124 / 185
chapter7
若様4
石田さんに、ショッピングモールに連れられて
粗方、買うものを揃え終わり
最後の項目に、食材以外のものが書いてあるのに
目を留める。
「次は何買えばいい?」
「……はなび」
「花火……?!よしっ!行ってくるっ!!」
「普通は、この時期、売ってないんだけ、」
俺が最後まで言い終わらないうちに、荒谷の背中は遠くなってしまって追いかける間も無く、見失ってしまった。
「ほんと、他人の話を聞かないのだけはやめてほしいっ……」
とりあえずは
荒谷の行った方へ向かって走り
角を曲がった拍子に誰かとぶつかる。
「……きゃっ」
小さな悲鳴をあげて尻餅をつくようにしてぶつかった少女は倒れてしまって、その少女の頭から落ちた麦わら帽子を拾いながら目線を合わせるようにしてしゃがみこむ。
「すいません。不注意でした」
その少女に差し出した手に手を重ねられてから
ゆっくりと立ち上がる。
「すんまへん。おおきにどした」
その少女は目をパチパチと数回瞬かせると
少女はニコリと笑んだ。
「そないなに喋り方が変どしたか?」
「え?いや、変というか………。」
同い年かそれより下くらいの少女は、よく分かっていないのか頭を傾げていた。
「髪に葉っぱがついているので」
トントンと自分の頭を叩きながら伝えると
少女は恥ずかしかったのか顔を若干、赤らめながら髪についた葉っぱを取ろうと髪を乱雑に扱いだす。
「あの、コレはその……。先生がどうしてもあたしを、連れて行ってくれなさそうやったさかい、ほして……っ!急いでだので、そやし………っ。変装どすっ!」
「あの、落ち着いて。………少しじっとしてて」
少女の細い髪に指を通して髪に絡まる葉っぱを取る。
「あれ…………?」
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもないです。はい、取れました」
「お、おおきに」
勢いよく腰を折り曲げてお礼を言う少女に落ちた麦わら帽子を拾って少女へと差し出すと、慌てたように麦わら帽子を受け取ると直ぐに頭に被った。
「あ、ほんまにおおきにどした!」
ぺこりと頭を下げて顔をあげるとその少女は、ある一点を見つめると、頭を傾げた。
「あの、さいぜんからウチを見てるあの人はお知り合いどすか」
荒谷が帰ってきたのかと
少女と同じ方へと視線を巡らすと、見覚えのない背の高い男が、チラチラと怪しげに視線をよこしていた。
「……いや。貴方の知り合いではないですか?」
「初めて見る方どす」
その怪しげな男と、バチリと瞳同士が交錯すると
あからさまに顔を背けて、人混みの中へと消えていった。
「とりあえずは……」
「逃げた方がええどすか?」
この人混みの中で何かをしてくるとは思えないが
一定の速度を保ったまま、あの男と距離を取る。
角を曲がる拍子に、チラリと後ろへと視線を向けると
あの男は尾行を続けていた。
横目で少女を盗み見ながら、考えるがどうにも拉致があかない。一体、俺かこの少女のどちらをつけているのか____。
はたまた、別の誰かか。
俺には、心当たりがないわけではないが
この少女が、目的である可能性だって大いにありうる。
どちらか確かめてみてもいいが、この少女を巻き込むわけにもいかないか。
「あのっ!……どうしますか?」
その少女にかけられた言葉によって
ショッピングモールの入り口付近まで来てしまった事を認識する。
「このまま、ゆっくり歩いて。」
ショッピングモールにいても良かったが、このままずっと建物内にいるわけにもいかない。
無機質な音をたてながら自動ドアが開いていく中で
荒谷へと連絡を取ろうと携帯型生徒手帳を取り出して
発信音が流れ出した時だった。
「あやめ様。今日は、何をお買いになるんですか?」
「……内緒」
ゆっくりと視線をあげると
真っ黒な髪を靡かせて、胸元に揺れる2対の指輪を首からかけた少女が自動ドアを潜り抜けていく。
久しぶりに見るその姿に固まってしまって、滑り落ちた端末を拾わずにいると振り返った、あやめと視線が交錯して驚いたように見張る赤いその瞳が落ちた端末へと移る瞬間、その端末を拾い上げてくれた麦わら帽子の少女へと俺は視線を向けた。
「あの……。」
あやめが言葉を発した瞬間、尾行していた謎の男がこちらを見ているのを視界にいれると、弾き出されるようにして俺は建物を飛び出した。
(まずい……。)
大きな広場へと足を踏み入れると
あの謎の男が麦わら帽子の少女は視界にもいれず
焦ったような表情で、追ってきているのを確認すると
広場から出て、家が建ち並ぶ人通りの少ない路地裏へと身を潜める。
「あやめ………。」
胸元の指輪を取り出して、指先で指輪同士を鳴らすと
無意識に笑みが溢れる。
あの澄んだ紅色に黄色みがまじるその瞳が10年前と同じままだった事が本当に嬉しいんだ。
近くで焦ったような声と慌ただしい足音が聞こえると、指輪をしまいこんで耳を澄ませる。
あの怪しげな男が目の前に現れると同時に、俺の片足を男の片足に絡ませると
男は体勢を崩した。その男が地面に背を打ち付ける前に胸倉を掴んで衝撃を緩和させながらも地面へと押し倒す。
「………何しにきた。」
自分自身が出した声が、あまりにも冷たい響きをもってることを頭の片隅で感じながら男の肩を掴んでいる腕に体重をのせる。
俺の問いに答えることができない、男は視線を彷徨わせながらゴクリと喉を鳴らした。
あなたにおすすめの小説
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
平穏な日常の崩壊。
猫宮乾
BL
中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。