花は何時でも憂鬱で

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chapter9

試験勉強2





「意味がわからない。オレ、ハーフダカラ。………ちょっと、休憩行ってくる。………春はどうする?」

双子と別れてからまた、一緒にいるのを見られたくはなかったので人のあまりこない図書室に移動してから、2時間ほどが経った。荒谷が机に突っ伏すのを視界の端に捉える。

「行かない」


2週間ほどのブランクは相当キツかったのか
荒谷に頼みこまれて、結局、一緒に試験勉強をすることにはなったが、特に教えることもないくらいスラスラと問題を解いていた。


日本史を除いては。


荒谷が苦戦していた問題集を手に取ると
やはり、日本史が特に苦手らしくほぼ真っ白の状態だった。書けていても漢字のミスがあってこのままだと50点も取れるかどうかどころの話じゃなさそうだ。


「漢字ね」

問題集を元あった場所へと戻して
図書室の案内図を眺めてから参考書と分類されたエリアへと向かう。目的の本を手に取ると、本が数冊落ちたような物音が聞こえてきょろきょろと辺りを見回す。


「………玄…せ、……先輩。………んん」

誰かが
本棚を何個か挟んだ通路で本を読んでいるとか本を選んでいるという言い訳も通じないような事を行なっていた。
図書館という公共の場ではあったが、邪魔をする気もさらさらないので立ち去ろうと思っていたら無理やりキスをされていた方の生徒が顔を捩ると俺の方を向いて驚いたように目を見開いた。


「ひっ………。いやだっ!」

俺に気づいたらしい生徒は一目散に逃げていった。
俺がここに来てしまったこと自体
何となく良くないことだけは分かってはいるのだが
この場を去っても、より、印象づけるのは目に見えていたので、俺は本を選び続けることにした。

「はぁ。………逃げやがった。」

苛立たしげな溜息をついて端末で何かを打ち込むと、入口側へと足を運んでいく男を横目にいれながら立ち去ったのを確認してから俺も入口側へと向かうと、本棚の後ろに隠れてその男が立っていた。

「何か本をお探しなようですね。どんな物をご所望でしたか」

俺の持っていた本を手に取ると俺がさっきまでいた通路に入ると、新しい本を抜き取って渡される。

「漢字の学習でしたら、こちらの方が宜しいかと」

「ありがとうございます」

「いえいえ。なので………貴方が先ほど見たことはご内密にお願いします」

その男は、人差し指を立ててにこりと微笑む。


「おい、糞鬼畜ドS眼鏡。今度は随分、趣味が変わったんだな」

「河井くん。やっと来ましたか」


河井が苦虫を潰したような表情を浮かべている原因であろう男を一瞬、見つめる。何処かで見覚えのある色をした瞳だと思っていると、急に河井に腕を引かれて引き寄せられる。


「武楠。………俺は、こいつに借りがあんだ。用事は後だ」


河井は俺やあの男の返答も聞こうともせず、図書室の天体や星の本が置いてある場所に着くと離そうともしなかった手を離した。

「アイツに、近づくな。」

「俺から近づいたわけじゃないんですが」

「近づけさせもするなって、ことだよっ!」

「急に大声あげないでください。ここ図書室なの忘れてませんか。」

「お前さ、武楠の噂くらい聞いたことあんだろ。」

噂………?さっきの事から察するに遊びが激しいとかそんなのだろうと思っていると、背中を本棚に押しつけられる。

「糞ドS眼鏡はな。相手にする奴ら全員色んな意味で啼かせなきゃ満足しない性質の悪い奴なんだよ。おまけに、美人喰いっつうオプションもついてる。」

「だったら、尚更。………俺には関係ないでしょ。あっちから近づくことがないなら、俺も近づくきなんてない」

肩を掴んでいる腕を離させようとしたら河井が頭を掻き毟る。

「そういうのが1番、性質がワリんだよ。マジで」

「何の話ですか」

「例えば、そうお前はきっちり着込んだスーツの女を脱がせたいとかそういう感じなんだよ。わかんだろ。白いものほど汚してみたいとかそんなの!ほら、アレだ………。ワイシャツとか、使ってない方の消しゴムの角とかっ!」

「意味が分からないです」

ひとりでに迷走を始めた河井に呆れて
荒谷たちがもう帰ってきてもおかしくはない時間になってきてるので掴まれてる腕を無理やり引き剥がす。

「糞ドS眼鏡に共感したいとは思わねぇよ。でも、お前は………アイツの性癖ドストライクなんだよ。…………つまりはお前、鏡見ろ。マジで」

「鏡を見ろって、喧嘩でも売ってるんですか」

「あぁ?ここまで言って分かんねぇとか、馬鹿かよ。つうか、お前が何しようしてんのか何企んでるのかは知らないがな、その顔は明らかに利益になるはずだろ。」

「利益って。アンタがなんの意図があって言ってるのかは知らないけど、俺は………。」

「俺はなんだよ。………つか、意図なんかそんなもんねぇよ。俺はそんなバカみてぇに綺麗な面してんのに何でわざわざ隠してんのかって聞いてんだ」

「嫌悪されるものは隠すべきだ。利益になんてならない。」

俺は、醜いものを気味が悪いものを晒すような真似をしない絶対に_______。
それは、不利益にしかならない。

「………どういう意味だ。」

河井の戸惑ったような表情を見て河井の意見が覆ることはないと踏んで、これ以上話し合っても堂々巡りになるのは目に見えていた。

「別に、そのままの意味ですよ。他意はないです。」



なんで、戸惑ったような顔をするのか
俺の顔を見たなら尚更、この顔が嫌悪されるものだと分かるはずだ。



河井が何をしたいのかその言動の意図が何なのか
分かりもしないが、河井が嘘をついていることだけは分かる。



『……化物みたい』

『気持ち悪い』


俺の存在がそういうものである事だけは知っている。
分かりきっている。



「マジで行きやがった。………つうか、何で分かんないんだよ。甘やかされて育ってんなら尚更、気づかないわけないだろ。余程の鈍感でもない限り_____。嫌悪されるものってなんだよ。マジで意味わかんねぇ」





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