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大切な幼馴染
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ブルースは、わたしの体質である『不幸』の克服を研究。今日は実家へ帰省していたようだった。
「なかなか会えないと思ったら、そんな事情があったのですね」
「すまなかった。この通りだ、許してくれ」
傍にいてくれなかったのは正直、寂しかった。学校へ行くと言い残してからは音信不通。心配する毎日を送っていた。
一年以上、隣国の学校で何をしていたのか気にはなっていたけど、邪魔をしては悪いと思って干渉はしなかった。
でも、ブルースはずっとわたしを思ってくれていたんだ。その事実がとても嬉しい。
「いえ、いいんです。また戻ってきてくれたではありませんか」
「ありがとう。これからも研究を続けて、一刻も早く君の『不幸』を克服できるように努力する」
「ブルース……はい、楽しみにしていますね」
あまりに嬉しくて涙が出そうになっていると、遠くから声がした。
「ブルース先生、ブルース先生!」
綺麗なドレスに身をまとう女の子。
ブルースの名前を何度も呼び、駆け寄っていく。誰なの……?
「エヴァ! どうしてこの国にいるんだい」
「どうしてって……先生を追い駆けてきたんです!」
「こ、困るよ。今は体を休めに帰郷しているだけだから」
どうやら、女の子はブルースの生徒のようだった。わざわざ隣国から追いかけてきたのね。かなりの距離があるのに。
「ブルース、その子は?」
「あぁ、教え子で『エヴァ』っていうんだ」
エヴァは、わたしに気づくと少し見下した風に笑った。
「先生、この田舎臭い人誰です?」
……なっ!
いきなりそれって……酷い。
「この女性は、僕の大切な幼馴染でエイラだ」
「そう、幼馴染でしたの。でも関係ありませんわね。だって、わたくしと先生は婚約中ですもの」
……え。
……ウソ。
ブルースとこの子が?
その事実がショックで涙が溢れ出そうだった。でも、ぐっと堪えてもう少し様子をうかがった。
「ち、違うよ! エイラ、誤解しないでくれ。今のはエヴァが勝手に言っているだけなんだ。僕は断っているんだけどね……」
「わたくしは大貴族・ゴールドバーグ家の娘ですよ。ブルース先生、何がご不満なんですか? 富や名声だけでなく、権力だって貴方様のモノになるんですから」
「すまない。今の僕には研究を進めなければならない使命があるんだ」
遠回しではあるけれど“断る”とハッキリ言うブルース。その言葉にわたしは安堵する。……ほっ、良かった。
「そう、婚約を破棄なされるんですね、ブルース先生! なら、そのエイラとかいう女の秘密をぶちまけますわ」
「なんだって?」
わたしの秘密……なにそれ。
いったい、何を知っているというの?
「わたくしの権力にかかれば調査なんて容易い。ブルース先生に幼馴染がいる情報も掴んでいましたわ。だから、エイラ……貴女の事は承知していますの」
悪い顔をして、わたしを嘲笑う。
嫌な予感がした。
「いったい、なんなの?」
「あら、とぼけるの。なら、教えて差し上げましょう。エイラとウィンフィールド伯爵が婚約を交わされていたそうですよ。でも、最近になってエイラの方が伯爵を捨てたとか。 先生、この女はそうやって平然と男を捨てるんです」
勝ち誇った表情を向けるエヴァ。けれど、ブルースは笑った。
「それは望まぬ婚約だったんだろう」
「ですが、捨てた事実は変わりません」
「エイラは僕にとっては妹のような存在であり、家族も同然なんだ。何があろうとも僕はエイラの味方なんだ」
「くっ……」
予想外の返答に、エヴァは悔しそうに唇を噛む。
ブルースは物心つく前に事故により、家族を全員失っていた。ひとりぼっちだった。幸い、子供のいない親戚夫婦に引き取られて、わたしと近所になった。だから大切な幼馴染。
こうして味方をしてくれる。
ああ……良かった。
昔から、何も変わらない。
あの優しい瞳も、
あの優しい言葉も、
あの優しい笑みも。
なにもかも。
「なかなか会えないと思ったら、そんな事情があったのですね」
「すまなかった。この通りだ、許してくれ」
傍にいてくれなかったのは正直、寂しかった。学校へ行くと言い残してからは音信不通。心配する毎日を送っていた。
一年以上、隣国の学校で何をしていたのか気にはなっていたけど、邪魔をしては悪いと思って干渉はしなかった。
でも、ブルースはずっとわたしを思ってくれていたんだ。その事実がとても嬉しい。
「いえ、いいんです。また戻ってきてくれたではありませんか」
「ありがとう。これからも研究を続けて、一刻も早く君の『不幸』を克服できるように努力する」
「ブルース……はい、楽しみにしていますね」
あまりに嬉しくて涙が出そうになっていると、遠くから声がした。
「ブルース先生、ブルース先生!」
綺麗なドレスに身をまとう女の子。
ブルースの名前を何度も呼び、駆け寄っていく。誰なの……?
