文豪たちの鎮魂歌~レクイエム~

桃井桜花

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第六話 テロ組織《ユグドラシル》

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───四月十四日 午後十六時四十五分。東京都・警視庁公安部にて。

 私、永井は坂口君と太宰君を連れ、公安部に訪れていた。

 理由はただ一つ。テロ組織《ユグドラシル》の情報が手に入ったと、《クライシス》の長官である夏目漱石なつめそうせき先生から伝えられた。私一人で行ってもよかったのだが、行動力豊かな太宰君と常識外れの頭脳を持つ坂口君を巻き込め……いや連れて行けば何かしらの壊滅するヒントが出てくるはずだ。まぁ、壊滅するのは簡単だけど。でも、テロ行為をするという。三年前とは違うからだ。元々のメンバーも含まれているが、新たに加わったメンバーもいる。今のところどのような行動をとるのかよくわかってはいないため、こっちもうまく動けないのだ。だから、念のために潜入捜査官を配備し、様子をうかがっているのだよ。

 公安部の会議室で、公安部の条野採菊じょうのさいぎくさんが私たちに資料を渡し始めた。

「ありがとうございます条野警部」

「えぇ。弟の治君のためならば」

 条野さんは太宰君の兄(自称)で、太宰君を弟のようにかわいがっている。ちなみに条野さんは私の一つ上、私が二十四で条野さんは二十五歳。私はなるべく年上には付けで呼ぶようにしている。

「条野さん、太宰君のこと好きですね」

「永井君、我が弟の好ましいところが百個あるのですが、聞きます?」

「本題お願いします」

 条野さんにそう言うと、少し拗ねながら淡々と話し始めた。

「《ユグドラシル》に潜入している者から、メンバーリストを作成したとのことで、今日は集まってもらいました。そちらの資料がそれです。未だに彼らの目的は分かりませんが、あらかじめ人物像を知っておけばいいかと思われます」

 私は資料に手を付け、ゆっくりと目を通していった。

───首領・正岡子規まさおかしき。【目が合ったものを対象とし、眠りに誘う】。それが奴のギフト。

───幹部・フョードル・ドストエフスキー。【触れた人間を対象とし、必ず気絶させられる】。正岡の右腕として有名だ。

───幹部・中原中也なかはらちゅうや。【自由自在に姿を消すことが出来る】。三年前、ユグドラシル壊滅後、行方不明になった人物で、太宰君と樋口君の同じ大学に通っている。

───幹部・宮沢賢治みやざわけんじ。【自分が書いた詩の通りになる】。彼は三年前にはいない人物で、今回新しく入った幹部。

───谷崎潤一郎たにざきじゅんいちろう。ギフト不明。彼は三年前にはいなく、芥川君の新聞社での同僚らしいけど、芥川君自身は気づいていないみたい。敢えて言わないでおくが、もし自分自身で気づいてしまった時は恐らく人一番悲しむことだろう。

───小林秀雄こばやしひでお。彼こそ公安部の人間で、潜入捜査官だ。この資料も彼が用意したもの。写真がついていないのが難点だけどね。

「今のところ小林を含めての六名となっておりますが、あと一名いるとの事。顔も名前も姿さえも見たことがないと報告があがっておりました」

「ふむ、まぁいいじゃろ」

 夏目先生は資料をデスクの上に置き、条野さんが居れた緑茶を飲んだ。

「このフョーなんたらが厄介ですね」

「フョードル・ドストエフスキーな治。まぁな、触られちまったら御終いだからな」

「谷崎潤一郎のギフトが不明なのはきついね~。仮になくても何らかの形で襲ってくるかもしれないし、あと一名気になるね」

 私もデスクに資料を放り投げ、珈琲を一口飲んだ。

「今のところ動きはないみたいじゃの……子規の奴め」

 夏目先生はもう一度資料を持ち、正岡子規の資料を見つめた。私は彼らの中を知っている。正岡と夏目先生は旧知の仲であり、共に同じ未来のために歩んで来た仲のだと。この場にいた太宰君以外、全員夏目先生の雰囲気でこのことを感じ取ったに出会った。

 一方、そのころ樋口君と織田君は《フョードル・ドストエフスキー》と対面していたことを知らずにいたのであった。
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