転生前から生粋の悪役令嬢は、百合ヒロインから逃亡したい！

第一試験はおもてなし

試験は真心

この日、王室から手紙が届いた。

妃の試験の始まりの合図


当然レフレイム家では重大なこと

なので、この日のディナーでは会議が行われた。


「まさか、このようなことが起きるとはな」

渋い顔を作り父はワインを一口飲む。
このように急遽妃を選ぶ試験を行うことは今までの記録には残っていないらしい。

「あら、今までも４聖貴族にはたくさんの妃候補の女性が生まれたのでしょう？
その時もこのようなことがあったのではなくて？」

一応なんでもないと言うふうに、父に言ってみたが首を横に振る。

「大体そう言う場合は、皇太子様の好みか、家の力関係で決まってたからなぁ」

私は父の言葉を右から左へ流しながら、カチャカチャと音を立て、
大きなお肉をナイフとフォークで切り分け口に運んだ。

でも肉の味なんかわからない。

こんな立て込んだ話をしていては、脳みそも料理がおいしいかどうかなんか判別できないのでしょう。

私はため息を吐く。

「まぁ、ローズの性格の問題もあって、ライレイニのお嬢様が最有力候補は向こうだったのが、
うちにも平等にチャンスが回ってきたのはいいことじゃないか、」

兄はおちょくるようにそう励ますが、
まあ、その話はそこまで他人事じゃないからか、父はまた頭を抱えてしまう。


「やっぱり、今回のことは例の噂が原因か？」

「ライレイニの令嬢は可愛らしいけれど、やっぱ孫が欲しいものねぇ…」

「ローズ、念のために聞くが………その…………まさか本当に。」

「だから違います、私の好みは筋肉質な男性です。」

あの告白以来、定期的にこう言う話をされるのでいい加減うんざりだ。
何人に何度この否定をしてきたことか……そろそろイライラしてくる。

「でも心配だわ、この子礼儀作法勉学は、恥をかかないよう育ててきたつもりだけれど…」

母は心配そうに手をほおに添え私を見る。
まるで私が問題児だとでも言いたげだ。

一体私のどこを見て問題があると言うのだろうか。

「それが完璧なら別にいいじゃない。」

私がそう言い返すと、母は顔を手で覆ってしまった。

「ローズよ、我々貴族は領民、国民のに親身になって考えなければならない。」

父は私を嗜めるようにゆっくりと言う。

「存じておりますわ。」

「つまり、身の回りの人間を大事にしなければならない」

「もっともでございますわね。」

「つまり、つまりだ。
大事にすると言うのは、優しくすると言うことだ。
ローズは周りへの優しさが足りないと、実の親ですら感じている。」

「お言葉ですがお父様、優しくするだけが優しさではございませんわ！
時に厳しく、間違ったら力技も厭わないくらいの注意も、また愛情ですわ！」

「その力がローズは強いと父は言っている！」

嗜めるように優しい口調はいつの間にか言い合いによって激しい口調へと変化していた。


しかし私にはわからない。


何度もいうけれど、私は誰でも彼でもいじめるわけじゃない。

わかりやすく「いじめ」と言っているけれど、実際のところ自分が見ていて嫌なところを直してもらおうと
厳しく「教育」しているだけなのです。

だから、自分がなかなかによろしくない行いをしている自負はございますが、
それは、相手のためを思ってのことですわ。

ある意味優しさです。

それを「優しくない」と言われるのはあまりにも心外ですわ。


その様子を見ていた正面に座る兄は、
盛大なため息をつくと

「父上、もういっそライレイニの令嬢に娶ってもらった方が幸せなのでは？」

と進言した。

「いや、そうなるとライレイニ家にもリフロント家に迷惑がかかる」

どう言う意味かしら。

「まぁ、とにかく試験を精一杯がんばりなさい。」


そんなの言われなくても当たり前ですわ。

私は王室から届いた手紙の内容を思い返した。

「お茶会…ですか…………。」