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17 ビアンカの襲撃
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何回か屋敷を脱走しようとした。
広大な庭を隅から隅まで出口がないかと日々歩き廻り探ったが、結局全てに透明な壁があって外には出れなかった。
それならばと、ビアンカが許可した出入り業者に、なんとか連れ出してもらえないかと画策していたら……
「お前にはもっと現実を知ってもらわなきゃな。来週末はマルタ子爵令嬢との逢引きらしいから、また見に行ってきなよ。それまで大人しくしておけ」
そう言ったビアンカによって、また私は客間に閉じ込められた。
はっきり言って私は、他人の情事を見る変態趣味なんて、ないんだけど!
使用人は必要以上の会話をしてくれないし、話し相手にもなってくれない。
社交も侯爵夫人としての執務も、ビアンカに阻止された私。
北館の侍女は南館立ち入りを禁止らしく、南館にある図書館に暇つぶしの本を持ってきてもらうこともできない。
はっきり言って暇すぎる。
だからと言ってもう敬う気がない、悪意だらけの王女とのお茶会なんて、断固拒否でいいでしょう!
すると食事は一日一回になり、固いパンとスープのみになった。
こうなっても侍女たちは変わらず私に優しいけれど、ビアンカの命令には従い、私を助けない。
そんな暇な私に残ったのは、女神ソフィア様への信仰心。
「女神ソフィア様。どうか私をここから解放してください」
やることのない私は神殿にいたころのように、朝夕女神に祈りを捧げることにした。
女神様に頂いたペンダントに手を当てて、深呼吸をする。
「私の愚かな選択をお許し下さい。もう二度と結婚などいたしません!」
神聖な祈りの邪魔をするのは、アトレアホテルでの、レオンハルト様の記憶。
ハービット男爵令嬢に恍惚とした表情で、キスをするその姿……
気持ち悪い!
気持ち悪い!
もう! もう! 男なんて、絶対信じない!
そうした日々を過ごしているとある日、ビアンカが突然部屋に乗り込んできた。
「その忌々しい祈りをやめなさい! 不愉快よ!」
女神と魔族は、正反対の存在。
私の祈りから、微々たる神聖力が出ていたのだろう。
神聖力と魔力は、反発しあう。
神聖力を不愉快に感じるビアンカは、やっぱり魔力を持つ魔族の血を引いてるんだ!
とゆーことは、レオンハルト様も魔族の血を引いているのか……それなら屋敷に結界を張る魔力を持っているのも納得できる。
ま、もうどうでもいいけど!
ビアンカへのせめてもの抵抗!
にやにや笑いながら、女神への祈りの祝詞を大声で唱えてやる。
女神様にはいつもは、本当にいつもは……清らかな気持ちで祈りを捧げていた。
なのに、ビアンカを前にして攻撃的な口調で祈りを捧げた私は、聖女失格なんでしょうね。
ビアンカの魔力が膨らむのを感じる。
そして私の身体はその魔力によって壁に激しく叩きつけられる。
こんな祈り方をした元聖女など、魔力から女神様は助けて下さらない。
そうよね~なんて納得しながら徐々に視界が暗くなる。
ゴオオオオン!
ゴオオオオオオオン!
そこに地面を揺るがす爆発音。
何度も。
何度も。
「アレーシア!」
意識を失いかけた私の耳に聞こえた甘い声は……きっと気のせい。
目が覚めたら、側にいたのは専属侍女だったベティ。
「奥様! 良かった……!」
「ベティあなた……」
「はい。今日からまた奥様のお世話をさせて頂きます」
「私はいったい……」
「丸一日意識を失われておられたのです。旦那様は、それはそれは心配なされて……」
部屋を見回すと、もともと過ごしていた南館の侯爵夫人の私室だった。
「王女様は……?」
この部屋は、アレクサンドラ王女の部屋になっていたはず。
「王女様は、二度とこの侯爵邸にお越しになることはありません!」
「え……?」
「王女様はフリージア国に行かれました」
フリージアに⁉ 長年確執のある隣国で、今回はその国との戦争回避のために、レオンハルト様はずーっと王宮にいたのよね?
「敵国に?」
「はい。レオンハルト様の采配で戦争は回避され、その友好の証としてアレクサンドラ様は、フリージア国の第二王子にお輿入れなさいました」
「え? お輿入れ?」
「はい。両国の停戦の話し合いで、お輿入れの話は着々と進んでいたのですが、アレクサンドラ殿下が渋っておられて……でも昨晩旦那様の説得に応じられて今朝、フリージア国に出立なさいました」
昨晩応じて、今朝出立? 早くない?
「……レオンハルト様はこの屋敷にいるの?」
「いえ、諸々の処理のため今は王宮に……」
やはり気を失う前の声は、気のせいみたい。
意識を失った私の扱いは、所詮この程度。
「レオンハルト様にお会いできるのなら、大事な話がしたいの」
もうこんな災難男いらない! 離婚一択!
「深夜にはお戻りになると、お聞きしています」
「では、明日の午前中はお時間を頂けるのかしら?」
午後には、どうせ出仕なさるでしょ?
