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第4章「橘風佳はそこそこ侮れない」
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バスでの移動中は大富豪にカラオケにと散々だったが、その後は何事もなく目的地へと到着した。
バスから降りて荷物を受け取ると、そのまま宿泊施設に入ってチェックインをすませる。
山の中だと聞いていたからてっきりテントを張るような場所を想像していたけれど、案内されたのはホテルだった。
しかも、結構いいホテルだ。
「なんかウチの学校をやってる偉い人が、ここのオーナーと友達らしくて部活の合宿とかにもここをよく使わせてもらってんだってさ」
「なんでお前がそんな事知ってんだ?」
自慢げに話す矢渕にオレは疑問の目を向ける。
「隣の席だった奴と色々話したんだよ。暇だったし」
「お前寝てなかったか?」
「話が面白くなさすぎてな」
薄情すぎんだろ。まぁ、こいつに人情を期待する方が間違っているか。
荷物を部屋に運び込むと、そのまま隣接した体育館のような場所に移動する。
大方、今日と明日の予定を説明して少し別の話もした後にようやく昼食といった流れになるだろう。
しかも、飯盒炊爨。
一応カレーも合わせて作っていくらしいが、この際はっきり言おう。
オレは飯盒なんて見たこともないし、飯盒炊爨なんて聞いたこともなかった。
「キャンプとかで使う奴らしい。知らんけど」
と、矢渕は言っていたが本当に大丈夫だろうなオレのグループは?
「よし、とりあえず米を炊く奴とカレーを作る奴で分けるか」
体育館での長話が終わり、いよいよ昼ご飯作りへ。
ブロックで囲われた複数のキッチンがある場所にクラスメイトたちがそれぞれグループで分かれ、調理を開始する。
「火は?」
「オレがやっとく。野菜切ったり米をといだりを頼む」
「野菜、やろうかな」
と、柊がちょっと自信なさげに言う。
「なら、米」
と、次に何故かウンザリした表情で蟻塚がそう答える。
相当柊が努力したみたいだが、ちょっと可哀想に見えてきたな……。
「ウチはどっちでもいいけど今日はナホチとイチャイチャしよっかな~」
「ナホチ?」
「ん。柊南帆だからナホチ。可愛いっしょ~?さあ、いこいこ~」
そう言って、橘は柊に抱きつくとそのまま野菜を取りに行ってしまう。
……本当に自由だな。
残りは蟻塚と矢渕だが。
「代わるか?」
矢渕に小声で聞く。
こいつらが仲良くしている姿なんて想像出来ないし、喧嘩でもされたら困る。
「任せなって。腹減ってるし普通にやるよ。皮肉は混ぜるかもだけど。カレーだけに」
「その調子なら問題ないか」
米は2人に任せてオレは薪とマッチを持ってくると、早速火おこしを始めた。
最初は結構苦戦するかと思っていたが、案外簡単に火が着き、手が空いてしまったオレは4人の様子を見に行くことにした。
「何か手伝うことあるか?」
楽しそうに会話していた橘と柊にそう話しかけると、橘は肉を指さして「お願い~」と言ってくる。
オレは2人の隣に並んで用意されていたまな板の上に肉を乗っけて食べやすい大きさに切っていく。
それにしても。
「2人とも手が綺麗だな」
「……、えっ!?」
柊は驚いたのか、持っていた野菜をまな板に落とすと、顔を真っ赤にしながら手を隠す。
「なんだなんだ~?ウチらを褒めたって何も出ないぞ~?ねえ、ナホチ?」
「……う、うん」
何やら柊は照れているのか、どこか落ち着かない様子だった。
「ただ褒めただけだぞ?」
「ホントに~?なんかナンパしてるみたいだったけど~?」
「……、悪い。嫌な気分にしたなら謝る」
「あはは、なに真剣な顔してんの~。冗談だよ冗談。普通に嬉しかったから謝んないでよ~」
と、橘は笑いながらオレの背中を叩く。
「私も……嬉しいよ?」
頬を赤く染めながらも励まそうとしてくれているのか、柊も笑顔でそう言ってくれる。
なんか申し訳ないな。
「肉切れたから先炒めておくぞ?野菜も切れたら持ってきてくれ」
「うん、お願いします」
とは言え、オレに出来ることは限られている。
