るように返してきた。
「お前の言うひつよーな時に、そいつで呼べ。今回みてーに校内走り回るのはごめんだしな。つーか、お前友達いねーとは思ってたけどまさか、そこまでとはな」
お腹を抱え込みながら、肩を震わせて下世話に笑う
河井を見上げながら言った。
「友達なんていませんよ。生まれてこのかた」
「……は?」
「冗談ですよ。案外、騙されやすいんですね」
ぷるぷると震える拳で河井が怒りを募らせているのが見てとれたが俺は気にせずに言葉を続けた。
「『最後のゲーム』が何なのか知っていますか」
「……さぁ。知らねぇ。けどまぁ、確かなの《angel》と《Devil》のカードを使って行われたゲームってことだけは確かだ」
____天使と悪魔のカード。
「後は、もうねぇな?俺は腹が減ってんだよ」
「それじゃあ、もう一つだけ___。第3美術室って何処にありますか」
「んぁ?……第3美術室?あぁ、あの使われなくなった所か。旧校舎のとこだろ。それが、なんだ」
「いえ、聞いてみただけなので」
どうりで見つからないと思ったら
旧校舎にあるとは思わなかった。
「んじゃ、話は終わりだな。俺は行くぜ」
河井が屋上の扉を閉めきったのを確認してから
昨日の土砂降りも嘘のような、真っ青な空を仰ぎ見る。
____第3美術室。
「……行ってみるか」
なんの因果か
今日は、あの約束の金曜日だった。
※
「涼花ぁ~っ!!お兄さん、暇。暇すぎて死んじゃう」
「ウザい、キモい、ひっつくな。後、お兄さんとかいうな。キモい」
「あぁ~っ!!!キモいって言った、しかも二回も!!!」
門川の耳に響く、騒がしい声を華麗にスルーして
迷惑そうに眉を顰めながら速水は何の戸惑いもなくイヤホンを耳につける。
「他人が喋っている時にイヤホンするなんて、最低だっ!花ちゃんって呼んでやろうか……っ!ヒィッ!!顔、怖い!!人殺しの目、してるよ」
「誰が花ちゃんだって……?もう一回、言ってみてくださいよ、門川智くん?」
「……こわいこわいこわいこわい……。」
「この音は……?」
速水が何かに気づいた様に顔をあげて
教室の窓から空を見上げると
無数の烏が空を飛び回り、一羽の烏が鳴き声をあげた。
「あ。月ちゃん、帰ってきたみたいね」
「……だな。来月になれば、テストもあるしな」
「嫌なこと思い出させんなよぉ。花ちゃ……っ!!いひゃい。グーで殴ることないだろっ!」
「黙れ。学習しろ」
速水に拳骨を落とされた頭部を撫でて
労っていると、門川はクラスメイトから声をかけられて振り返った。
「おい!門川っ!!呼び出し」
「ん?誰?」
「1年の矢井島だってよ!!」
「いや、誰……?」
「ちょー、可愛い」
「なぬっ?!」
門川は、首を傾げながら声をかけてきたクラスメイトの方へと小走りで駆け寄っていった。
門川の後ろ姿から真っ青な空には不似合いな烏へと速水は
視線を移す。
「今度は、何しに帰ってきたんだ。宗司」
物音一つ立てずに、門川が座っていた目の前の椅子へと
突如、現れた気配にさして驚きもせずに速水が告げた。
「……化け物……」
「化け物?」
「……見にきた」
静かに告げる甘く蕩けるような声の主へと
一瞬、視線を向けてすぐに逸らし
速水は面倒そうに溜息を吐くと、視線を伏せた。
「……気になる?」
「別に興味ないな。俺に関係ないなら」
「………嘘だ。興味ある、でしょ?」
月城の言葉に、言葉を詰まらせて
耳からイヤホンを外して視線を向けると
そこには、誰もいなかったかのように消え去っていた。
烏の黒い羽だけを落として____。
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