花は何時でも憂鬱で

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chapter7

若様4





石田さんに、ショッピングモールに連れられて
粗方、買うものを揃え終わり
最後の項目に、食材以外のものが書いてあるのに
目を留める。


「次は何買えばいい?」

「……はなび」

「花火……?!よしっ!行ってくるっ!!」

「普通は、この時期、売ってないんだけ、」

俺が最後まで言い終わらないうちに、荒谷の背中は遠くなってしまって追いかける間も無く、見失ってしまった。

「ほんと、他人の話を聞かないのだけはやめてほしいっ……」

とりあえずは
荒谷の行った方へ向かって走り
角を曲がった拍子に誰かとぶつかる。


「……きゃっ」

小さな悲鳴をあげて尻餅をつくようにしてぶつかった少女は倒れてしまって、その少女の頭から落ちた麦わら帽子を拾いながら目線を合わせるようにしてしゃがみこむ。

「すいません。不注意でした」

その少女に差し出した手に手を重ねられてから
ゆっくりと立ち上がる。

「すんまへん。おおきにどした」

その少女は目をパチパチと数回瞬かせると
少女はニコリと笑んだ。

「そないなに喋り方が変どしたか?」

「え?いや、変というか………。」

同い年かそれより下くらいの少女は、よく分かっていないのか頭を傾げていた。

「髪に葉っぱがついているので」

トントンと自分の頭を叩きながら伝えると
少女は恥ずかしかったのか顔を若干、赤らめながら髪についた葉っぱを取ろうと髪を乱雑に扱いだす。



「あの、コレはその……。先生がどうしてもあたしを、連れて行ってくれなさそうやったさかい、ほして……っ!急いでだので、そやし………っ。変装どすっ!」

「あの、落ち着いて。………少しじっとしてて」

少女の細い髪に指を通して髪に絡まる葉っぱを取る。

「あれ…………?」

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもないです。はい、取れました」

「お、おおきに」

勢いよく腰を折り曲げてお礼を言う少女に落ちた麦わら帽子を拾って少女へと差し出すと、慌てたように麦わら帽子を受け取ると直ぐに頭に被った。

「あ、ほんまにおおきにどした!」

ぺこりと頭を下げて顔をあげるとその少女は、ある一点を見つめると、頭を傾げた。

「あの、さいぜんからウチを見てるあの人はお知り合いどすか」

荒谷が帰ってきたのかと
少女と同じ方へと視線を巡らすと、見覚えのない背の高い男が、チラチラと怪しげに視線をよこしていた。

「……いや。貴方の知り合いではないですか?」

「初めて見る方どす」

その怪しげな男と、バチリと瞳同士が交錯すると
あからさまに顔を背けて、人混みの中へと消えていった。


「とりあえずは……」

「逃げた方がええどすか?」

この人混みの中で何かをしてくるとは思えないが
一定の速度を保ったまま、あの男と距離を取る。




角を曲がる拍子に、チラリと後ろへと視線を向けると
あの男は尾行を続けていた。



横目で少女を盗み見ながら、考えるがどうにも拉致があかない。一体、俺かこの少女のどちらをつけているのか____。



はたまた、別の誰かか。



俺には、心当たりがないわけではないが
この少女が、目的である可能性だって大いにありうる。



どちらか確かめてみてもいいが、この少女を巻き込むわけにもいかないか。


「あのっ!……どうしますか?」

その少女にかけられた言葉によって
ショッピングモールの入り口付近まで来てしまった事を認識する。


「このまま、ゆっくり歩いて。」

ショッピングモールにいても良かったが、このままずっと建物内にいるわけにもいかない。
無機質な音をたてながら自動ドアが開いていく中で
荒谷へと連絡を取ろうと携帯型生徒手帳を取り出して
発信音が流れ出した時だった。



「あやめ様。今日は、何をお買いになるんですか?」

「……内緒」

ゆっくりと視線をあげると
真っ黒な髪を靡かせて、胸元に揺れる2対の指輪を首からかけた少女が自動ドアを潜り抜けていく。



久しぶりに見るその姿に固まってしまって、滑り落ちた端末を拾わずにいると振り返った、あやめと視線が交錯して驚いたように見張る赤いその瞳が落ちた端末へと移る瞬間、その端末を拾い上げてくれた麦わら帽子の少女へと俺は視線を向けた。

「あの……。」

あやめが言葉を発した瞬間、尾行していた謎の男がこちらを見ているのを視界にいれると、弾き出されるようにして俺は建物を飛び出した。


(まずい……。)


大きな広場へと足を踏み入れると
あの謎の男が麦わら帽子の少女は視界にもいれず
焦ったような表情で、追ってきているのを確認すると
広場から出て、家が建ち並ぶ人通りの少ない路地裏へと身を潜める。


「あやめ………。」

胸元の指輪を取り出して、指先で指輪同士を鳴らすと
無意識に笑みが溢れる。
あの澄んだ紅色に黄色みがまじるその瞳が10年前と同じままだった事が本当に嬉しいんだ。




近くで焦ったような声と慌ただしい足音が聞こえると、指輪をしまいこんで耳を澄ませる。



あの怪しげな男が目の前に現れると同時に、俺の片足を男の片足に絡ませると
男は体勢を崩した。その男が地面に背を打ち付ける前に胸倉を掴んで衝撃を緩和させながらも地面へと押し倒す。



「………何しにきた。」


自分自身が出した声が、あまりにも冷たい響きをもってることを頭の片隅で感じながら男の肩を掴んでいる腕に体重をのせる。




俺の問いに答えることができない、男は視線を彷徨わせながらゴクリと喉を鳴らした。






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