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chapter9
試験勉強1
宵(よい)と双子の件はすぐに学園に広まったらしく
学園中で注目されていた。
そして、俺は毎日のように校舎裏に呼び出されていた。
「宵くんに、何かあったら。分かってんだろうな」
「足だけは引っ張んじゃねぇぞ」
大柄な生徒に胸ぐらを掴まれて凄まれる。
足を引っ張るなと言われても、正直
あの勝負(ゲーム)は宵(よい)と双子がした勝負であって全教科の総合点が上の方が勝ちなのだから、俺が足を引っ張る要素なんてない。宵(よい)が上なのか双子のどちらかの方が総合点で上なのかの勝負(ゲーム)なのだから。
「分かりました。善処します」
「分かりゃいいんだよ」
まぁ、そんなこと知らないのか知っていたとしても宵(よい)が圧倒的に不利な条件であるのだから無理はない。
テストまでの期間は約1週間。宵(よい)はこの学園の授業をほとんど受けずにテストを受けるといっていい。いくら頭が良くてもその条件は不利だろう。それに加えて、あの双子のどちらも毎回のようにトップ5に入ってくる頭の良さは周知の事実らしい。
けれど、宵(よい)はその勝負(ゲーム)を提示したのだからそれなりの自信はあるのだろうから、俺が関与する場面はない。
今回の生徒は、思ったよりすぐに引いてくれたので今日は昼休みが潰れることもないと思っていたら俺と同じように呼び出された生徒がいたようだった。
そこを堂々と通り過ぎるわけにも行かないので、物陰からこっそりと覗き込むと白石先輩が数人の生徒に取り囲まれていた。
「いいから早く寄越せよ」
「手荒な真似は俺たちもしたくないわけ?分かる?」
「………イヤです。貴方たちには、いえ。貴方たちであってもそうでなくても渡せません。あれは、個人情報なんです。」
白石先輩は怖いのだろうに手をぎゅっと握りしめながら答えると、さっきの俺と同じように胸ぐらを掴まれて壁へと押し付けられていた。
「離して………くださいっ。」
昼休みが終わるまでに帰れなさそうな雰囲気に
遠回りしてでも教室に戻ろうと思って踵を返しその場から離れる。
「よっと。あーぁ、やっぱり三階はまずかったかなぁ」
久しぶりに聞く声に足が止まる。
そのまま、その声に耳を澄ませていると
それは、勘違いではないようだった。
「楽しそーですね。先輩たち。俺も混ぜてもらえる?あ、やっぱりさ、風紀の人も混ぜて一緒に楽しいお喋りする?」
「荒谷くん………。」
「ちょっと!荒谷くん!!話の途中よ!それにここ何階だと思って………って、貴方達そんなところで何してるのよ。」
ここは桜崎先生の使う準備室の真下の位置だ。
そこから、飛び降りた荒谷を見て焦った桜崎先生が窓から下を覗き、白石先輩とそれを取り囲んでいた生徒達を不審に思ったようだ。
「あー。………すいません。以後、3階からは飛び降りないように、気をつけます。」
荒谷新は
その場の空気を変える天才。
それが良いのか悪いのかは別にして、それは事実だと思う。
「それで、荒谷くん以外の子はそこで何をしてるのかしら?事と次第によっては、風紀に与からせる案件のようだけど?」
ここでの沈黙は肯定と取られる。
その質問をされてから、コンマ数秒して答えたのは荒谷だった。
「桜崎先生。………何か、落し物だそうですよ。俺もそれ探してからいくんでお説教はその後でヨロシクです。じゃあ、探しましょっか。先輩」
「もうっ!放課後にちゃんと来ること、いいわね!!」
荒谷の台詞に白石先輩を囲んでいた先輩たちが
驚いている様が目に浮かぶ。
「さてと。誰に頼まれたのか。それとも、個人で動いたのかは分かんないけど、もう、止めた方がいいと思うよ。こういうことはさ。止めないなら、そーだな。こういうこと起こるたびに、邪魔してやる。」
そして、チッという舌打ちをして白石先輩たちを囲んでいた生徒の遠ざかっていく足音が聞こえた。
「相変わらずの良いやつ」
俺も同じように荒谷と白石先輩がいる場所から遠ざかった。
※
荒谷が昼休みに学園に来ていたのは確かだと思うのだが、教室に来ることはなかった。そして、今日も放課後の混雑時を避けるために教室に残り、テスト前なのもあって試験勉強をしていたら、誰かが教室に入ってきた。
「春。」
「春じゃない。」
唯一、その名前を呼ぶ荒谷が俺の目の前の席に座るので
机に広げていた教材から顔をあげる。
「いいだろ。誰もいないし。………それより、転校生来たんだって?ケーセーチャンって名前の。変わった名前だよな。どこ出身?」
「それは、名前じゃない。」
「じゃあ、なんていう奴?俺、知らなくてさ。」
「西方、宵(よい)」
「ふーん。で、何で。勉強してるの?真面目だな」
荒谷が俺が広げている教科書とノートをまじまじと見つめながら尋ねてくる。
「テスト前だから。」
「へぇ。………何のテスト?小テストとかあったっけ?」
「定期テスト前だよ。」
最初、ふざけてるのかとも思ったが
荒谷の顔がみるみる青ざめていくのを見て
俺は察した。
「定期………テスト。いつ………?」
「1週間後」
「1週間後?!………春。助け、」
「助けない。自分で何とかしろ」
「そこをなんとか。」
荒谷に拝み倒されるが面倒くさい事をする理由が見当たらない。
「「えぇ~。いいじゃん。」」
人が疎らになった時間帯だった為に、他に誰かがいるとは思わなかった。しかも、この小夜兄弟が。
「オマケ何だし、いいと思うよ。僕は。ねぇ、陽夜?」
「うん。オマケなんだし。いいと思うよ。ねぇ、陽日?」
「あ。どっかで見たことあると思ったら、あの悪戯好きな双子か。」
荒谷が現れた小夜兄弟を見比べながら言うと、双子は頰を膨らませながら不満そうな顔をした。
「「失礼だなぁ。悪戯好きなんて。僕達はただ、揶揄いがいのある玩具で遊んでるだけだよ」」
「玩具って。ここにはそんな玩具なんてないだろ。」
「「暇だったから。遊ぼうと思って」」
荒谷と小夜兄弟が言葉遊びをしているうちに、荷物をまとめて帰ってしまおうかと思っていたら、ジッとした視線を向けられている気がして小夜兄弟の片方と視線が合った気がしたが、すぐに逸らされる。
何だ………?
「「まぁ、でもいいや………。僕達はオマケには興味がないから。本物の玩具に遊んでもらうね」」
小夜兄弟の陽日か陽夜のどちらかによってあからさまに逸らされた視線の意味が分からなくて俺は小夜兄弟のその片方に意識を向けていたが、教室から出ていく小夜兄弟のどちらからもそれ以降は視線を向けられることはなかった。
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