花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
121 / 185
chapter7

若様1





あの奇妙な烏の面を被った男にあってからは
学校も何気なく過ぎ去ってゴールデンウィークという
休みに入り、暫く経ったある日のことだ。



突然、それは現れて強引に連れ出されたと思えば
黒塗りの高級車に押し込まれて何処かへと
連れていかれていた。



「何処に向かってるか気にならないの?蒼くん」

「聞いたら、教えてくれるのか?」

「もっちろん。教えるに決まってるよ!蒼くんの為ならね。……何せ、あんなに会長の件、手伝ってあげたのにこっちから迎えに行ってあげないといけない蒼くんの為なら、ね?」

後半は、ぼそりと誰にも聞こえないように言った
矢井島の瞳は全く笑っていなかった。


「それは…………すいませんでした。」

「しょうがないから、許してあげる!」

「いんや~。お二人さん、仲良いね~。羨ましいなぁ~、お兄さんもそんな青春を送りたかったよ。」

「智、お前。ジジくさいぞ。まだ、17なのに。髪が後退するのも時間の問題だな」

「何を~っ?!てゆうか!人と話す時はイヤホンを取りなさいって何度言ったら分かるんだよ」

「うるさいなっ!お前は俺の母さんかよっ!」

ニヨニヨと微笑ましそうに笑っていた門川先輩は
目の前に座っていた速水先輩のイヤホンを引っこ抜こうとするが、全て速水先輩が華麗にかわしている。


「矢井島。この面子で、一体、何処に向かおうとしてるわけ。」

「おっ!このマスカット美味しいなっ!春も……。コホン、佐藤も食べろよ」

右隣に座る荒谷が爪楊枝で刺したマスカットを
寄越してくるのに、溜息を漏らして左隣に座っている
矢井島へと視線を向けると、天使のような笑みを浮かべて


「あ!何処に向かってるのか、そういえば。言ってなかったよね。………それはね、僕の家だよ。このメンバーは、何となくだけど。蒼くんが逃げ出せないような人を集めたのは確かだけどね!」


と、言ってのけた。



「何で……矢井島の家に。」

「君が中々、姿表さないから。僕の帰省と被っちゃったんだけど?…………なーんて。冗談だよぉ!あっ。もう少しで着きそうだね!」

矢井島が車の窓を開けると、閑静な住宅街が広がる中に
1つ異彩を放つ武家屋敷の様な建物がそびえ立っていた。


その辺の家が小さく見えるほどその屋敷がデカイことは一目みただけで分かった。


「アレだよ!僕の家」

「確かに、すっごいなぁ!」

帰省がよっぽど嬉しいのか、心なしかいつもよりトーンの高い声を出す矢井島を横目に見ながら
荒谷も感嘆の声をあげた。


確かに、デカイけど。……何かイヤな予感がする。それは、さっきから刺すような視線が降り注がれている気がしてならないからだろう。


けれど、その正体が何なのかはまだ、分からなかったが
直ぐにソレは何なのか判明した。




「はいはい、止まってたら置いてくよぉー」


車を屋敷前に止められて、後部座席のドアから降りて
暫く、くぐり戸の前で立っていると
矢井島に背中をどんどん押されてくぐり戸を無理やり通らされると、刺青や額に傷が目立つ眼光鋭い男達が親の仇でも睨むように睨みつけられたと思ったら次の瞬間、脂の下がった表情へと様変わりした。


「「「お帰りなさい、若っ!!!」」」

「うん、ただいま」



あの、視線はこの人たちかと頭の片隅で思いながら



ひらひらと手を振って
軽く挨拶をする矢井島へ視線を向けると
したり顔で笑った。




「……驚いた?蒼くん」

「おぉ、凄いっ!厳つい!!映画で見た、ヤクザっぽい!!!」

「美音ちゃん家って、相当なお金持ちだねぇ。お兄さんのうちもこれくらい広かったらなぁ~。何と家の中で毎日、鬼ごっこが出来る!!この広さ、ねぇ、聞いてる?涼花!」

「……頼むから、最年長らしく大人しくしてくれ。恥ずかしくなってきた」

「大人しいよ!!普段の2割増しで!!」

「増してどうすんだよ!」



俺が答える前に後ろを歩いていた荒谷が
的外れな感嘆の声をあげて、それに続くように門川先輩も嬉々として喋るとそれを嗜めるように速水先輩が顔を手のひらで覆って溜息をつきながら言った。


「えへへ。蒼くん、逃げたりしたら駄目だよ?てゆうか、逃げられるわけないもんね?一泊二日だけど、楽しもうね」

天使のような笑顔は、もはや、悪魔のものにしか見えなくなってきた。








感想 0

あなたにおすすめの小説

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

平穏な日常の崩壊。

猫宮乾
BL
 中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)