「エヴァ! どうしてこの国にいるんだい」
「どうしてって……先生を追い駆けてきたんです!」
「こ、困るよ。今は体を休めに帰郷しているだけだから」
どうやら、女の子はブルースの生徒のようだった。わざわざ隣国から追いかけてきたのね。かなりの距離があるのに。
「ブルース、その子は?」
「あぁ、教え子で『エヴァ』っていうんだ」
エヴァは、わたしに気づくと少し見下した風に笑った。
「先生、この田舎臭い人誰です?」
……なっ!
いきなりそれって……酷い。
「この女性は、僕の大切な幼馴染でエイラだ」
「そう、幼馴染でしたの。でも関係ありませんわね。だって、わたくしと先生は婚約中ですもの」
……え。
……ウソ。
ブルースとこの子が?
その事実がショックで涙が溢れ出そうだった。でも、ぐっと堪えてもう少し様子をうかがった。
「ち、違うよ! エイラ、誤解しないでくれ。今のはエヴァが勝手に言っているだけなんだ。僕は断っているんだけどね……」
「わたくしは大貴族・ゴールドバーグ家の娘ですよ。ブルース先生、何がご不満なんですか? 富や名声だけでなく、権力だって貴方様のモノになるんですから」
「すまない。今の僕には研究を進めなければならない使命があるんだ」
遠回しではあるけれど“断る”とハッキリ言うブルース。その言葉にわたしは安堵する。……ほっ、良かった。
「そう、婚約を破棄なされるんですね、ブルース先生! なら、そのエイラとかいう女の秘密をぶちまけますわ」
「なんだって?」
わたしの秘密……なにそれ。
いったい、何を知っているというの?
「わたくしの権力にかかれば調査なんて容易い。ブルース先生に幼馴染がいる情報も掴んでいましたわ。だから、エイラ……貴女の事は承知していますの」
悪い顔をして、わたしを嘲笑う。
嫌な予感がした。
「いったい、なんなの?」
「あら、とぼけるの。なら、教えて差し上げましょう。エイラとウィンフィールド伯爵が婚約を交わされていたそうですよ。でも、最近になってエイラの方が伯爵を捨てたとか。 先生、この女はそうやって平然と男を捨てるんです」
勝ち誇った表情を向けるエヴァ。けれど、ブルースは笑った。
「それは望まぬ婚約だったんだろう」
「ですが、捨てた事実は変わりません」
「エイラは僕にとっては妹のような存在であり、家族も同然なんだ。何があろうとも僕はエイラの味方なんだ」
「くっ……」
予想外の返答に、エヴァは悔しそうに唇を噛む。
ブルースは物心つく前に事故により、家族を全員失っていた。ひとりぼっちだった。幸い、子供のいない親戚夫婦に引き取られて、わたしと近所になった。だから大切な幼馴染。
こうして味方をしてくれる。
ああ……良かった。
昔から、何も変わらない。
あの優しい瞳も、
あの優しい言葉も、
あの優しい笑みも。
なにもかも。
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