161 / 185
chapter9
呪い2
「すいません。」
「………ごめんなさい。って_______ん?」
荒谷と矢井島が先に屋上から降りていった後に俺も屋上から下に降りていくと、音楽室から出てきた誰かとぶつかる。
「あおいくんだよ、ね?………………いつもと髪型が違うから、一瞬、分かんなかったよ。似合ってるね。その髪型。………………ぁ、えっとね、実は、自習してたんだ。一応、賭けちゃったし。あおいくん関係ないのに巻き込んじゃったし、頑張んないとだからね。」
昼休みの時間帯に一人で音楽室にいるとは思わなくて
音楽室の方を一瞬見ただけなのに
それを汲み取った宵(よい)が付け足すようにしていった。
「………それにしても、あおいくんは風邪?それとも、あおいくんも臭いにやられちゃった?」
「花粉症対策みたいなものです」
「そっかぁ。………………けほっ。僕は旧校舎に咲いてるっていう臭いにやられちゃった。徐々に臭いは落ち着いていくっていうけど臭いには敏感な方だから他人よりだめで。でも、お揃いのマスクだね」
マスク越しににっこりと微笑んだ宵(よい)は、けほけほと咳をしだすと俺に気を使って足早に教室へと先に戻った。
足音が遠のいていくのを確認してから
宵(よい)と同じように、俺も数段、階段を降りていたら
「_______見つけたっ!Cマイナス!!」
廊下で耳が痛くなるほど聞き覚えのある言葉を叫んで、俺を指差した朱門が詰め寄ってくる。
「宵に近づかないでよ!………聞いてるの!!?」
返事をしない俺に苛立ったのか、詰め寄ってきたと同時に強烈に香る甘い香りに顔を背ける。
「………………っ、ゴホッ。ケホっ。」
「_________無視するなよっ!!」
朱門は無視され続けることに苛立つのか俺の肩を掴んで更に大きい声で責め立ててくるが、ここは特別教室のみの棟になっているから、誰も人がいないため気づかれることはない。
「朱門。ケホ、。少し、離れ…………」
階段の上で、これ以上暴れられたくなかったので
興奮する朱門を落ち着かせようと手すりを掴んでいた手を離して、肩を掴んでいる手首を掴もうとした手は何も掴むことはなく空を切った。
「触るなっ!!ムカつく!!!」
階段の途中で、朱門に見つかったこと。
身に覚えのある甘い強烈な匂いと朱門が思った以上に力が強かったこと、状況が場所が良くなかった。
朱門に肩を押される感覚と派手な音を立てて階段を滑り落ちていく衝撃。
「ぁ………。」
階段の踊り場に落ちて身体中の節々が痛むのを感じながらゆっくりと身体を起こす。朱門が突き出してしまった手がそのままなのを見るとそんなに時間は経っていないらしい。
「………………っ、ぃ。」
顔面蒼白という言葉が当てはまる朱門の表情を目にして
階段を落ちたくらいで、どこかかしら打っただけの一瞬の痛みぐらいで、騒がれたくはなかったので、さっさと立ち上がるが朱門の表情は変わることはなかった。
「………………朱門_______っひゅ。」
「………っ_______。」
静かな廊下に大きく響くおかしな呼吸音を聞かれたくなくて、手の甲で口を抑える。
絶句している朱門の不安を煽るように上から誰かが降りてくる足音が響いていた。この状況を見られるのは、あまり良くないと口を抑えていた手を外した瞬間に。
「悪くない。俺は、悪くないっ!お前が、悪いんだっ!!!」
朱門は、堰を切ったように
それだけ言うと走り去っていった。
朱門の足音が遠のいていくのを聞きながら
安堵したためか、咳き込む咳を手首で抑えて
階段の手すりを使って階段を降りようとしたら
「何してるの。」
階段の上からかけられる声に顔をあげると
風紀委員長が立っていた。
「………っ、屋上から教室に帰る所です。」
風紀委員長にバレないように息を整える。
朱門から香った匂いも時間が経って落ち着き始めたらしく、今は、酷くなることもないだろう。
「今、何か派手な音した気がするんだけど気のせい?」
「ついさっき、階段を踏み外したのでそれのせいだと思います。」
「踏み外したって、何で?」
「何でと言われても。………ただ、足元を良く見てなかったせいだと思います。今度からは、気をつけます。」
風紀委員長の質問の仕方が明らかに俺が何かを隠していると疑うような質問だったので、これ以上何かを突っ込まれたくなかったから、昼休みも終わりの時間というのもあり早めに会話を切り上げる。
「………待った_______。」
風紀委員長から背を向けて歩き出した足を止める。
呼び止められた声に反応したわけではなく、左足に走ったツキリと痛覚を刺激する突き抜けるような痛みに足を止めるしかなかった。
階段を降りてきた風紀委員長に腕を掴まれて振り向かされる。
「痛くない?」
「何がですか。」
「_______怪我をしてるから。」
風紀委員長にバレるような下手は打っていないはずだと思って風紀委員長の向いてる方向に視線を這わせると、階段を滑り落ちる時にでも擦ったのか手のひらが擦りむけていた。
「これくらいは痛くも何ともないので、放っておいて頂いて大丈夫です。」
「俺は、大丈夫なんて簡単にいう人間の言葉は信用してないんだ。………………特に、痛いなんて絶対に言えなさそうで、誰かに手を伸ばすことなんて知らなそうな人の言葉は。」
風紀委員長はそう言うと、掴んでいた腕を離した。
「図星だった?………本当は痛い?」
「まさか。僕は、そんな不器用な人間じゃないですよ。」
風紀委員長によって、掴まれていた腕を反対の手でぎゅっと掴む。
「気分を害したなら、ごめん。………………けど、俺の目にはそんな風に見えるよ。」
心外だ。
俺は、そんな弱い人間じゃない。
誰かに頼るような人間じゃない。
誰かに頼るくらいなら、壊れてしまった方がマシだ。
お人好しの人間は嫌いだ。
荒谷みたいに。
でも、多分。この人は、荒谷とは違って俺だけに特別に優しいわけではない。いい人なのだろう。前、会計が綺麗事人間だと言っていたから、多分。そういうタイプ。
けれど_______そういう暖かい目をされるのは気持ち悪くて______________嫌いだ。
掴まれてた腕の暖かさが消えてくれなくて尚更、イヤだ。
無関心で無干渉でいてくれれば、楽なのに。
楽でいさせて欲しい。
「だとしたら、勘違いです。僕は親には甘やかされて育ったタイプなので。………その真逆ですよ。」
それなら、俺が助けのいる弱い人間だと風紀委員長に
思わせなければいい。
そうすれば、関心も干渉もこの人はしないはずだ。
あなたにおすすめの小説
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
平穏な日常の崩壊。
猫宮乾
BL
中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)