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お前ではクリス様を幸せにはできないッ!
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剣と剣が交わり、激しい音を響かせる。
こ、これは……互角?
ウソ、信じられない。あの副団長ルドラと同じ実力だなんて、辺境の騎士ベンジャミン・トリニティ……何者なの。
隣からヌッと現れる大叔母様は、魔女のように笑う。
「フフフ。クリス、あなたはベンジャミンを侮っていたようね」
「そ、それは……」
「彼は確かに辺境の地へ追いやられた不憫な騎士。けれど、彼は彼なりに努力し、その肉体を極限まで鍛え上げたのよ」
自己紹介を受けた時も感じた。彼の筋肉はとても立派だった。相当に鍛錬を積み重ねたのだと一目瞭然であった。
意外すぎる機敏な動きに、ルドラも苦戦を強いられていた。
「……!」
「どうした、ルドラ。動きが遅いぞ! いや、それともこのオレが速すぎるか?」
ずっと守りに徹しているルドラ。まさか……ベンジャミンの実力は、ルドラを超えているというの……?
ルドラが負ける?
そんなワケがない。
わたくしは祈り続ける。ルドラの勝利を願う。
「そうか」
「なにが? そもそも、ルドラ。貴様はクリス様をどれほど愛しているというのか!」
「……?」
「オレは、彼女のことを三年前から愛していた。辺境の地に追いやられなければ、今頃は結婚していただろう」
そ、そうだったの。ベンジャミン自体は、わたくしのことを知っていたのね。
でも、駐留任務のせいで言葉すら交わすことなく会うことはなかった。今は自由騎士となり、行動に制限がなくなった。
だから、わたくしに会いにきたというわけね。
きっと大叔母様もベンジャミンの熱量に圧され、彼をお見合い相手に推薦したに違いない。
「だから?」
「ルドラ。お前はオレがどれほどクリス様を好きか分かっていないな。好きだからこそ、肉体を鍛えまくった。この想いがオレを強くしたのだ! クリス様、好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだッ!」
な、なんなのあの人!
ベンジャミン、まさかそこまで、わたくしを想っていたとは。
でも、ごめんなさい。
わたくしはルドラ様が……なんて口が裂けても言えなかった。そんなことを口走れば、大叔母様からビンタが飛んでくる。
それを理解しているからこそ、案山子のようになってルドラを応援するしかなかった。
「ベンジャミン。お前のその恋は永遠に実らん」
「なん……だと……? ルドラ、貴様……今、なんと……」
距離を取る二人。ベンジャミンは、わなわなと震えていた。ルドラの冷たい言葉に怒りを憶えているみたいだった。
そ、そんな怒らせて大丈夫なのかな。
「もう一度言ってやる。お前ではクリス様を幸せにはできないッ!」
「ルドラ貴様ああああッッ!!」
声を荒げ、ベンジャミンは激昂する。あんなに刺激して、ルドラは大丈夫なのかしら……。
再び剣がぶつかり合う。激しい火花を何度も何度も散らし、けれど決着はつかなかった。どちらも譲らない。
「ルドラ様……」
どうか勝って欲しいと思い、ぽつりと彼の名前をつぶやく。
最中、ベンジャミンは息を若干ながら乱していた。……え、スタミナ切れ?
一方、ルドラは顔色ひとつ変えず余裕そうだった。
もしかして、時間が経てば経つほどルドラの有利?
大叔母様もそれを感じ取ったようで「あの筋肉質では……」と、いつの間にかハンカチを噛んでいた。
そうか。素早い動きかと思ったけど筋肉がありすぎて、力を使いすぎているんだ。
フェンシングを多少齧った程度のわたくしだけれど、理解できた。
この勝負もしかして!
その時、ルドラは剣を投げ捨てていた。
え、なんで!
「なんのつもりだ、ルドラ! 勝負を放棄か!?」
「そうではない。“俺”の本当の力を見せてやる」
「……なに? 今まで本気ではなかったのか!?」
「そういうことだ。俺は本来、剣使いではない。これが俺の本当の武器だ――」
ルドラの手に現れる武器。
その神秘に、わたくしは美しいと感じた。
こ、これは……互角?
