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chapter8
破壊2
「す、………きです_____。」
顔を真っ赤にした生徒が震える手で握る便箋を俺はただ
眺めていた。
宵(よい)からの接触が少しではあったが増えていると思うと同時に、ここ最近、何故だか顔も知らない生徒から呼び出される事が増えて非常に困っている。
「だから、あの………。これ、宵くんに渡しといてください。それじゃ、お願いします」
無理やり押し付けられた便箋をどうしたものかと
取り敢えず制服のポケットに入れながら、教室に戻ろうとしたのだが、頭上から揶揄するような声がかかった。
「これで、3日連続フルコンボだな。佐藤」
「そうですね。なので、この手紙、西方くんに渡しといてもらえますか」
「えー。何で?」
「楽しそうですね。黒河先生」
生徒の前で堂々と煙草を蒸しながら薄笑いを浮かべる黒河先生をジッと見つめていると、携帯灰皿に煙草を押しつけながら言った。
「だって、楽しいからな。お前の周り」
こっちからしたら、全く楽しくもないのだが
この保険医からしたら、3日連続、宵(よい)へのプレゼントなり便箋なりを押し付けられる俺はさぞ楽しいものなんだろう。
「つうか、そのうち荒谷とか矢井島とかのも押しつけられそうだな」
「それは、遠慮願いたいですね」
「ククッ、そんなに嫌そうにするなよ。まぁ、その前に新入生には学園入って初めての定期テストがあるから、そんな浮ついたこと言っている気にはならなくなるだろ」
この保険医の言う通り、林間学校のお知らせで
舞い上がっていた生徒達の興奮を壊すようにして定期テストの発表が行われた。
「そんなことより、あおいくん。」
「態とですか。」
「あったりー。西方が呼んでたから、ついね?その名前、お前の父親がつけたわけ?」
「どういう意味ですか。」
「んー?ただ、そのまんま。」
黒河先生が窓に手をつきながら尋ねてくる内容に
何と返そうかと考えを巡らせていると黒河先生の後ろから門川先輩が顔を出した。
「およ?蒼くんじゃん!やっほー!!………お?何々なーにっ!それ手紙じゃない?まさか、告白的な?」
野生の勘とでもいうのか三階という高さからポケットの中に入れたはずの手紙が少しはみ出ているのを見つけだして興奮したように身を乗り出す。
「耳元で喋るな」
黒河先生が手の甲で門川先輩のおでこをペチンと小突くがいつも以上にテンションのあがる門川先輩を止めるまでには至らなかった。
「えー。いいじゃんかぁー。誰から誰から?」
「門川、お前。毎週のように呼び出されてるんだからそんなにテンションあげるようなことないだろう?」
「それはそうだけどっ!だけど、気になるしっ!!」
「僕への手紙じゃありませんよ、転入生に渡してくれって言われただけです。」
「転入生?!俺も行くっ!」
「いや、今すぐ行くとは言ってな…」
「そうと決まれば。レッツゴー」
門川先輩は、三階の高さの窓から飛び降りて
目の前に降ってきた。
「さっき。中庭にいるって聞いたし!渡すのそれだけ?」
「ロッカーにも何個か紙袋がありますけど」
「ふむふむ。了解だ!」
門川先輩は、そういうとどこかに電話をかけて
半ば無理やりに教室の方へと連れられていく。
「やっぱり。アイツ…。他人を巻き込む天才だな」
「誰のことを言ってるのかしら?」
「誰かと思ったら、恋か。…………門川だよ」
門川先輩に強引に連れられながら
背後から現れた桜崎先生に黒河先生は呆れたように溜息を吐き出して、門川先輩を指差すのを見て俺は門川先輩を見た。
「そういわれれば、そうね。………でも、しょうがないわよ。彼が1番春田」
「春田叶多に似ているから………だろ?」
「あら、どうして分かったの?」
「春田信者のお前の口は開けば春田さんか叶多さんだからな。分からないわけがないだろ。そろそろウザったい」
「なっ!ウザったいって何よ!!」
春田に一番、似ている。
この人が?
※
「ほぅら!行こ~っ。俺もこっそり~後ろで覗いてるからさぁ!!つうことで、涼花、俺たちが戻ってくる間に俺の弁当持ってきて~!今日は、中庭でお昼食べようー。」
「誰が、お前のパシリなんてするか。」
「そんなツンケンしてないでさ。お願いーっ!」
門川先輩と中庭まで来ると速水先輩が中庭にあるベンチで待っていた。そして、ロッカーにいれてあった宵(よい)への手紙やらプレゼントやらが入った紙袋を持って。
「どこかなぁ~。転入生。………そういえば、名前はなんていうの?」
「宵(よい)って名前です。」
「………宵きゅんかぁ~。どんな子かなぁ。あっ!もしかして、あれじゃない?!」
門川先輩が指を指す方へと視線を向けると
何人もの生徒に囲まれてると思っていたが、宵(よい)の近くにいた生徒は、先日の金切り声をあげてぬいぐるみを抱きしめていた生徒だけだった。
それでも、遠くから伺い見るような生徒が多数いる事実があるのだけれど。
「あれかなぁ?宵くんって言うんだよね!ほらほら、行った行った!!!」
「今、行ったら完全に別の意味に捉えられそうなんですけど。」
「いいから、いいから」
門川先輩に押し出されるようにして宵(よい)の前に出ると宵(よい)は、きょとんとした表情から柔らかく微笑むと小首を傾げながら言った。
「あ、あおいくん!なんか久しぶりな感じするなぁ。あおいくんは、これからご飯?」
「………そう、です。」
「ふふっ。何かいつもより固くなってない?」
目の前の宵(よい)も後ろから目をキラキラさせている門川先輩も、朱門や他の名前も知らない生徒からの非難と敵意を伴う視線に気づく気配はない。
近づいてはいけない存在なのだということは分かっていたのだが、それを今、再認識した。
「あの、これどうぞ。」
「…………………僕、に?」
「はい、僕からではないのですが他の人から渡してくれと頼まれたので」
「わざわざ運んでくれたんだよね。………ごめんね。ありがとう!」
「………かんわいい………っ!!」
今まで全く会話に入ってこないのを不思議に思っていたら
、門川先輩が床に膝をついてどこから声を出しているのかもわからない様な絞り出した声を発した。
「………あの、大丈夫ですか?体調悪いんですか?」
「はいっ!大丈夫です!寧ろ、今、君のおかげで元気が出ましたぁっ!!」
「本当に大丈夫ですか?」
「蒼くん。どうしよう、天に召されそう。…………俺が死んだら箱いっぱいのりんご飴とチョコバナナと水飴、棺桶に入れといて。俺、それが好きだから。あ!綿あめも可。」
「昼食中にすいませんでした。失礼します。」
門川先輩を早く速水先輩の元へと届けて何とかしてもらおうと背を向け歩き出そうとしたら宵(よい)に腕を掴まれた。
「ねぇ、せっかくだからご飯一緒に食べよう?………ダメかな?」
「いや、待っている人が」
「ぜひ!食べたいです!!!」
「やった!じゃあ、一緒に食べよう!」
「………え?」
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