こんにちは、突然ですが、転生しました。

桜さき

文字の大きさ
4 / 8

茶会の後

しおりを挟む
温室のティーパーティをきっかけに、私は友達が二人できた。
「リクー!友達が二人もできたよー!!」
リクに抱きつくと、リクはいつも通りの真顔でこっちを見た。
「よかったですね。」
リクは本を閉じると、私の頭を撫でた。
「ちょっ!リク!」
急にどうしたのよ!と、内心思いながら、仕返しにリクの頭をクシャクシャと撫でる。
「姉様、仕返しはやめてください。」
嫌そうな声でこっちはジト目で見るリクは、相変わらず可愛い。
「ごめんってー!可愛いなあ。」
おでこをくっつけて、私は何度もリクの頭を撫でた。
恥ずかしそうに目を逸らすリクは、天使を越えた、もう、言葉では表せない。
私と同じ、淡藤色の髪と、菫色の瞳。
お兄様はパパに似てるから、青紫の髪なんだよね。
「リク、大好きだよ。」
「急になんですか。」
恥ずかしそうにリクがこっちを見つめ返す。
「姉様、そのことより、今は覚醒式の準備をするのが先ではないのですか?」
いつも通り真面目な顔に戻ったリクは、現実を突きつけてくる。
「げっ!そうだった!ちょっとパパのところに行ってくる!」
完全に忘れてた!
「ありがとね!リク!」
リクの部屋を飛び出すと、私はパパの執務室に向かった。
覚醒式とはーこの世に生まれてきた人間が8歳になる
とやる儀式で、
英霊、神獣、精霊のどれかと契約し、能力をもらう事ができるのだ!
「パパ!覚醒式ー」
扉を開けて、聞こうとしたが、先客がいたみたい。
黒髪に赤い瞳を持つ少年が、振り向き、こっちを見た。
お兄様より少し下くらいの年齢かな。
「ディア、ノックしてから入りなさい。覚醒式はディアの誕生日の翌日、四週間後だよ。」
にっこり笑顔でパパが説明してくれた。
まだそんなに時間があったんだ!
「パパありがとう!」
お礼を言って、去ろうとすると、いつの間にか私の隣に立っていたパパに抱っこされた。
「ディア、去る前に、挨拶しなさい。この子は、君の従兄弟、僕の姉の息子、クロードだよ。とある事情で引き取ることにしたんだ。」
パパにおろされると、クロードはペコッとお辞儀をした。
「こんにちは、セレネディア様。クロードと申します。」
形式的な挨拶をされ、内心戸惑いながらも、皇室の茶会の後に練習したカーテシーを決めた。
「こんにちは。クロード様。セレネディアです。様をつけるのは堅苦しいので、ぜひディアと呼んでください。敬語もやめましょう。」
クロードさん、目に光がない。何か事情があるんだろうなぁ。
「わかりました。ディア嬢。」
やっぱりまだ敬語かぁ。
私の方が年下なのにな。
パパと目を合わせると、少し困った顔で微笑んだ。
やっぱり、何か事情があるみたい。
あとでパパに聞いてみよう。
とりあえず、リクのところに戻ろう。
「クロードさん、また会いましょう。」
私はパパの執務室を出て、リクの部屋に戻った。
「リーク!覚醒式は四週間後だって!」
「そうですか。よかったですね。」
また同じ返事~。
でも、ちゃんと私が来ると本は閉じてくれるのよね。
そういうところが可愛いんだよなぁ。
「お嬢様、王女殿下から手紙が。」
リクのことを後ろから抱きしめていると、テアが空から降ってきた。
「わっ!テア!ありがとう!」
手紙を受け取ると、私は手紙を慎重に開封した。
アンナ王女様とエミ王女様からだー!
『ディアちゃんへ。先日のお茶会では、エミのことを手伝ってくれてありがとう。ディアちゃんのおかげでエミは図鑑のことを、もっと教えてくれるようになったの。お礼と言ってはなんだけど、ディアちゃん、もうすぐ覚醒式でしょ?覚醒式って、ティアラをつけて行うのだけれど、そのティアラ選びを手伝わせて欲しいの。いいかしら?嫌だったら断ってね。また王宮に来てね。ー第一王女、アンナと第二王女、エミより。』
手紙を読み終わると、私はその場で固まった。
覚醒式でティアラをつけるのって、確か王女と大公女だけよね!?
あ、忘れてた。私大公女だったんだった。
でも、王女様が選んでくださったティアラをつけて行ったら、すごい思い出として残りそう。
「テア、紙とペンを用意して。返事書くから。」
「承知しました。」
テアは一瞬にして消えると、すぐに紙とペンを持って再度現れた。
「リク、テーブル借りるわね。」
紙を机に置き、私は返事を書き始めた。『アンナ様へ。こちらこそ、お力になれたのならば、本望です。本当にあの日は楽しかったです。エミ様の図鑑、いつか私も見てみたいです!そして、ティアラの件についてですが、ティアラ選び、是非手伝ってください。あまり宝石のことや、ティアラの事がわからず困っていたところでしたので、アンナ様のような素敵なお方に選んでもらえるのなら、これほど幸せなことは他にはないでしょう。来週にでもうちに来てください。エミ様にも、よろしく伝えておいてください。ー大公女セレネディア』
これでいいのかな?手紙なんて書いたことないから、失礼なこと書いちゃってるかも…
「テア、王宮にこれ送っといて。」
「かしこまりました。」
またアンナ王女様とエミ様に会える!
楽しみだなぁ!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...