毒殺されそうになりました

夜桜

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第10話 毒殺事件③ Side:アレク

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◆Side:アレク

 馬を走らせている途中で、ルーナらしき人物を見かけた。
 イリスの妹のはず。

 なぜ森の方から出てきた……?
 あそこは“静かな森”と有名で、危険な動物が棲息しているので誰も立ち入らない。毒を持つ植物も多く自生している。

 気になって足跡をたどっていく。

 すると、なにやら掘ったような痕跡を見つけた。なんだ、こんなところで何をしていたんだ。

 気になって注視していると、呼吸音が聞こえてきた。

 地面から?

 掘り起こしてみると――そこには。


「イリス……なぜ! ――! こ、この症状は猛毒。いけない、このまま放置していたら死んでしまう。……そうだ、新薬を試してみるか」


 偶然にも懐に解毒剤があった。
 これなら直ぐに治る……はずだ。

 いや、信じるんだ。

 俺とエレイナ様の研究を。


 失礼して彼女の口を開け、薬と水を飲ませた。


 あとは経過をみて……。


 ◆◇◆◇◆◇


 数日後、イリスは目を覚ました。
 城に招いた当初、彼女は死体のように青ざめ、冷たかった。気力が底を尽けば、彼女は帰らぬ人となる。
 そんなことはさせないと、俺は必死に看病した。
 その甲斐あり、彼女はついに復活した。

 良かった。本当に良かった。
 もし彼女の気持ちが変わっていなければ、また婚約を交わしたい。この気持ちを伝えたい。


 そんな中、執事のマックスウェルが情報収集にあたってくれた。


「アレク様、重要な情報を入手いたしました」
「ついにか。で、ルーナのことか?」
「はい。イリス様の妹であるルーナ様……彼女は猛毒草であるカブトギクの取引を行っておりました」

「やはりか」

「死の商人で名高い、イングリッド・バーンシュタインに多額の金を支払い、手に入れたようです。ご存じの通り、カブトギクは希少で入手困難の猛毒。通常は戦時、暗殺武器に塗布などされ使用されます。取り扱いが非常に難しいため、一般ルートでは出回りません」


 その通りだ。
 そして、レオンハルト伯の家なら資産も莫大だ。父親に頼めば、それくらいの入手は容易いだろう。もちろん、猛毒草を買うなど言えない。だから、偽装して手に入れた――というところか。


「ありがとう、マックスウェル」
「それが……更に大変なことが判明いたしました」
「……?」

「エレイナ様です」
「エレイナ様がどうした?」

「ルーナ様が……エレイナ様を毒殺したのです・・・・・・・

「なっ…………」


 マックスウェルからそれを聞き、俺は耳を疑った。
 ルーナが実の母親を毒殺……馬鹿な。

 ありえない。

 そう思いたかった。
 けれど、エレイナ様は……猛毒によって命を落とした。

 だから矛盾はないというわけだ。


 ルーナがエレイナ様を殺し、イリスさえも殺そうとした。……許しがたい。
 しかも、この事実をレオンハルト伯は知らないはずだ。

 一刻も早く伝えねば。
 その前にイリスに全てを話さないと。
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