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第4章「橘風佳はそこそこ侮れない」
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「おい、良い加減起きろ。バス行くぞ」
「ん~?もう?」
続々と教室からクラスメイトが出ていく中、1人夢の中で微睡んでいた橘を起こす。
「ふぁ~、起こしてくれてありがと。褒めて遣わす~」
「良いから早く出ろ。担任が睨んできてんぞ」
橘は大きく欠伸をしながら教室を出ると、そのまま昇降口へと向かっていく。
「私は鍵を置いてくるから結城くんは主任の先生に従ってグラウンドに皆を整列させておいてくれる?」
「了解っす」
そう言うと教室の鍵を閉めて去っていく早川先生。
オレは言われた通りグラウンドへ向かうつもりだったが、途中で何故か先に行ったはずの柊が戻ってきた。
「どうした?忘れ物か?」
「ご、ごめんなさい……。私も学級委員長なのに、その……。忘れちゃってて」
柊は申し訳なさからなのか俯いてしまい、声も尻すぼみになっていた。
本当に真面目な奴だ。
「気にすんな。誰だって失敗する時くらいある。だから、オレがもし失敗したらその時は笑って許してくれ。頼む」
「……うん」
オレの言葉に柊は顔を上げて小さく頷いた。
オレだって大抵はいつもミスしてばかりだ。
でも、そんな時はだいたい笑って許してくれる人が側にいた。
それだけでオレはまあ、救われていたりする。
柊もそうなってくれれば良いなと、オレは思う。
グラウンドでは生徒たちがガヤガヤと騒ぎながら、列をなしていた。
「来たか、結城。人数と欠席している生徒の確認をしてくれ」
「うっす」
五十嵐主任にそう言われ、オレは列に並んでいる生徒を1人ずつ確認していこうとしたが。
「……、私がやっても良い?」
と、柊に言われてしまった。
確かに人数を数えるだけならば、別に誰がやっても差し支えはないだろう。
むしろ、オレよりもしっかりしている柊の方が適任まである。
挽回もしたいだろうしな。
オレは素直にその申し出を了承した。
柊が1人ずつクラスメイトを確認している間、オレは先頭に立つクラスメイトと軽く話す事にした。
「……何?」
今日も露骨に嫌な顔をして睨んでくる髪の長い女子生徒。
蟻塚である。
「いや、お礼を言っておこうと思って。ありがとな。来てくれて」
「死ね」
感謝したのに罵倒されたのは生まれて初めてだった。
ちょっと泣きそう。
「始業式の日に殴りかかろうとしたのを怒ってるのなら謝る。確かにあれは女子に対する行為じゃなかった。ごめん」
「……」
視線を逸らしてスマホを弄り出す蟻塚。
さすがにもう話を続ける気はないらしい。
彼女の後ろにいる生徒が「こんな奴ほっとけ」とオレに目で訴えてくる。
わかってはいるつもりだ。
多分。いや、きっと。
今後一生を掛けたとしても蟻塚と仲良くなれる日など来ないということくらいは。
でも、それでも。
放っておく気になれないのはオレという人間の性なんだろう。
「もし困ったことがあったら何でも相談してくれ。力になる」
本当にお節介で、お人好しだ。
「ん~?もう?」
続々と教室からクラスメイトが出ていく中、1人夢の中で微睡んでいた橘を起こす。
「ふぁ~、起こしてくれてありがと。褒めて遣わす~」
「良いから早く出ろ。担任が睨んできてんぞ」
橘は大きく欠伸をしながら教室を出ると、そのまま昇降口へと向かっていく。
「私は鍵を置いてくるから結城くんは主任の先生に従ってグラウンドに皆を整列させておいてくれる?」
「了解っす」
そう言うと教室の鍵を閉めて去っていく早川先生。
オレは言われた通りグラウンドへ向かうつもりだったが、途中で何故か先に行ったはずの柊が戻ってきた。
「どうした?忘れ物か?」
「ご、ごめんなさい……。私も学級委員長なのに、その……。忘れちゃってて」
柊は申し訳なさからなのか俯いてしまい、声も尻すぼみになっていた。
本当に真面目な奴だ。
「気にすんな。誰だって失敗する時くらいある。だから、オレがもし失敗したらその時は笑って許してくれ。頼む」
「……うん」
オレの言葉に柊は顔を上げて小さく頷いた。
オレだって大抵はいつもミスしてばかりだ。
でも、そんな時はだいたい笑って許してくれる人が側にいた。
それだけでオレはまあ、救われていたりする。
柊もそうなってくれれば良いなと、オレは思う。
グラウンドでは生徒たちがガヤガヤと騒ぎながら、列をなしていた。
「来たか、結城。人数と欠席している生徒の確認をしてくれ」
「うっす」
五十嵐主任にそう言われ、オレは列に並んでいる生徒を1人ずつ確認していこうとしたが。
「……、私がやっても良い?」
と、柊に言われてしまった。
確かに人数を数えるだけならば、別に誰がやっても差し支えはないだろう。
むしろ、オレよりもしっかりしている柊の方が適任まである。
挽回もしたいだろうしな。
オレは素直にその申し出を了承した。
柊が1人ずつクラスメイトを確認している間、オレは先頭に立つクラスメイトと軽く話す事にした。
「……何?」
今日も露骨に嫌な顔をして睨んでくる髪の長い女子生徒。
蟻塚である。
「いや、お礼を言っておこうと思って。ありがとな。来てくれて」
「死ね」
感謝したのに罵倒されたのは生まれて初めてだった。
ちょっと泣きそう。
「始業式の日に殴りかかろうとしたのを怒ってるのなら謝る。確かにあれは女子に対する行為じゃなかった。ごめん」
「……」
視線を逸らしてスマホを弄り出す蟻塚。
さすがにもう話を続ける気はないらしい。
彼女の後ろにいる生徒が「こんな奴ほっとけ」とオレに目で訴えてくる。
わかってはいるつもりだ。
多分。いや、きっと。
今後一生を掛けたとしても蟻塚と仲良くなれる日など来ないということくらいは。
でも、それでも。
放っておく気になれないのはオレという人間の性なんだろう。
「もし困ったことがあったら何でも相談してくれ。力になる」
本当にお節介で、お人好しだ。
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