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第4章「橘風佳はそこそこ侮れない」
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「あっ、級長も罰ゲーム大富豪やる?」
バスが走り出してしばらくすると、前の席の男子がそう声をかけてきた。
「罰ゲームって何をするんだ?」
「バスのカラオケで歌う」
なるほど。確かにクラスメイトの前で歌うとなれば、罰ゲームみたいなものか。
「わかった。やるよ」
「よっしゃ!ちなみに都落ちはなしだから安心して」
「了解」
こうして、オリエンテーション合宿のバス移動は大富豪大会になった。
最初のうちこそ、少人数でのプレイだったが時間が経つに連れて人が増え、気付けば倍ほどの人数になっていた。
とりわけオレはまだ一度も負けてはいなかったが、橘が途中から参戦してからは状況が一変。
何故か最後の最後まで上がれないという事態が頻発し、そして。
「級長、苦しそうだね~」
心の底から楽しそうにしている橘に、オレは鋭い視線を向ける。
「やってんな?」
「えぇ~、酷いなぁ。根拠もないのに人を疑うとか~」
確かに根拠なんてない。
だが、大富豪で個人を狙って最下位に落とすことなど出来るものなんだろうか?
都落ちも存在しないというのに。
それとも人数が多くなった分、カードが偏りやすくなったのか?
「よし、上がり!」
他のクラスメイトが上がってしまい、残ったのはついにオレと橘だけとなる。
相手は2枚。さて、どう出る?
「ん~、ウチはパスかな~」
場にあるスペードのKを見ながら、橘は余裕の表情でそう言ってのけた。
その態度が逆に怪しく感じるが。
「大富豪って人生みたいだよね~。配られたカードだけで勝負しないといけないとことか特にさ~」
「そうかもな。でも」
オレはそこで言葉を切ると、手札の1枚を場に出した。
「人生はゲームのようにやり直しは出来ないし、進むか逃げるかの2択だけだ」
オレが出したのはジョーカー。
残り2枚はスペードの8とハートの5。
つまり8切りして5を出せば勝ちである。
「なるほどね~。級長はそうなんだ?でもさ、2択だけだと思ってるならこの先辛いんじゃない?」
「は?」
そう言いながら橘が場に出したカードはスペードの3。
ジョーカーに対して最強のカードである。
「はい、級長の負け~」
最後に出されたのはクラブのJ。
まさかスペードの3を最後まで持ってるなんてな。
「進むのも逃げるのも良いけどさ~。たまには休憩って選択肢も必要だよね~。頑張りすぎも体に毒だよん」
「……くそっ」
変わらず笑顔を浮かべる橘に、オレは舌打ちするしかなかった。
とはいえ、負けは負けだ。
罰ゲームはしっかり受けるとしよう。
「級長の歌、楽しみだな~」
悪戯っぽい笑みでオレを見る橘。
正直なところ、歌に自信なんてないがここまで来たら覚悟を決めるしかないだろう。
オレは一昔前の曲しか載っていないようなカラオケの選曲リストから、1曲選ぶと覚悟を決めてマイクを手に取る。
流れてくる音楽に身を任せて歌い始めると、クラスメイト全員がしーんとした様子で聞き入っていた。
別に音痴というわけじゃないはずだけど、こうしてじっくり聴かれるとさすがに恥ずかしくなってくるな……。
柊が何故かじっとこっちを見てくるし。
頼むオレを見ないでくれ。他人ならまだしもクラスメイトだと余計恥ずかしいから。
羞恥心に悶えそうになりながらも、どうにか最後まで歌い切ったオレは緊張から解放され、深く息をついた。
「普通に上手くて草~。おもんな~」
拍手をしながらそんなことを言ってきたのは、何故か大笑いしている橘だった。
そんなに面白かっただろうか。オレとしては羞恥心でそれどころじゃなかったんだけども。
「次は絶対お前に歌わせてやるからな?」
「良いよん。受けて立つ~」
バスが走り出してしばらくすると、前の席の男子がそう声をかけてきた。
「罰ゲームって何をするんだ?」
「バスのカラオケで歌う」
なるほど。確かにクラスメイトの前で歌うとなれば、罰ゲームみたいなものか。
「わかった。やるよ」
「よっしゃ!ちなみに都落ちはなしだから安心して」
「了解」
こうして、オリエンテーション合宿のバス移動は大富豪大会になった。
最初のうちこそ、少人数でのプレイだったが時間が経つに連れて人が増え、気付けば倍ほどの人数になっていた。
とりわけオレはまだ一度も負けてはいなかったが、橘が途中から参戦してからは状況が一変。
何故か最後の最後まで上がれないという事態が頻発し、そして。
「級長、苦しそうだね~」
心の底から楽しそうにしている橘に、オレは鋭い視線を向ける。
「やってんな?」
「えぇ~、酷いなぁ。根拠もないのに人を疑うとか~」
確かに根拠なんてない。
だが、大富豪で個人を狙って最下位に落とすことなど出来るものなんだろうか?
