毒殺されそうになりました

夜桜

文字の大きさ
上 下
7 / 24

第7話 救ってくれた

しおりを挟む
「……イリス」

 わたしを呼ぶ声がした。
 太陽のように暖かくて優しい声。
 手を握ってくれている。

 そっか……睡眠薬を盛られて、わたしは眠っていたんだ。

「アレク……」
「イリス! 目覚めたんだね。とても心配したよ」

 心配そうにわたしを見つめるアレク。
 彼は涙を見せながら喜んでくれた。
 そんなに心配してくれるだなんて……嬉しい。

「ミアはどうなったんです……?」
「彼女は衛兵に引き渡され、連行された。裁判できっと罰を受ける」
「よかった……」
「許してくれ、イリス。俺のせいだ」
「いいえ、違います。アレクは悪くありません」
「だが」
「世間がアレクを許さなくても、わたしは許します。だって、救ってくれたじゃないですか」

 そう。わたしは何度もアレクに救われている。
 土の中にいたわたしを掘り起こして看病してくれた。
 睡眠薬を飲まされ、動けないところを守ってくれた。

 それだけで十分すぎる。

「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」

 静かな時間が流れていく。
 ずっと、ずっとこうしていたい。
 誰にも邪魔されず、平和に暮らしたい。
 ただそれだけが、わたしの願い。

 けれど。

 ルーナだけは許してはいけない。
 このまま野放しにしていれば、きっとアレクに不幸が降りかかる。それだけは阻止しないと。

 わたしも元気になったら、出来ることをしていこう。

「あの、アレク。ルーナのことですが……」
「そうだった。そのことで俺も話がある」
「なにか進展があったんですね?」
「そうだ。ある重要な情報を入手した」
「ある情報ですか」
「しかし、これを話していいものか」

 アレクは辛そうな表情で視線を落とす。
 そんなに言い辛いことなのだろうか。
 でも聞きたい。
 ルーナを裁けるのなら……。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

幼なじみの王子には、既に婚約者がいまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:15

私が消えたその後で(完結)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,713pt お気に入り:2,398

ありがとう貴方

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:8

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:17,718pt お気に入り:263

ロリコンな俺の記憶

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:5,014pt お気に入り:16

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,798pt お気に入り:19

おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,906pt お気に入り:3,851

真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,691pt お気に入り:245

【短編】私は婚約者に嫌われているみたいですので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,249pt お気に入り:489

処理中です...