ウソ、信じられない。あの副団長ルドラと同じ実力だなんて、辺境の騎士ベンジャミン・トリニティ……何者なの。
隣からヌッと現れる大叔母様は、魔女のように笑う。
「フフフ。クリス、あなたはベンジャミンを侮っていたようね」
「そ、それは……」
「彼は確かに辺境の地へ追いやられた不憫な騎士。けれど、彼は彼なりに努力し、その肉体を極限まで鍛え上げたのよ」
自己紹介を受けた時も感じた。彼の筋肉はとても立派だった。相当に鍛錬を積み重ねたのだと一目瞭然であった。
意外すぎる機敏な動きに、ルドラも苦戦を強いられていた。
「……!」
「どうした、ルドラ。動きが遅いぞ! いや、それともこのオレが速すぎるか?」
ずっと守りに徹しているルドラ。まさか……ベンジャミンの実力は、ルドラを超えているというの……?
ルドラが負ける?
そんなワケがない。
わたくしは祈り続ける。ルドラの勝利を願う。
「そうか」
「なにが? そもそも、ルドラ。貴様はクリス様をどれほど愛しているというのか!」
「……?」
「オレは、彼女のことを三年前から愛していた。辺境の地に追いやられなければ、今頃は結婚していただろう」
そ、そうだったの。ベンジャミン自体は、わたくしのことを知っていたのね。
でも、駐留任務のせいで言葉すら交わすことなく会うことはなかった。今は自由騎士となり、行動に制限がなくなった。
だから、わたくしに会いにきたというわけね。
きっと大叔母様もベンジャミンの熱量に圧され、彼をお見合い相手に推薦したに違いない。
「だから?」
「ルドラ。お前はオレがどれほどクリス様を好きか分かっていないな。好きだからこそ、肉体を鍛えまくった。この想いがオレを強くしたのだ! クリス様、好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだッ!」
な、なんなのあの人!
ベンジャミン、まさかそこまで、わたくしを想っていたとは。
でも、ごめんなさい。
わたくしはルドラ様が……なんて口が裂けても言えなかった。そんなことを口走れば、大叔母様からビンタが飛んでくる。
それを理解しているからこそ、案山子のようになってルドラを応援するしかなかった。
「ベンジャミン。お前のその恋は永遠に実らん」
「なん……だと……? ルドラ、貴様……今、なんと……」
距離を取る二人。ベンジャミンは、わなわなと震えていた。ルドラの冷たい言葉に怒りを憶えているみたいだった。
そ、そんな怒らせて大丈夫なのかな。
「もう一度言ってやる。お前ではクリス様を幸せにはできないッ!」
「ルドラ貴様ああああッッ!!」
声を荒げ、ベンジャミンは激昂する。あんなに刺激して、ルドラは大丈夫なのかしら……。
再び剣がぶつかり合う。激しい火花を何度も何度も散らし、けれど決着はつかなかった。どちらも譲らない。
「ルドラ様……」
どうか勝って欲しいと思い、ぽつりと彼の名前をつぶやく。
最中、ベンジャミンは息を若干ながら乱していた。……え、スタミナ切れ?
一方、ルドラは顔色ひとつ変えず余裕そうだった。
もしかして、時間が経てば経つほどルドラの有利?
大叔母様もそれを感じ取ったようで「あの筋肉質では……」と、いつの間にかハンカチを噛んでいた。
そうか。素早い動きかと思ったけど筋肉がありすぎて、力を使いすぎているんだ。
フェンシングを多少齧った程度のわたくしだけれど、理解できた。
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その時、ルドラは剣を投げ捨てていた。
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「なんのつもりだ、ルドラ! 勝負を放棄か!?」
「そうではない。“俺”の本当の力を見せてやる」
「……なに? 今まで本気ではなかったのか!?」
「そういうことだ。俺は本来、剣使いではない。これが俺の本当の武器だ――」
ルドラの手に現れる武器。
その神秘に、わたくしは美しいと感じた。
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