宮廷伯令嬢は先回りできるんです

夜桜

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婚約破棄

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 婚約者であり、辺境伯のウィルソンは、わたしに隠し事をしていた。彼はわたしを捨て密かに西の国の王子と密会していた。

 わたしは、子供の頃に得た特殊な能力『先回り』で危機が訪れる前にその現場に訪れる事ができた。つまり、ある程度の未来へ飛べた。でも、その危機をどう回避するかはわたし次第。上手くやらないと何度も・・・やり直す・・・・羽目になる。


 今回は、ウィルソンの怪しい行動に疑問を持ち、わたしは先回りした。その結果、彼は美少年と会っていた。最初は友人か何かかと思ったけれど、あの綺麗な顔立ちとあり得ない程豪華な身なりは西の国の王子セイヴで間違いなかった。

 その後、わたしには『婚約破棄』を突き付けられ、川に捨てられる。そんなの絶対に許せない。だからその前に、ウィルソンには死んでいただく。


 * * *


「――なッ! フィラ、どうして!」

 ウィルソンは驚いていた。
 いるはずのないわたしが彼の部屋の前に立っていたからだ。今日は本来なら、わたしは街へ出かけていた。けれど、用事をキャンセルしてお屋敷内に身を隠していた。その結果がこれだった。


「ウィルソン、もう許しません」
「な……なんの事だ」
「とぼけても無駄です。あなた……西の国の王子セイヴと恋に落ちていましたよね」

 聞き出すと、彼はガタガタ震え始めて顔を青くした。


「な、なぜそれを!!」
「よりによって王子。よりによって男子……どういう事ですか」

「……し、知らないぞ。俺は」

「シラを切っても無駄です。だって、わたし見ちゃったんですもの……あなたがセイヴを襲っている場面をね!」

「ぐぅ……。正直に言おう、俺は男色家でね……美少年には目がないのだよ」


 ……なんて人。こんなヘンタイ辺境伯だとは思わなかった。そして、この後『婚約破棄』を突き付けられる。なら、わたしはその前にウィルソンを――。


「もういいわ!! 死んで、ウィルソン!!」
「えっ……ちょ、待て!!」


 ナイフを取り出し、彼の心臓を突き刺した。

「どうせ、わたしを捨てるのでしょう。もうあなたはいらないわ」

「ぐああぁぁあぁ……く、くそ。どうして、どうしてだ……なぜ、俺が婚約破棄すると………絶望するお前を……川に捨ててやろうと……思ったのに……」

「分かるわよ。あなたの考えている事なんてね!!」


 バタッと彼は倒れた。
 川に捨てられるのは、あなたよ、ウィルソン。

 わたしは彼の遺体を川に放り投げた。


 * * *


 その後、西の国の王子セイヴに話しかけられ、わたしとセイヴは恋に落ちた。どうやら、事情を聞くとウィルソンからは脅されていたようだった。

 わたしは『先回り』の事を話した。するとセイヴは信じてくれて、わたしを連れ出してくれた。それと同時に罪を許してくれた。

「フィラ、君は幸せになるべきだよ」
「でも……わたし」
「気にする事はない。辺境伯は悪い人だったし、僕は度々ウィルソンから呼び出され……困っていた。フィラは襲われていた僕を助けてくれたんだから」

 素敵な笑顔を向けてくれるセイヴ。わたしは、あまりに嬉しくて泣きそうになった。良かった、そう言って貰えて。

「セイヴ様」
「うん、フィラ。僕と一緒に西の国へ行こう」

 ぎゅっと手を握って貰い、わたしは決心した。故郷を離れ、セイヴ様の国へ行くと。


 もう、先回りする必要はないのかもしれない。
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