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16 浮気クズ男とは離婚よ!
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新しい自室となった客間にもどると、侍女のマリィが湯おけとタオルを用意していた。
「奥様申し訳ありません。この部屋では浴槽がご用意できなくて…」
「……いいわ。ドレスを脱ぐのを手伝ってくれる?」
今日はビアンカの指示だろうか、コルセットも締められ淑女のドレスを着させられていた。
「は……はい!」
「身体を拭くのは自分でできるから、もう下がっていいわ。夕食もいらないと伝えて」
「……はい」
悲しそうに私を見つめるマリィ。
ごめんなさい。今の私は他人に気遣える精神状態じゃないの。
手早く身体を清め、ナイトドレスを着る。
そう、貧乏男爵家の私は侍女に手伝って貰わなくたって、自分の身支度は全てできる。
寝るには早い時間。
でも……ほんとうに疲れた。
ふとんをかぶる。
やっと、やっと……泣ける。
そうよ……そう!
不相応だって私だって分かってた!
ありきたりな容姿に、飛びぬけた何かの才能がある訳でもない。
神聖力だってアリンコレベル。
でも……でも私はまだ18才で、優しくてかっこいい旦那様に愛されて~なんて夢見たっていいじゃない!
見たことないくらい大きく輝く宝飾品と豪華なドレスを与えられて、「好きだ」なんて言われたら少し位いい気になるのは仕方ないでしょ?
絢爛豪華な屋敷で使用人たちに優しく迎えられ、有頂天になっていたことが恥ずかしくて、みじめで……みんなの期待に応えようと必死になって『侯爵夫人』になろうと奮闘していた自分が滑稽で……
涙がボロボロとあふれてくる。
羽毛ふとんを引きちぎる勢いで固く、固く握りしめる。
「ううっううう~」
使用人に聞かれないよう必死に嗚咽をかみ殺す。
私が泣いていたなんて、王女にもビアンカにも絶対知られたくない!
そうして自覚した。
恐れ多いと一線を引いていたレオンハルト様を、好きになり始めていた事に。
優しい笑顔のレオンハルト様の顔が、アトレアホテルの庭園でハービット男爵令嬢にキスを迫る妖艶な顔に打ち消される。
「だって私、まだレオンハルト様と閨を共にしていない」
そう、私は結婚して半年になるのに、まだレオンハルト様に抱かれた事がないのだ。
「アリーシアはまだ18才だからね。小柄だし心配なんだ」
結婚式の夜、つまり初夜の夜。
ベットでガチガチに固まる私に、レオンハルト様そう告げた。
確かに、私は周りの同い年の子と比べて小柄で細身だ。
しかも初潮も遅く15才だった。
「子供を産むにはまだ未熟だから、子供を作る行為は、もう少し大人になってからにしよう。いいね」
嫌などと言える訳もない。
そう言ってレオンハルト様は、夫婦の寝室から出て行った。
だが、一人ベットに残された私は、レオンハルト様が言った『未熟』という言葉に打ちのめされていた。
私では、ダメなんだと……
そして、その言葉を無かったことにして、忘れることにした。
あまりにも辛くて。
まんまと騙されていた私。
今までの人生で一番辛い。
悲しい! 悲しい!
背伸びして必死に頑張っていた私を、レオン様は嘲笑っていたの?
使用人のみんなも、全て知っていたの?
やさしく接してくれたその姿は偽りだったのだと辛くて、身体が切り刻まれるような苦痛を感じる。
真綿で包まれたかのようなこの屋敷の中は、実は敵だらけだったのかと、もう涙が止まらない。
ほんと愚かな私。
だけど
泣いたのはその夜だけ。
一夜明ければ、何だかすっかりバカらしくなった。
離婚だ! 離婚!
夫人教育の賜物でしおらしくしていたが、基本私は気が強い方だ。
領民と走り回って育ち、ガキ大将だった田舎娘だ。
王女がなんだ! 侯爵家がなんだ!
こんな仕打ちをされて、敬う価値もない!
援助した金を返せって? 上等よ! 無い袖は振れないもんね!
失うものなんてもう何もない!
ベルツ領に逃亡したいが、結界があり屋敷から出れないのが問題だ。
今は上書きしたビアンカの許可がないと出れないけど、元々はレオンハルト様の許可がないと出れないのよね。
この広大な屋敷に結界を張るって、レオンハルト様とビアンカにも魔力? があるんだろう。
確か魔力は魔族かエルフしか持っていない力。
遠い昔いたという魔族や獣人、エルフ。
人間と交わり、現在では血は薄くなって魔力を使えるものはいないと言われている。
先祖返りもいるらしいけど、レオンハルト様とビアンカはそれなんだろうか。
まぁそんなこと、もうどうでもいいわ!
