花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
121 / 178
chapter7

若様1

しおりを挟む




あの奇妙な烏の面を被った男にあってからは
学校も何気なく過ぎ去ってゴールデンウィークという
休みに入り、暫く経ったある日のことだ。



突然、それは現れて強引に連れ出されたと思えば
黒塗りの高級車に押し込まれて何処かへと
連れていかれていた。



「何処に向かってるか気にならないの?蒼くん」

「聞いたら、教えてくれるのか?」

「もっちろん。教えるに決まってるよ!蒼くんの為ならね。……何せ、あんなに会長の件、手伝ってあげたのにこっちから迎えに行ってあげないといけない蒼くんの為なら、ね?」

後半は、ぼそりと誰にも聞こえないように言った
矢井島の瞳は全く笑っていなかった。


「それは…………すいませんでした。」

「しょうがないから、許してあげる!」

「いんや~。お二人さん、仲良いね~。羨ましいなぁ~、お兄さんもそんな青春を送りたかったよ。」

「智、お前。ジジくさいぞ。まだ、17なのに。髪が後退するのも時間の問題だな」

「何を~っ?!てゆうか!人と話す時はイヤホンを取りなさいって何度言ったら分かるんだよ」

「うるさいなっ!お前は俺の母さんかよっ!」

ニヨニヨと微笑ましそうに笑っていた門川先輩は
目の前に座っていた速水先輩のイヤホンを引っこ抜こうとするが、全て速水先輩が華麗にかわしている。


「矢井島。この面子で、一体、何処に向かおうとしてるわけ。」

「おっ!このマスカット美味しいなっ!春も……。コホン、佐藤も食べろよ」

右隣に座る荒谷が爪楊枝で刺したマスカットを
寄越してくるのに、溜息を漏らして左隣に座っている
矢井島へと視線を向けると、天使のような笑みを浮かべて


「あ!何処に向かってるのか、そういえば。言ってなかったよね。………それはね、僕の家だよ。このメンバーは、何となくだけど。蒼くんが逃げ出せないような人を集めたのは確かだけどね!」


と、言ってのけた。



「何で……矢井島の家に。」

「君が中々、姿表さないから。僕の帰省と被っちゃったんだけど?…………なーんて。冗談だよぉ!あっ。もう少しで着きそうだね!」

矢井島が車の窓を開けると、閑静な住宅街が広がる中に
1つ異彩を放つ武家屋敷の様な建物がそびえ立っていた。


その辺の家が小さく見えるほどその屋敷がデカイことは一目みただけで分かった。


「アレだよ!僕の家」

「確かに、すっごいなぁ!」

帰省がよっぽど嬉しいのか、心なしかいつもよりトーンの高い声を出す矢井島を横目に見ながら
荒谷も感嘆の声をあげた。


確かに、デカイけど。……何かイヤな予感がする。それは、さっきから刺すような視線が降り注がれている気がしてならないからだろう。


けれど、その正体が何なのかはまだ、分からなかったが
直ぐにソレは何なのか判明した。




「はいはい、止まってたら置いてくよぉー」


車を屋敷前に止められて、後部座席のドアから降りて
暫く、くぐり戸の前で立っていると
矢井島に背中をどんどん押されてくぐり戸を無理やり通らされると、刺青や額に傷が目立つ眼光鋭い男達が親の仇でも睨むように睨みつけられたと思ったら次の瞬間、脂の下がった表情へと様変わりした。


「「「お帰りなさい、若っ!!!」」」

「うん、ただいま」



あの、視線はこの人たちかと頭の片隅で思いながら



ひらひらと手を振って
軽く挨拶をする矢井島へ視線を向けると
したり顔で笑った。




「……驚いた?蒼くん」

「おぉ、凄いっ!厳つい!!映画で見た、ヤクザっぽい!!!」

「美音ちゃん家って、相当なお金持ちだねぇ。お兄さんのうちもこれくらい広かったらなぁ~。何と家の中で毎日、鬼ごっこが出来る!!この広さ、ねぇ、聞いてる?涼花!」

「……頼むから、最年長らしく大人しくしてくれ。恥ずかしくなってきた」

「大人しいよ!!普段の2割増しで!!」

「増してどうすんだよ!」



俺が答える前に後ろを歩いていた荒谷が
的外れな感嘆の声をあげて、それに続くように門川先輩も嬉々として喋るとそれを嗜めるように速水先輩が顔を手のひらで覆って溜息をつきながら言った。


「えへへ。蒼くん、逃げたりしたら駄目だよ?てゆうか、逃げられるわけないもんね?一泊二日だけど、楽しもうね」

天使のような笑顔は、もはや、悪魔のものにしか見えなくなってきた。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

処理中です...