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chapter7
若様1
あの奇妙な烏の面を被った男にあってからは
学校も何気なく過ぎ去ってゴールデンウィークという
休みに入り、暫く経ったある日のことだ。
突然、それは現れて強引に連れ出されたと思えば
黒塗りの高級車に押し込まれて何処かへと
連れていかれていた。
「何処に向かってるか気にならないの?蒼くん」
「聞いたら、教えてくれるのか?」
「もっちろん。教えるに決まってるよ!蒼くんの為ならね。……何せ、あんなに会長の件、手伝ってあげたのにこっちから迎えに行ってあげないといけない蒼くんの為なら、ね?」
後半は、ぼそりと誰にも聞こえないように言った
矢井島の瞳は全く笑っていなかった。
「それは…………すいませんでした。」
「しょうがないから、許してあげる!」
「いんや~。お二人さん、仲良いね~。羨ましいなぁ~、お兄さんもそんな青春を送りたかったよ。」
「智、お前。ジジくさいぞ。まだ、17なのに。髪が後退するのも時間の問題だな」
「何を~っ?!てゆうか!人と話す時はイヤホンを取りなさいって何度言ったら分かるんだよ」
「うるさいなっ!お前は俺の母さんかよっ!」
ニヨニヨと微笑ましそうに笑っていた門川先輩は
目の前に座っていた速水先輩のイヤホンを引っこ抜こうとするが、全て速水先輩が華麗にかわしている。
「矢井島。この面子で、一体、何処に向かおうとしてるわけ。」
「おっ!このマスカット美味しいなっ!春も……。コホン、佐藤も食べろよ」
右隣に座る荒谷が爪楊枝で刺したマスカットを
寄越してくるのに、溜息を漏らして左隣に座っている
矢井島へと視線を向けると、天使のような笑みを浮かべて
「あ!何処に向かってるのか、そういえば。言ってなかったよね。………それはね、僕の家だよ。このメンバーは、何となくだけど。蒼くんが逃げ出せないような人を集めたのは確かだけどね!」
と、言ってのけた。
「何で……矢井島の家に。」
「君が中々、姿表さないから。僕の帰省と被っちゃったんだけど?…………なーんて。冗談だよぉ!あっ。もう少しで着きそうだね!」
矢井島が車の窓を開けると、閑静な住宅街が広がる中に
1つ異彩を放つ武家屋敷の様な建物がそびえ立っていた。
その辺の家が小さく見えるほどその屋敷がデカイことは一目みただけで分かった。
「アレだよ!僕の家」
「確かに、すっごいなぁ!」
帰省がよっぽど嬉しいのか、心なしかいつもよりトーンの高い声を出す矢井島を横目に見ながら
荒谷も感嘆の声をあげた。
確かに、デカイけど。……何かイヤな予感がする。それは、さっきから刺すような視線が降り注がれている気がしてならないからだろう。
けれど、その正体が何なのかはまだ、分からなかったが
直ぐにソレは何なのか判明した。
「はいはい、止まってたら置いてくよぉー」
車を屋敷前に止められて、後部座席のドアから降りて
暫く、くぐり戸の前で立っていると
矢井島に背中をどんどん押されてくぐり戸を無理やり通らされると、刺青や額に傷が目立つ眼光鋭い男達が親の仇でも睨むように睨みつけられたと思ったら次の瞬間、脂の下がった表情へと様変わりした。
「「「お帰りなさい、若っ!!!」」」
「うん、ただいま」
あの、視線はこの人たちかと頭の片隅で思いながら
ひらひらと手を振って
軽く挨拶をする矢井島へ視線を向けると
したり顔で笑った。
「……驚いた?蒼くん」
「おぉ、凄いっ!厳つい!!映画で見た、ヤクザっぽい!!!」
「美音ちゃん家って、相当なお金持ちだねぇ。お兄さんのうちもこれくらい広かったらなぁ~。何と家の中で毎日、鬼ごっこが出来る!!この広さ、ねぇ、聞いてる?涼花!」
「……頼むから、最年長らしく大人しくしてくれ。恥ずかしくなってきた」
「大人しいよ!!普段の2割増しで!!」
「増してどうすんだよ!」
俺が答える前に後ろを歩いていた荒谷が
的外れな感嘆の声をあげて、それに続くように門川先輩も嬉々として喋るとそれを嗜めるように速水先輩が顔を手のひらで覆って溜息をつきながら言った。
「えへへ。蒼くん、逃げたりしたら駄目だよ?てゆうか、逃げられるわけないもんね?一泊二日だけど、楽しもうね」
天使のような笑顔は、もはや、悪魔のものにしか見えなくなってきた。
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