127 / 185
chapter7
若様7
「うわあっ!蒼はん見てください!
あそこにいる人、王子様みたいどすよ」
荒谷の様子は気になるものの
葵が荒谷を指差して興奮気味に言う
その様があまりにも無邪気で薄く笑うと
荒谷の方へと足を進めた。
「………え?え?どうしてそっちに」
困惑する葵に視線を向けてから
再び歩き出すと、葵は止めていた足を運ぶ。
「荒谷………。起きてるか」
荒谷の顔の前で手を振ると、意識を取り戻したようにパチパチと瞼を開閉させると弾けるように笑った。
「あ!探してたんだ………って、そっちの子は?」
「色々とあって、知り合った。」
葵はキラキラと輝くような瞳で見つめるのに
荒谷は葵と目線を合わせるために腰をかがめて手を差し出す。
「初めまして。荒谷新っていうんだ。よろしく。」
「は、はい!あの、葵といいます。」
「へぇ、そっか。その麦わら帽子_____。」
荒谷と葵が話をしているのを聞き流していると
ふと、広場の噴水の近くにこじんまりと開かれている
お店になんとなく歩み寄る。
「おやおや、客とは珍しいのぅ」
布のようなもので顔全体をぐるぐる巻きにした店主は
頬杖をつきながら呟いた。
そのお店は、どうやら安価なジュエリーを売っている
ようだった。
ただ、なんとなく足を運んだものの
手持ちも持っていないこともあり引き返そうと踵を返す。
「_____大切なものほど、傷つけて手放す運命だ。もしくは、そうだな………他のものは救えても絶対に自分だけは救えない」
意味深な事を言う店主に視線を投げかけると
考え込むように唸る仕草をした店主は、急に何かをひょいっと投げてきたので、咄嗟にそれを受け取る。
「あの…………。コレは、なんですか」
「大切な人にあげるといい_____。」
会話になっていないと頭の片隅で思いながらも
手のひらを開いて、手の中に収まる小さな何かを見る。
「指輪…………?」
「………はん!蒼はんっ!」
「………なに?」
少し目線を下げると葵がひらひらと目の前で手を振っていた。
「佐藤、どうかしたのか。ぼーっとして」
「いや、…………なんでもな_____い」
指輪から目の前にあった筈の店へと視線を向けるが
どこにもその店の姿はなくて、困惑した。
掌にあるビーズのようなもので作った指輪へと
視線をゆっくりと戻す。
午後3時を知らせる鐘が鳴り響いて、どこかで聞いたことのあるような柔らかい音色が広場を包んだ。
※
「_____一ヶ月」
噂ではあったのだ。一ヶ月後に、あの学園に入った生徒と連絡が取れなくなると_____。
そしてその噂を裏付けるかのように
学園から届いた手紙にはこう記載されていた。
『貴校の生徒との連絡を禁止する』
_____と。
ただ、全く会えないわけではない長期休みや学祭などのイベントごととなると話は別だ。だが、つまりは学園にいる生徒と接触の機会がグンと減る。
奥様が最近、慌ただしかった理由はコレなのかもしれない。
「鈴森さん_____!た、大変ですっ!」
道路に停めていた車の助手席の扉を開けられて
あやめ様付きの使用人が
堰を切ったように告げる。
「落ち着いてください。」
「あの、っ、…………大変なんですっ!!」
「ゆっくりと何があったのかを教えてください。」
青ざめた唇を震わせながら告げた。
「いなくなりました。」
「いなくなった………とは、」
「あやめ様がいなくなりました」
その事実に
息を詰めたような呼吸音を洩らしたものの
嗜めるように語りかけた。
「どういうことか、教えてもらえますか」
「あやめ様が、お手洗いに行くと言われたので外で待ってたのですが、一向に出てくる気配がなく、中に入ってみたら誰もいませんでした。一階のお手洗い場に窓があったので_____恐らく。」
「そんな事をするような方ではない筈ですが。お手洗いにいく前に何かおかしなことはありませんでしたか。」
「そういわれましても、特には………。あっ!ショッピングモールに入る前に、年頃の女の子とすれ違ってから様子が可笑しくはありました」
「年頃の女の子ですか。どんな方でしたか」
「えっと…………確か。麦わら帽子に、黒い髪で。あっ。後は、近くに男の子がいました。黒髪の。顔は、見えませんでしたけど」
男の子_____?
黒髪の男の子。
それは、つまり、1人しかいない。
春様は入学と同時にあの色を真っ黒に塗りつぶした。
要様と雫様の強い希望で。
眼鏡をかけるように提案したのもそうだ_____。
守るためとはいえ、夢のようであっただろう。
やり直しができるかもしれないという浅はかな夢をみただろう。
彼を愛しすぎて盲目なのかもしれない。
だから、気づけないのだ入学(コレ)が終わりの物語だということに。
結局、彼らは__________。
「_______ぁ、の。」
新人の使用人がか細い声で話しかけるのに
飛びかけていた意識を目の前の新人に向ける。
「その男の子は、どんな様子でしたか」
「…………男の子は_____。」
「その男の子は、あやめ様をみて固まった。違いますか」
「…………たしかに、あやめ様を見て固まった後にすぐに何処かに行かれました」
思考をまとめようと、額に手を置いて何かを考え込むように長く細い息を吐いた。
「………気づいてしまったか………。」
あなたにおすすめの小説
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
平穏な日常の崩壊。
猫宮乾
BL
中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)