花は何時でも憂鬱で

青白

文字の大きさ
145 / 185
chapter8

傾城6





「随分、派手に捻ったみたいですけどどうしたんですか」

「………え?あ、えっと。転んじゃって」

俺は、白石先輩がまた困ったような笑みを作り
顔はこっちに向いているのに視線が泳ぐ白石先輩に俺は違和感を覚えた。


嘘__________なのだろうか?


「そういえば、さっき白石先輩をみかけたんですけど。その時の、アレって何だったんですか。」

「………………アレって?何のこと」

袖から見えた古い包帯のことも相まって
その違和感を確かめるために鎌をかけてみたら
分かりやすく声が裏返る白石先輩の様子に
転んで怪我をしたのは嘘なのだと理解した。



誰かに怪我を負わされたのだろうか。



「いや、大したことじゃないんですけど。職員室で桜崎先生と何か話しこんでるなと思っていて違いましたか?」

「いや、それは僕じゃないと思うな。」

「そうでしたか。変なこと聞いて、すいません。何の話をしてるのか気になってしまったので」

「ううん、気にしてない。」

首を横に振って答えると
白石先輩がテーブルに載っていたプリントに目線を向けて首を傾けた。

「あれ?………そういえば、一年生って健康診断まだ何だっけ?」

「はい。まだ、健康診断はしてないですけど」

「去年までは、入学してから1週間くらいでしてたからさ。あぁ、でもそっか。………西方くんに合わせたのかな。」

「合わせた?」

「あ。うん。西方と唯賀、それに天宮に月城はこの学園の資金の出資者とゆうか支援者だから多少の融通は利くんじゃないかな。あ、勿論、この学園の仕組みには流石に手は出せないみたいだけどね。でも、校長先生と面識自体あるみたいだからあんまり関係ないかもだけど。………あ。佐藤くんもだよね?」

「父さんのことですか。」

「うん。違ったかな?だって、ほら。今の宮路校長って担任の先生だったみたいだし」

「そういえば。そんな話が聞いたことあるような気がします」

容易に偽名で入学できた理由も支援者だったからかと納得すると同時に俺は何も知らないのだと認識する。
純さんのことは勿論、オーロ世代のことも。



_________カタリ。


白石先輩の話に耳を傾けていると不意に
風紀委員長の寝ているベッドの付近で何かが落ちたような音が聞こえてきた。白石先輩に断って押し当てていた袋を白石先輩に託すと風紀委員長の寝ているベッド近くに向かう。


あの音の正体が何だったのかベッドの付近を探すと
ベッドの下に端末が落ちているのを見つけて拾い上げる。



その端末をベッドの近くの台に置くと
寝ていたはずの風紀委員長に手首を掴まれる。




ゆっくりと、目蓋が開き柘榴色の瞳が覗く__________。




「………っいたい」

「いたい………?どこか痛みますか」

掠れるほどの声だったので
聞き耳をたてるために顔を寄せて聞き返す。


「会いたかった」


手首を掴まれている手とは反対の手を額に押し当てながら何かに耐えるようにゆっくりとその言葉が紡がれた。


「亡霊でも幽霊でも………………会いたかったんだ」


伏し目がちになっていた瞳がこちらに向いた瞬間
肌が粟立つほどの衝撃が身体をめぐった。


悲痛で切実でそれでいてとても甘い
そんな視線から目を離すことができなかった。

「………………、っ。」

「俺は、恨んでるよ。………俺が選べないのはお前のせいだから」


このままこの人の目を見てはいけないと理性的でない本能的な部分でそう感じて無意識に逃げるように後ずさると、掴まれていた手首を強く引き寄せられる。


_________ちかい。



「佐藤くん。大丈夫?」

「ぁ、はい_________だいじ、」


白石先輩への返答は言葉になる事なく途中で遮られた。


唇に重ねられる温度と柔らかい感触に硬直し


瞬刻の後、唇から柔らかい感触と温度が消え
離れていく風紀委員長がやけにスローモーションに見えた。


授業の終わりを報せるチャイムが鳴り響いた。





「西方宵を生徒会に置くと?」

「あぁ、そうだ。これは、決定事項だ。」

「いくら西方だったとしても、この実力主義の学園でそれは許されないでしょう」

生徒会長の判を押すだけとなった書類を唯賀は学年主任に突き返すが、学年主任はそれを受け取ろうとはしない。

「西方だからではない。いずれ、どうあろうともそうなる。アレは、普通の新入生ではない。うちの編入試験の難しさは知ってるはずだ。その試験で歴代最高得点を叩き出した。」

「それが何ですか。編入試験で最高得点を叩きだすのは何も西方だけではありません」

唯賀は学年主任にその書類を押しつけると生徒会室から立ち去ろうとする。

「唯賀。西方には会ったか。」

「どういう意味ですか。校長も貴方も何を言わせたいんですか。俺とあの男は違うんですよ。恋愛なんかにうつつを抜かしたようなあの男とは」

「唯賀勝羽もそう言っていた。恋愛なんか馬鹿のやることだってな。今のお前と同じように」

「それで、俺も同じようになると?」

「それは、知らん。別に、西方宵を好きになれと言っているわけではない。西方宵を受け入れろと言っているだけだ」

「話になりませんね。」

今度こそ、唯賀が生徒会室を立ち去ろうと扉を開くと
そこには宵が困ったような表情で立っていた。

「えと、立ち聞きするつもりじゃなかったんですけど」

まるで図ったようなタイミングで現れた宵から学年主任へと唯賀は視線を投げかけるがそうした所で何を言うわけでもない学年主任から視線を逸らし宵の横をすり抜けて行こうとする唯賀を学年主任が呼び止めた。

「今日はもう授業も終わりだ。学園の案内がてら寮まで送ってあげなさい。これは決定事項だ」

「え?僕は自分で帰れますので。だから、大丈夫です」

勢いよく宵が首を横に振って辞退するが唯賀が宵に目線を送る。

「行くぞ」

宵が一礼してから戸惑いながらも唯賀に着いていくのをただ見ていた学年主任は突き返された書類を唯賀の机に置いて生徒会室を出て行く。

「燐とは似ても似つかないな。あの子は」





感想 0

あなたにおすすめの小説

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

平穏な日常の崩壊。

猫宮乾
BL
 中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。