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chapter8
傾城8
しおりを挟む「ない………?」
教室に戻ってきてすぐに黒河先生に渡されたチョコレートを鞄にいれようと探るが、ポケットにいれたはずのそのチョコレートが無くなっていた。
「まぁ、いいか」
探すほどのものでもないので早く寮に帰ろうと思い、教室を出ようとした際にクラスメイトに呼び止められる。
「佐藤。桜崎先生が帰る前に職員室に寄れと言っていた。俺は伝えたからな」
恐らく、授業に出られなかったために呼び出されたのだろうと思って職員室に行けば案の定、大量のプリントを手渡された。
「コレ、明日までの課題ね。もしできなかったら、追加分あるから期待してくれていいわよ」
軽い文庫本、一冊分はあるだろうプリントというより冊子を手渡されてにこりと微笑む桜崎先生はマグカップを口につけてから、ほっと息を吐いた。
「まさか。こんな所で今までのいいように使われた憂さを晴らせるとは思わなかったわ」
「全部、聞こえてますよ」
「あら、聞こえるように言ってるのよ。それにしても、貴方は聞かないのね。」
「何がですか。」
「端末、外部との通信が出来なくなったことよ。気づかなかった?」
「端末、紛失したので。それより、通信障害ってなんですか。」
「ええ?!紛失したの?!驚いたわ………。端末っていったら、学生の必須アイテムでしょう!それを失くしたの?」
「起きたらなくなっていたんです。紛失届はもう出したので今日、学生相談室に確認しにいこうと思ってたんですけど。それより、何で通信障害になんてなってるんですか」
「あ、理由ね。理由は、言えないのよ。上からの指示で。それにしても…………。」
キャスターの椅子をくるくると回して遊んでいる桜崎先生がストレスでも溜まってたのか、堰を切ったように俺が聞いてもいいとは思えないことを話しだした。
「今年は異例が多くて困ってるのよ。編入試験は何故かいつもより難易度が上がったものを作れって言われるし。通信遮断は予告なく唐突に遮断するから、説明という説明もできないから。こっちの身がもたないわ。あぁ、そういえば編入試験貴方も受けたんだったわね。」
「例年のものがわからないのでなんとも言えませんけど。確かに、難しかったと思います。」
この学園の編入試験が難しい理由は
過去の問題が全く公開されない所にある。
それに、一般的な科目、国語、数学、英語などに加えて当日に、特別科目が設定されているからだろう。
俺の時は中国語が特別科目だったように
他の編入試験も何かしらの特別科目を受けている。
「そうでしょう!だから、今年の編入生例年より少ないのよね。受かったのはたったの4人だったわ。でも、その受かった全員、受験日を別々に受けることになっちゃって、違うテスト作るの大変だったのよ。あぁ………でも、人って驚きすぎちゃうと声も出ないものなのね」
桜崎先生が、くるくると回していた椅子を止めてから俺をじっと見つめてくる。
「ちょっと!そこは、何かあったんですか?とか聞く所でしょ!もう!気がきかないわね」
桜崎先生が子供のようにそっぽを向きながらもジトリとした目で早く聞けと訴えかけてくる。
「何かあったんですか」
「よくぞ聞いてくれたわね。なんとね!その編入試験で歴代最高得点になるまんて………」
「桜崎先生。生徒に話していいことと悪いことの区別ぐらい分けて下さいね」
「………りっちゃん。固いこと言わないで………も。ぁ、学年主任。あはは、すいません。つい」
学年主任を目に留めてから
桜崎先生の顔が見るからに固まった。
「つい、では困りますね。気をつけていただきたい」
学年主任が立ち去ると深いため息をついた桜崎先生は
また、マグカップに口をつけて一息をついた。
「じゃあ、明日までにプリントしっかりやってきなさいよ。りっちゃんに免じて補習は勘弁してあげるから。あぁ、そうそう。りっちゃんから聞いてるかもだけど、健康調査票、早めに提出してもらえると助かるわ。できれば、明後日までには頼みたいわ」
「分かりました。」
期日まで1週間近くまだあった筈だと思いながらも、桜崎先生に返答をして職員室を出る。
そこまで急かす理由を見つけられないでいたが、それよりもすれ違う生徒が皆一様に端末を手にして何かを話し合っていた。
「通信障害か」
この分だと恐らく端末の紛失届を提出した生徒相談室も混んでいるだろうと予想して寄るのはまた今度にしようと昇降口まで来たことによって、今まで端末を見ていたすれ違う生徒は全て、通信障害で話し合っていたと思っていたけれど、端末を見ていた理由はそれだけではなかったようだ。
「会長様と転入生だって」
「え?会長様と………。」
「でも。この子、綺麗_________。」
どうやら、会長と宵(よい)が映った写真を見て話し合っているらしいのだが、その話し合いをしていた生徒達が親衛隊の証でもある会長のモチーフカラーの黒や誰の色だったかまでは覚えていないがゴールドピンクのブレスレットを腕につけていた。
「本物の傾城なのかもしれないな。」
※
「あ!ちょうど、良かったー!」
寮に戻るなり鳴川さんに封筒を手渡される。
「はい。これ。………今、さっき届いて投函しようと思ってたんだー」
封筒の方の宛先人は『佐藤純』と表記されていた。
「ねぇ、あのさ。あかつ_______あ、王子様がご帰還かな?」
鳴川さんの視線が寮の外へと向かうので俺はその視線の先を辿ると、保健室で白石先輩を運んできた人がいた。
「王子様、また、今日も違う子連れて歩いてる。」
「王子様?」
「あれ?知らない?………百樹櫂君っていって、何でも中学の学祭でやった王子役がハマり役だったらしくて。みんなから王子って呼ばれているらしいよ。だけど!恋人がいるのに毎日、違う子連れ回してる。プレイボーイ何だよね。成ちゃんからなんか聞いてたりしない?」
「何で、白石先輩が出てくるんですか」
「その恋人っていうのが成ちゃんだから。」
恋人?
保健室のあの様子から2人の間に何かがあるとは思いはした。だけど、恋人同士の空気にはどうしたって見えなかったけれど。
「どんなに取り繕うとしても、あの王子様は嘘つきだよ。ハリボテの王子様」
「どういう意味ですか。」
「うーん、と。そういうこと?あぁっっ!もうこんな時間だ。僕の晩御飯の時間がなくなる!」
鳴川さんが腕時計で時間を確認すると
食堂へと向かっていった。
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