とにかくこの屋敷から絶対脱出してやる!
「奥様申し訳ありません。この部屋では浴槽がご用意できなくて…」
「……いいわ。ドレスを脱ぐのを手伝ってくれる?」
今日はビアンカの指示だろうか、コルセットも締められ淑女のドレスを着させられていた。
「は……はい!」
「身体を拭くのは自分でできるから、もう下がっていいわ。夕食もいらないと伝えて」
「……はい」
悲しそうに私を見つめるマリィ。
ごめんなさい。今の私は他人に気遣える精神状態じゃないの。
手早く身体を清め、ナイトドレスを着る。
そう、貧乏男爵家の私は侍女に手伝って貰わなくたって、自分の身支度は全てできる。
寝るには早い時間。
でも……ほんとうに疲れた。
ふとんをかぶる。
やっと、やっと……泣ける。
そうよ……そう!
不相応だって私だって分かってた!
ありきたりな容姿に、飛びぬけた何かの才能がある訳でもない。
神聖力だってアリンコレベル。
でも……でも私はまだ18才で、優しくてかっこいい旦那様に愛されて~なんて夢見たっていいじゃない!
見たことないくらい大きく輝く宝飾品と豪華なドレスを与えられて、「好きだ」なんて言われたら少し位いい気になるのは仕方ないでしょ?
絢爛豪華な屋敷で使用人たちに優しく迎えられ、有頂天になっていたことが恥ずかしくて、みじめで……みんなの期待に応えようと必死になって『侯爵夫人』になろうと奮闘していた自分が滑稽で……
涙がボロボロとあふれてくる。
羽毛ふとんを引きちぎる勢いで固く、固く握りしめる。
「ううっううう~」
使用人に聞かれないよう必死に嗚咽をかみ殺す。
私が泣いていたなんて、王女にもビアンカにも絶対知られたくない!
そうして自覚した。
恐れ多いと一線を引いていたレオンハルト様を、好きになり始めていた事に。
優しい笑顔のレオンハルト様の顔が、アトレアホテルの庭園でハービット男爵令嬢にキスを迫る妖艶な顔に打ち消される。
「だって私、まだレオンハルト様と閨を共にしていない」
そう、私は結婚して半年になるのに、まだレオンハルト様に抱かれた事がないのだ。
「アリーシアはまだ18才だからね。小柄だし心配なんだ」
結婚式の夜、つまり初夜の夜。
ベットでガチガチに固まる私に、レオンハルト様そう告げた。
確かに、私は周りの同い年の子と比べて小柄で細身だ。
しかも初潮も遅く15才だった。
「子供を産むにはまだ未熟だから、子供を作る行為は、もう少し大人になってからにしよう。いいね」
嫌などと言える訳もない。
そう言ってレオンハルト様は、夫婦の寝室から出て行った。
だが、一人ベットに残された私は、レオンハルト様が言った『未熟』という言葉に打ちのめされていた。
私では、ダメなんだと……
そして、その言葉を無かったことにして、忘れることにした。
あまりにも辛くて。
まんまと騙されていた私。
今までの人生で一番辛い。
悲しい! 悲しい!
背伸びして必死に頑張っていた私を、レオン様は嘲笑っていたの?
使用人のみんなも、全て知っていたの?
やさしく接してくれたその姿は偽りだったのだと辛くて、身体が切り刻まれるような苦痛を感じる。
真綿で包まれたかのようなこの屋敷の中は、実は敵だらけだったのかと、もう涙が止まらない。
ほんと愚かな私。
だけど
泣いたのはその夜だけ。
一夜明ければ、何だかすっかりバカらしくなった。
離婚だ! 離婚!
夫人教育の賜物でしおらしくしていたが、基本私は気が強い方だ。
領民と走り回って育ち、ガキ大将だった田舎娘だ。
王女がなんだ! 侯爵家がなんだ!
こんな仕打ちをされて、敬う価値もない!
援助した金を返せって? 上等よ! 無い袖は振れないもんね!
失うものなんてもう何もない!
ベルツ領に逃亡したいが、結界があり屋敷から出れないのが問題だ。
今は上書きしたビアンカの許可がないと出れないけど、元々はレオンハルト様の許可がないと出れないのよね。
この広大な屋敷に結界を張るって、レオンハルト様とビアンカにも魔力? があるんだろう。
確か魔力は魔族かエルフしか持っていない力。
遠い昔いたという魔族や獣人、エルフ。
人間と交わり、現在では血は薄くなって魔力を使えるものはいないと言われている。
先祖返りもいるらしいけど、レオンハルト様とビアンカはそれなんだろうか。
まぁそんなこと、もうどうでもいいわ!
とにかくこの屋敷から絶対脱出してやる!
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