「……おそらくは」
その日も早々に眠りについたが……おそらく深夜、人の気配を感じた。
ゆっくりと頭をなでられる。
ひんやりしたその手……
「くっ!」
私の頬まで滑ってきた、冷たい手のひらが震える。
「どうして私はこんな……どうして君はそんな風に生まれたんだ?」
広大な庭を隅から隅まで出口がないかと日々歩き廻り探ったが、結局全てに透明な壁があって外には出れなかった。
それならばと、ビアンカが許可した出入り業者に、なんとか連れ出してもらえないかと画策していたら……
「お前にはもっと現実を知ってもらわなきゃな。来週末はマルタ子爵令嬢との逢引きらしいから、また見に行ってきなよ。それまで大人しくしておけ」
そう言ったビアンカによって、また私は客間に閉じ込められた。
はっきり言って私は、他人の情事を見る変態趣味なんて、ないんだけど!
使用人は必要以上の会話をしてくれないし、話し相手にもなってくれない。
社交も侯爵夫人としての執務も、ビアンカに阻止された私。
北館の侍女は南館立ち入りを禁止らしく、南館にある図書館に暇つぶしの本を持ってきてもらうこともできない。
はっきり言って暇すぎる。
だからと言ってもう敬う気がない、悪意だらけの王女とのお茶会なんて、断固拒否でいいでしょう!
すると食事は一日一回になり、固いパンとスープのみになった。
こうなっても侍女たちは変わらず私に優しいけれど、ビアンカの命令には従い、私を助けない。
そんな暇な私に残ったのは、女神ソフィア様への信仰心。
「女神ソフィア様。どうか私をここから解放してください」
やることのない私は神殿にいたころのように、朝夕女神に祈りを捧げることにした。
女神様に頂いたペンダントに手を当てて、深呼吸をする。
「私の愚かな選択をお許し下さい。もう二度と結婚などいたしません!」
神聖な祈りの邪魔をするのは、アトレアホテルでの、レオンハルト様の記憶。
ハービット男爵令嬢に恍惚とした表情で、キスをするその姿……
気持ち悪い!
気持ち悪い!
もう! もう! 男なんて、絶対信じない!
そうした日々を過ごしているとある日、ビアンカが突然部屋に乗り込んできた。
「その忌々しい祈りをやめなさい! 不愉快よ!」
女神と魔族は、正反対の存在。
私の祈りから、微々たる神聖力が出ていたのだろう。
神聖力と魔力は、反発しあう。
神聖力を不愉快に感じるビアンカは、やっぱり魔力を持つ魔族の血を引いてるんだ!
とゆーことは、レオンハルト様も魔族の血を引いているのか……それなら屋敷に結界を張る魔力を持っているのも納得できる。
ま、もうどうでもいいけど!
ビアンカへのせめてもの抵抗!
にやにや笑いながら、女神への祈りの祝詞を大声で唱えてやる。
女神様にはいつもは、本当にいつもは……清らかな気持ちで祈りを捧げていた。
なのに、ビアンカを前にして攻撃的な口調で祈りを捧げた私は、聖女失格なんでしょうね。
ビアンカの魔力が膨らむのを感じる。
そして私の身体はその魔力によって壁に激しく叩きつけられる。
こんな祈り方をした元聖女など、魔力から女神様は助けて下さらない。
そうよね~なんて納得しながら徐々に視界が暗くなる。
ゴオオオオン!
ゴオオオオオオオン!
そこに地面を揺るがす爆発音。
何度も。
何度も。
「アレーシア!」
意識を失いかけた私の耳に聞こえた甘い声は……きっと気のせい。
目が覚めたら、側にいたのは専属侍女だったベティ。
「奥様! 良かった……!」
「ベティあなた……」
「はい。今日からまた奥様のお世話をさせて頂きます」
「私はいったい……」
「丸一日意識を失われておられたのです。旦那様は、それはそれは心配なされて……」
部屋を見回すと、もともと過ごしていた南館の侯爵夫人の私室だった。
「王女様は……?」
この部屋は、アレクサンドラ王女の部屋になっていたはず。
「王女様は、二度とこの侯爵邸にお越しになることはありません!」
「え……?」
「王女様はフリージア国に行かれました」
フリージアに⁉ 長年確執のある隣国で、今回はその国との戦争回避のために、レオンハルト様はずーっと王宮にいたのよね?
「敵国に?」
「はい。レオンハルト様の采配で戦争は回避され、その友好の証としてアレクサンドラ様は、フリージア国の第二王子にお輿入れなさいました」
「え? お輿入れ?」
「はい。両国の停戦の話し合いで、お輿入れの話は着々と進んでいたのですが、アレクサンドラ殿下が渋っておられて……でも昨晩旦那様の説得に応じられて今朝、フリージア国に出立なさいました」
昨晩応じて、今朝出立? 早くない?
「……レオンハルト様はこの屋敷にいるの?」
「いえ、諸々の処理のため今は王宮に……」
やはり気を失う前の声は、気のせいみたい。
意識を失った私の扱いは、所詮この程度。
「レオンハルト様にお会いできるのなら、大事な話がしたいの」
もうこんな災難男いらない! 離婚一択!
「深夜にはお戻りになると、お聞きしています」
「では、明日の午前中はお時間を頂けるのかしら?」
午後には、どうせ出仕なさるでしょ?
「……おそらくは」
その日も早々に眠りについたが……おそらく深夜、人の気配を感じた。
ゆっくりと頭をなでられる。
ひんやりしたその手……
「くっ!」
私の頬まで滑ってきた、冷たい手のひらが震える。
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