感情を僕に教えて

沙羅

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「んんっ!?」
 予告もなしに穴の中に指が入ってくる。入ってくるなと力を入れれば入れようとするほど、指の存在感を感じてしまって悔しい。
「ほら力抜いて。そうじゃないと終わらないよ?」

 きっとこの男は、無理そうだからやめようとは言いださないだろう。こっちの都合なんておかまいなく、時間をどれだけかけてでも目的を達成しようとする。そんな嫌な信頼を寄せるくらいには、彼の人間味の無さを感じていた。
「そうそう、力抜いていい子だね」
それならこの地獄みたいな時間を長く過ごすよりは、早く終わらせてしまった方がいい。死ぬほど嫌だが、早く解放されたい。そんな考えの下、努めて力を抜く。

「ほんとにここに入るのかな~。すごい窮屈だね」
くるくると指をまわしながら、穴を拡張しようとしているのが分かる。こんなことをしたくらいで、あの凶器のようなものが入るようになるのかということには僕も同感だった。
 ぬちゃぬちゃと音がして、時折冷たい液体がさらに増やされる。自分が力をうまく抜けるようになったのか、それとも穴が広がってしまったのか、それとも慣れてしまったのかは分からないが、最初に感じていた異物感がだんだんと薄れていく。
「うん、もう1本いけるかな」

 彼が独り言を呟いたすぐに、今までと違う刺激が与えられる。
「な、いきなり、あぁっ!」
指が増えたことだけが原因ではないような気がする。ビリっとしびれた感覚がして、体がピクリと跳ねた。
「よかった~。気持ちよくなれないのかなって心配になったよ。でもちゃんと素質があったみたいだね」
「ひっ、あ、あんっ! やめっ」
僕が違和感を覚えたところを彼が見逃すはずもなく、執拗にそこだけを狙って指を動かしてくる。その一点を押されると、おかしいくらいに体が反応してしまう。
「ふうっ、んんっ」
恥ずかしい声が出るのを抑えようと、枕に顔を押し付ける。人の家なのも忘れて、無意識にそのカバーにかじりついてしまっていた。
「かーわい。ほんと俺好みだよね。必死に耐える姿がたまんない」

彼の声にも興奮が乗る。その高揚感からか指の動きも少し雑になっていて、与えられる刺激はだんだんと大きくなる。ついにもう1本指も増やされたみたいだった。液体と指とで搔きまわされているそこが、ぬちゃぬちゃと音を立てる。

「ふっ、んん……」
「もーいいかな、いいよね。もう十分待った」
指が全部引き抜かれたかと思うと、お尻に硬くて熱いものが触れる。自分のこんな姿で興奮されているのかと驚くと同時に、自分のも勃ちあがっている気配を感じて死にたくなった。

「ちゃんと息してね」
「ひうっ!」
まだ心の準備をしていなかったのに、ズンっとそれが入り込んできた。苦しくて痛くてたまらないのに、彼は抜こうとしてくれない。
「だ、やだ、いたい、ぬいて」
「ゆっくり息したら大丈夫になるから。ほら、吸って~、吐いて~」
彼にのせられるままに呼吸を落ち着けると、心なしか本当に痛くなくなったかのような気がする。
「ごめん、動くね」
一度激痛を乗り越えてしまえばあとはそこまで痛くはない。それどころかさっきかすめられていたところにそれが当たる度、少しだけ気持ちいという感情も生まれていた。
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