花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
114 / 185
chapter7

影5






ざわめく様に揺れた新緑の葉も
舞い上がった木の枝も落ち葉も花びらも重力によって
けれど、時間が止まったのではないかと思うほどに
ゆっくりとゆっくりと落ちていった。




沈み始めた眩しいくらいの真っ赤な夕陽と舞い落ちていく真っ黒な羽だけが目の前のその存在を映し出した。




グレーの厚手の上着を着こんで目深くフードを被り、鋭い嘴を持つ烏の仮面を被ったその男を。





「……烏に、啄まれても貪られても………。文句はいうなよ。………獲物……。」


独り言の様に何かを話すと
その男は一寸の迷いもなく距離を詰めて
俺の指先をきゅっと握った。


「……雨が降ってる」

その男の脈絡のない言葉に耳を傾けて訝しむような視線を向けた時だった、世界が屈折するようにぐにゃりと視界が歪みだして耳をつんざくような耳鳴りが響いた。


「………それから………血?」

鈍器で頭を殴られたような頭痛に襲われ
指先同士が触れていないもう片手で頭を押さえながら
立っていられず足元から崩れ落ちた。


「……………涙、」


(これは…………何なんだ………っ)




指先が離れて、症状が和らいだのも束の間、腕の関節を持たれて左胸に手を置かれてから刹那
心臓の音が激しく鼓動を鳴らし
意識が黒く染まりかけた寸刻に
後ろから伸びた腕に抱き上げられて、視線だけをあの真っ黒な人へと向けると



【しんこきゅう】と、音のない言葉で伝えられる。




「……は、」



回らない頭で
ゆっくりと伝えられる言葉をそのまま鵜呑みにして
会長へと体重を預けながら、深呼吸を繰り返す。


「これ以上、面倒ごとを起こすな」

「……邪魔は許さない。」

「ソレを使うなら、制御をしろ。明らかに…」

「わざと……、だよ。化け物にはこれくらいじゃないと。じゃないと、痛くない……からね」

「化け物……?」

「………計画を狂わせた。………………唯賀、触っているソレ………頂戴」



頭上で会話が交わされるが
未だに耳鳴りだけが響いてよく聞き取れない。



「……随分な物言いだな。誰にも与しない誰にも依存しない、それがお前のとこのやり方だろ」

「………邪魔者は排除する。唯賀、ソレ、頂戴?それに、随分………優しい」

「………お前のソレで、何人被害者が出てると思ってるんだ。俺は、今、虫の居所が悪いんだ、無駄口を叩くな」

「……そ。じゃあ、やめる。……話し合いは、無駄」



あの男がフードを外そうと手をかけて瞬刻
会長の腕が強張ったのを肌で感じとっていたが
目の前の烏の仮面の男は
何かに気を取られたように手を止めると
また、強い風が吹き込んで烏の群れの咆哮と共に
その仮面の男は、跡形もなく消え去った。




奇妙な緊張感から解き放たれて
真っ黒な瞳と視線が交錯して
思いっきり寄りかかっていたのを思い出し、一歩距離を取った。



「_____。」


軽く一礼して、『失礼します』と告げて
さっさと去るつもりだったのに、不意に訪れたとてつもない違和感に頭を下げたまま、喉元を押さえる。



声が出ない……?



ゆっくりと顔を上げると、何かを探るような視線が向けられていて会長の口元が動くがその音どころか、息遣い1つ聞こえなかった。



耳が聞こえていないのだと察した瞬間
目の前の視線から逃れるように、踵を返して足早にその場を去ろうとするが、腕を掴まれ振り返るとその双眸から僅かにチリチリと散る陰鬱な感情が見えた気がした。





感想 0

あなたにおすすめの小説

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

平穏な日常の崩壊。

猫宮乾
BL
 中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)