例えなりゆきで決まったようなグループでも最高のメンバーであることに代わりはない。
オレはオレで頑張るのみだ。
バスから降りて荷物を受け取ると、そのまま宿泊施設に入ってチェックインをすませる。
山の中だと聞いていたからてっきりテントを張るような場所を想像していたけれど、案内されたのはホテルだった。
しかも、結構いいホテルだ。
「なんかウチの学校をやってる偉い人が、ここのオーナーと友達らしくて部活の合宿とかにもここをよく使わせてもらってんだってさ」
「なんでお前がそんな事知ってんだ?」
自慢げに話す矢渕にオレは疑問の目を向ける。
「隣の席だった奴と色々話したんだよ。暇だったし」
「お前寝てなかったか?」
「話が面白くなさすぎてな」
薄情すぎんだろ。まぁ、こいつに人情を期待する方が間違っているか。
荷物を部屋に運び込むと、そのまま隣接した体育館のような場所に移動する。
大方、今日と明日の予定を説明して少し別の話もした後にようやく昼食といった流れになるだろう。
しかも、飯盒炊爨。
一応カレーも合わせて作っていくらしいが、この際はっきり言おう。
オレは飯盒なんて見たこともないし、飯盒炊爨なんて聞いたこともなかった。
「キャンプとかで使う奴らしい。知らんけど」
と、矢渕は言っていたが本当に大丈夫だろうなオレのグループは?
「よし、とりあえず米を炊く奴とカレーを作る奴で分けるか」
体育館での長話が終わり、いよいよ昼ご飯作りへ。
ブロックで囲われた複数のキッチンがある場所にクラスメイトたちがそれぞれグループで分かれ、調理を開始する。
「火は?」
「オレがやっとく。野菜切ったり米をといだりを頼む」
「野菜、やろうかな」
と、柊がちょっと自信なさげに言う。
「なら、米」
と、次に何故かウンザリした表情で蟻塚がそう答える。
相当柊が努力したみたいだが、ちょっと可哀想に見えてきたな……。
「ウチはどっちでもいいけど今日はナホチとイチャイチャしよっかな~」
「ナホチ?」
「ん。柊南帆だからナホチ。可愛いっしょ~?さあ、いこいこ~」
そう言って、橘は柊に抱きつくとそのまま野菜を取りに行ってしまう。
……本当に自由だな。
残りは蟻塚と矢渕だが。
「代わるか?」
矢渕に小声で聞く。
こいつらが仲良くしている姿なんて想像出来ないし、喧嘩でもされたら困る。
「任せなって。腹減ってるし普通にやるよ。皮肉は混ぜるかもだけど。カレーだけに」
「その調子なら問題ないか」
米は2人に任せてオレは薪とマッチを持ってくると、早速火おこしを始めた。
最初は結構苦戦するかと思っていたが、案外簡単に火が着き、手が空いてしまったオレは4人の様子を見に行くことにした。
「何か手伝うことあるか?」
楽しそうに会話していた橘と柊にそう話しかけると、橘は肉を指さして「お願い~」と言ってくる。
オレは2人の隣に並んで用意されていたまな板の上に肉を乗っけて食べやすい大きさに切っていく。
それにしても。
「2人とも手が綺麗だな」
「……、えっ!?」
柊は驚いたのか、持っていた野菜をまな板に落とすと、顔を真っ赤にしながら手を隠す。
「なんだなんだ~?ウチらを褒めたって何も出ないぞ~?ねえ、ナホチ?」
「……う、うん」
何やら柊は照れているのか、どこか落ち着かない様子だった。
「ただ褒めただけだぞ?」
「ホントに~?なんかナンパしてるみたいだったけど~?」
「……、悪い。嫌な気分にしたなら謝る」
「あはは、なに真剣な顔してんの~。冗談だよ冗談。普通に嬉しかったから謝んないでよ~」
と、橘は笑いながらオレの背中を叩く。
「私も……嬉しいよ?」
頬を赤く染めながらも励まそうとしてくれているのか、柊も笑顔でそう言ってくれる。
なんか申し訳ないな。
「肉切れたから先炒めておくぞ?野菜も切れたら持ってきてくれ」
「うん、お願いします」
とは言え、オレに出来ることは限られている。
例えなりゆきで決まったようなグループでも最高のメンバーであることに代わりはない。
オレはオレで頑張るのみだ。
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