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第三は試験と謎解き

戦略か正面か。

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回想を終えた私は、机に突っ伏していた体を起こす。

やること自体はシンプル。
いつも通りテストを受けて、その後に出題された事件の謎を誰よりも早く解く。

それだけ…それだけなのだ。


「でも…意外に難しいわね。」


私がそう呟くと、部屋でベッドメイクをしてくれていたメイドのアメリアが私に声をかける。


「定期テストのことですか?」

「いいえ、試験は難しくも何ともないわ、いつも通り上位を取るもの。」

「では、お妃様選定試験のことですか?」

「まぁ、そんなところよ。
テストの結果で、どんな内容が回ってくるかわからないから。」

「確か、順位によってその後の課題の難易度が変わる…でしたっけ?」

「そうよ」


一番を取る自信はあるわ、けれど本当にそこに全力を出してもいいのかしら。
それで簡単な事件が回ってくるのは結構ですけれど、ヒントがない。

万一簡単な事件でもヒントがなければ解けないような謎だったら?
謎が解けても、他の2人に先を越されたら意味がないわ。


「わざと下の点を取ればむずかしい事件が回ってくる代わりにヒントがたくさんもらえる。
でも一位通過ならヒントは少ない代わりに簡単な問題…どちらがいいのかしら。」


これでもう2つも負けている。
試験が後どれだけ続くかわからないけれど、これでどちらかに勝ちを持っていかれたら脱落は確実。

リーブ様にいくら婚約者がいて形だけの参加だと言っても、今回のことで認められれば妃の座に着く可能性もある。
そうである以上、私は今もう崖っぷちにいるのは間違いない。

勝つつもりなら…ここは素直にテストを受けるより、作戦を立てた方がいい?

いいえ、でもそうとも限らないわ。
結果だけで勝敗を決めると言ったって、過程を見ないとも限らない。
テストの点数が悪ければ事件が解けたとしても問題視されるかもしれない。

このテスト…どう挑めばいいのかしら。
それによって作戦が変わるわ。

私は本を見つめながら本気で悩んだ。

そんな私に対してアメリアが投げかけた言葉は、あっけらかんとしたストレートな意見でした。


「お嬢様らしくないですね、そんなことで悩むなんて」

「私らしく…ない?」

「いつもなら、そんなずるいことを考えず全力で一位を取りに行くではありませんか」

「…」


言われてみればそうね。
確かに私は前世からずっと実力主義ですわ。

全力でやらない者に、相手を馬鹿にする資格はない。
出来ないことで相手を罵るのは愚かな行為。

大体、この試験を受けることにした理由だって、中途半端なのが嫌だからよ。

なら、答えはもう決まってるわ。


「アメリア、ありがとう。
そうよね、何をずるいことを考えていたのかしら。
戦略のために手を抜くだなんて…許されることではないわ。」

私は顔をパンパンと両手で叩くと、本を開き勉強に励んだ。


「正々堂々と戦うだけよ。」


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