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chapter8
傾城6
「随分、派手に捻ったみたいですけどどうしたんですか」
「………え?あ、えっと。転んじゃって」
俺は、白石先輩がまた困ったような笑みを作り
顔はこっちに向いているのに視線が泳ぐ白石先輩に俺は違和感を覚えた。
嘘__________なのだろうか?
「そういえば、さっき白石先輩をみかけたんですけど。その時の、アレって何だったんですか。」
「………………アレって?何のこと」
袖から見えた古い包帯のことも相まって
その違和感を確かめるために鎌をかけてみたら
分かりやすく声が裏返る白石先輩の様子に
転んで怪我をしたのは嘘なのだと理解した。
誰かに怪我を負わされたのだろうか。
「いや、大したことじゃないんですけど。職員室で桜崎先生と何か話しこんでるなと思っていて違いましたか?」
「いや、それは僕じゃないと思うな。」
「そうでしたか。変なこと聞いて、すいません。何の話をしてるのか気になってしまったので」
「ううん、気にしてない。」
首を横に振って答えると
白石先輩がテーブルに載っていたプリントに目線を向けて首を傾けた。
「あれ?………そういえば、一年生って健康診断まだ何だっけ?」
「はい。まだ、健康診断はしてないですけど」
「去年までは、入学してから1週間くらいでしてたからさ。あぁ、でもそっか。………西方くんに合わせたのかな。」
「合わせた?」
「あ。うん。西方と唯賀、それに天宮に月城はこの学園の資金の出資者とゆうか支援者だから多少の融通は利くんじゃないかな。あ、勿論、この学園の仕組みには流石に手は出せないみたいだけどね。でも、校長先生と面識自体あるみたいだからあんまり関係ないかもだけど。………あ。佐藤くんもだよね?」
「父さんのことですか。」
「うん。違ったかな?だって、ほら。今の宮路校長って担任の先生だったみたいだし」
「そういえば。そんな話が聞いたことあるような気がします」
容易に偽名で入学できた理由も支援者だったからかと納得すると同時に俺は何も知らないのだと認識する。
純さんのことは勿論、オーロ世代のことも。
_________カタリ。
白石先輩の話に耳を傾けていると不意に
風紀委員長の寝ているベッドの付近で何かが落ちたような音が聞こえてきた。白石先輩に断って押し当てていた袋を白石先輩に託すと風紀委員長の寝ているベッド近くに向かう。
あの音の正体が何だったのかベッドの付近を探すと
ベッドの下に端末が落ちているのを見つけて拾い上げる。
その端末をベッドの近くの台に置くと
寝ていたはずの風紀委員長に手首を掴まれる。
ゆっくりと、目蓋が開き柘榴色の瞳が覗く__________。
「………っいたい」
「いたい………?どこか痛みますか」
掠れるほどの声だったので
聞き耳をたてるために顔を寄せて聞き返す。
「会いたかった」
手首を掴まれている手とは反対の手を額に押し当てながら何かに耐えるようにゆっくりとその言葉が紡がれた。
「亡霊でも幽霊でも………………会いたかったんだ」
伏し目がちになっていた瞳がこちらに向いた瞬間
肌が粟立つほどの衝撃が身体をめぐった。
悲痛で切実でそれでいてとても甘い
そんな視線から目を離すことができなかった。
「………………、っ。」
「俺は、恨んでるよ。………俺が選べないのはお前のせいだから」
このままこの人の目を見てはいけないと理性的でない本能的な部分でそう感じて無意識に逃げるように後ずさると、掴まれていた手首を強く引き寄せられる。
_________ちかい。
「佐藤くん。大丈夫?」
「ぁ、はい_________だいじ、」
白石先輩への返答は言葉になる事なく途中で遮られた。
唇に重ねられる温度と柔らかい感触に硬直し
瞬刻の後、唇から柔らかい感触と温度が消え
離れていく風紀委員長がやけにスローモーションに見えた。
授業の終わりを報せるチャイムが鳴り響いた。
※
「西方宵を生徒会に置くと?」
「あぁ、そうだ。これは、決定事項だ。」
「いくら西方だったとしても、この実力主義の学園でそれは許されないでしょう」
生徒会長の判を押すだけとなった書類を唯賀は学年主任に突き返すが、学年主任はそれを受け取ろうとはしない。
「西方だからではない。いずれ、どうあろうともそうなる。アレは、普通の新入生ではない。うちの編入試験の難しさは知ってるはずだ。その試験で歴代最高得点を叩き出した。」
「それが何ですか。編入試験で最高得点を叩きだすのは何も西方だけではありません」
唯賀は学年主任にその書類を押しつけると生徒会室から立ち去ろうとする。
「唯賀。西方には会ったか。」
「どういう意味ですか。校長も貴方も何を言わせたいんですか。俺とあの男は違うんですよ。恋愛なんかにうつつを抜かしたようなあの男とは」
「唯賀勝羽もそう言っていた。恋愛なんか馬鹿のやることだってな。今のお前と同じように」
「それで、俺も同じようになると?」
「それは、知らん。別に、西方宵を好きになれと言っているわけではない。西方宵を受け入れろと言っているだけだ」
「話になりませんね。」
今度こそ、唯賀が生徒会室を立ち去ろうと扉を開くと
そこには宵が困ったような表情で立っていた。
「えと、立ち聞きするつもりじゃなかったんですけど」
まるで図ったようなタイミングで現れた宵から学年主任へと唯賀は視線を投げかけるがそうした所で何を言うわけでもない学年主任から視線を逸らし宵の横をすり抜けて行こうとする唯賀を学年主任が呼び止めた。
「今日はもう授業も終わりだ。学園の案内がてら寮まで送ってあげなさい。これは決定事項だ」
「え?僕は自分で帰れますので。だから、大丈夫です」
勢いよく宵が首を横に振って辞退するが唯賀が宵に目線を送る。
「行くぞ」
宵が一礼してから戸惑いながらも唯賀に着いていくのをただ見ていた学年主任は突き返された書類を唯賀の机に置いて生徒会室を出て行く。
「燐とは似ても似つかないな。あの子は」
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