都落ちも存在しないというのに。
それとも人数が多くなった分、カードが偏りやすくなったのか?
「よし、上がり!」
他のクラスメイトが上がってしまい、残ったのはついにオレと橘だけとなる。
相手は2枚。さて、どう出る?
「ん~、ウチはパスかな~」
場にあるスペードのKを見ながら、橘は余裕の表情でそう言ってのけた。
その態度が逆に怪しく感じるが。
「大富豪って人生みたいだよね~。配られたカードだけで勝負しないといけないとことか特にさ~」
「そうかもな。でも」
オレはそこで言葉を切ると、手札の1枚を場に出した。
「人生はゲームのようにやり直しは出来ないし、進むか逃げるかの2択だけだ」
オレが出したのはジョーカー。
残り2枚はスペードの8とハートの5。
つまり8切りして5を出せば勝ちである。
「なるほどね~。級長はそうなんだ?でもさ、2択だけだと思ってるならこの先辛いんじゃない?」
「は?」
そう言いながら橘が場に出したカードはスペードの3。
ジョーカーに対して最強のカードである。
「はい、級長の負け~」
最後に出されたのはクラブのJ。
まさかスペードの3を最後まで持ってるなんてな。
「進むのも逃げるのも良いけどさ~。たまには休憩って選択肢も必要だよね~。頑張りすぎも体に毒だよん」
「……くそっ」
変わらず笑顔を浮かべる橘に、オレは舌打ちするしかなかった。
とはいえ、負けは負けだ。
罰ゲームはしっかり受けるとしよう。
「級長の歌、楽しみだな~」
悪戯っぽい笑みでオレを見る橘。
正直なところ、歌に自信なんてないがここまで来たら覚悟を決めるしかないだろう。
オレは一昔前の曲しか載っていないようなカラオケの選曲リストから、1曲選ぶと覚悟を決めてマイクを手に取る。
流れてくる音楽に身を任せて歌い始めると、クラスメイト全員がしーんとした様子で聞き入っていた。
別に音痴というわけじゃないはずだけど、こうしてじっくり聴かれるとさすがに恥ずかしくなってくるな……。
柊が何故かじっとこっちを見てくるし。
頼むオレを見ないでくれ。他人ならまだしもクラスメイトだと余計恥ずかしいから。
羞恥心に悶えそうになりながらも、どうにか最後まで歌い切ったオレは緊張から解放され、深く息をついた。
「普通に上手くて草~。おもんな~」
拍手をしながらそんなことを言ってきたのは、何故か大笑いしている橘だった。
そんなに面白かっただろうか。オレとしては羞恥心でそれどころじゃなかったんだけども。
「次は絶対お前に歌わせてやるからな?」
「良いよん。受けて立つ~」
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