転生前から生粋の悪役令嬢は、百合ヒロインから逃亡したい!

木東

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まずはデートをしませんか?

どこが好き?あなたたは?

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「殿下は、私はローズ様のどこを好きだと思われますか?」

リリー様はそう尋ねると、静かな笑みを浮かべる。
その表情は、いつもの能天気で可愛らしい笑顔とは全く違った。


皇太子殿下は固まる。
まさか自分に質問が返ってくるなんて思わなかったんだろう。

私ですら理解できないリリー様の好意。
皇太子殿下にわかるはずがない。

あんな質問をするくらいだからそれは間違いないはず。

「殿下、私たちは妃候補です。
そして聖貴族ということもあって、交流は古くからあります。
私たちのことをよく観察されている皇太子殿下なら、推察するのに苦労しないのでは?」

リリー様は目を伏せ、紅茶を啜りながら優雅にそう畳みかけた質問をする。
いつの間にか立場が逆転している。


「もしどうしても、私がローズ様の何を好きなのか知りたければ、
殿下がローズ様のいいと思うところをいくつかあげてみられてはいかがでしょう?
きっとその中に答えはありますわ」


そこまで言えば、どのような形であれ、少しは何か発言が出てくるものだろう。
例えば何かいいところがあるなら、嘘でもそれを伝えてくださればいいし、
気に入らないなら『こんなののどこがいいんだ!』と怒鳴るだろうし

気を使ってくださるなら『人間一つはいいところがあるからね』くらいの言葉は言えるはずだ。

しかしこの皇太子、何も言葉が出てこない。

あくまでこれは会話…何か返答がなければリリー様は会話を続けられない。
私のいいところが全く出てこないのを悪いとも思ったのだろう。
リリー様は話の方向を変える


「こんなに素敵なローズ様の魅力が…皇太子殿下にわかってもらえないなんて…嘆かわしいですわ。
でも、わからないならわからないで、ローズ様のいいところがわかるのは私だけ…
という優越感にはしたれますけど。」

これは…私のことを持ち上げてくださっているのでしょうか?
なんか怖さの方が際立って、正確な判断ができませんわ。

ほら、皇太子殿下も冷汗をかいているではありませんか。

「どうしてもというのであれば、私が好きそうな人物像を思い浮かべてみては?
それが答えということで結構です。」


それなら答えられるだろう。
好意はないとは言っていたけれど、リリー様は会話を交わした数が多い方のはず。
リリー様の好みなら、勘違いはあるかもしれませんが何かしら心当たりはあるはずですわ。

でもまだピンとはきていないらしい。

皇太子は、リリー様に顔を上げると


「その…君の好みそうな人物像というのが………全く見えないのだが」

と言葉を発した。

それはどういう意味なのだろう。

例えばそれが、「私のような人間を好きになる人間の好みそうな人のことを理解できない」
という意味なのか、

それとも…リリー様の好み自体を推測できないということなのか。

リリー様は戸惑いながた皇太子様に質問をする


「皇太子様は私たちのことをどう思われているのですか?」

まさかの返しに皇太子殿下はもちろん、私も驚く。
私のことを聞かれているのに、全く違う質問が飛んできたからだ。

私たち4聖貴族は皇族との関わりは幼い頃からある。
そして自分たちよりも上の身分の方だ。

その方のことを、親しくないと取れるような物言いで返答拒否をされるのは、
あまりにも無礼なのではないだろうか。


「私は、想い他人への気持ちを教えろだなんて、デリカシーのないことは言いませんわ。
でも、今後お相手を決める上で、何かしらの評価はなさってるんでしょう?」

どんどん発言がエスカレートしていく、本来は注意すべき場面だ。

しかし、今回私はリリー様を止めなかった。


理由は皇太子殿下のお気持ちを知りたかったからだ。

それは、恋愛とかと言うより、お妃様をどのような基準で決めるのかという情報を知りたかったのだ。
今の状況では身の振り方を考えなければいけないからだ。

それに私は完全なるいじめっ子、一切の正義を味方しない。

いい子じゃない私は、リリー様を留める理由が皆無なのです。


リリー様はバラの香りのする紅茶を、皇太子殿下を冷静な瞳で見つめながら啜り
私は静かに唾を飲み込んで皇太子殿下を見つめた。


でも、皇太子殿下は何も答えない。
痺れを切らしたのか、リリー様は返事を催促する。


「仮にも妃候補、私たちのことをみていないはずはございませんわよね?
人に聞く前に、ご自分のお気持ちから表明されてはいかがですの?」


「…」

でも沈黙は続く…嫌な予感…………
まさか………何も思ってないなんて言うことはないですわよね?

リリー様も流石に予想外だったのか、焦った様子でさらに言葉を続ける

「いいところである必要はございませんわ、
よろしくないところでも構いません、私たちは殿下から見てどのような人間なのですか?」


でも皇太子殿下は相変わらず言葉を発しない
しかもついには頭を抱えて唸り始めてしまった。


私はまぁ、そう言う行動をとってまいりましたのでそれは仕方がないのですが
にしても、これから民を見て、声を聞き、政治を取り仕切っていく人間が、
妃候補2人の人となり、印象を聞かれて答えられないと言うのもいかがなものでしょう。


「呆れた、まさかひとつも出て来ないとは思いませんでしたわ…」


リリー様は肩を落とす。


「これでも私は4聖貴族の娘。
もし、皇太子様が私を選んでくださるのであれば、全てをあなたに捧げます。
でも、愛情はおろか、相手のことも何も知ろうとしない方の元へ行くのは不本意ですわ。」


私はリリー様の意見を聞いて、少し見直した。
こんな好き勝手やってる風でも、ちゃんと4聖貴族としての自覚はおありなのね。

あら、でもそれならやっぱりリリー様が皇太子殿下とくっつくのが一番宜しいような気がしますわ。

黙りだった皇太子殿下が、ここにきてようやく口を開いた。

「確かに、4聖貴族の皆とは幼い頃からの知り合いだ。
何年にも渡る付き合いをしてきているのに、君たちのことをこうして何も話せない。
だから僕は皇太子なのにモテないんだろうね…」


「いや…モテないことはないと思いますけど…」

皇太子殿下が落ち込んでしまった。
まさかそんな風に悩むなんて思ってはいなかった。

打たれ弱すぎでは?




と思ったけれど、

その後すぐに顔を上げて


「よし、決めた、確かにこのままでは失礼だ。
もう少し君たちと真面目に向き合おう。
そして、真面目に妃選定のことについて考えるよ」


と宣言した。

その時はその意気込みに押されてしまってそれ以上聞かなかったけれど、
まぁとりあえず将来を見据えてくださったのはよかったと思いました。


しかし、やはりちゃんとご意見は聞いておくべきだったのでしょう。
翌日そのことにとても後悔することとなった。

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