転生前から生粋の悪役令嬢は、百合ヒロインから逃亡したい!

木東

文字の大きさ
63 / 64
第三は試験と謎解き

答え

しおりを挟む

「試験官、答えがわかりましたわ」


私は今、三次試験の説明を受けた馬車の中にいた。
ハロルドに真相を伝えるためだ。


「さすが成績トップ、最初に答えを持ってきましたか。」

「あなた、本当に意地が悪いですわね。」

「何がでしょう」


ハロルドは白々しい笑顔を浮かべる。
「何がでしょう?」じゃありませんわ。


「なぜこのようなゲームじみたことをなさるのかと思いましたが、
あなたが求めていたのは、事件の真相を突き止められるかどうかではなく
顕になった真相を知ってどうするか…それを確かめたかったのではないですか?」


考えてみれば、妃になるのに謎解きなんて要素は必要ありませんわ。
余興にしても無駄が多すぎますもの。


「面白そうな話ですね、その説の話を聞きいたいところですが、
まずは課題の答えの方から聞かせていただきましょうか。」


私は盛大なため息を吐くと、突き止めた真相を口にした。


「犯人は『ダレンツ・ルネ』ですわ」

「ほう…」


ハロルドは私の怪盗に、ニヤリと笑う。
その答えが正解かどうかはまだ言わないけれど、その代わりこんな質問をした。


「『怪盗ジャック』ではないのですか?」


誘導尋問ですわ、もしこれで確信が持てていなければ…心が揺れたかもしれない。
でも、それがあり得ないと言うことはもうわかりきっていた。


「巧妙でしたわね、『怪盗ジャック』でも矛盾なく筋書きは通りますわ。
でも、コレクターではなく義勇軍の可能性のある『怪盗ジャック』が、『カリズ・ルネの作品じゃないから』と言って絵画を返却する理由はありませんわ。
ルネ家の誰かの絵画であれば、カリズじゃなくてもオークションで売れますもの
それに、怪盗ジャックが単独犯なのであれば今回は無理ですわ。」


私が芯を持ってそう答えると、ハロルドはそれ以上口を挟まず、
真相を話すように私に促した。


「事件の真相はこうですわ。
ルネ家の卒業生、マルゴット・ルネが『カリズ・ルネ』の絵を贈呈することを校長先生にお約束しました。」


この辺りは詳しい詮索はしておりませんが、まぁ恩義があったか、ルネ家に興味のあった校長が話しかけたかどちらかでしょう。
ここまで調べる必要が本当はあったかもしれないけれど、そこまでの時間がありませんわ。
だからその辺りの事情は飛ばして説明を続けました。


「ところが手違いで、本来お渡しする絵画と間違えてお爺さまの形見の絵画を間違えて贈呈してしまった。
慌てて交渉したものの、校長がその絵画を気に入ってしまい返却をしてもらえなかった。
ダレンツは、あの絵を『カリズ・ルネの作品じゃない』と見抜けなくて、それに憤慨するほど芸術への情が熱く、
あれを大事にしていて売りに出さなかった事情を知って誰にも手渡したくないほど、祖父のことを尊敬し大事にしていた形見の作品、家が許しても、校長にあの絵を渡すなんて彼には許し難いこと。」


あの形見の絵画をどれだけ返してほしかったでしょうね。
そして、彼は自分が傷つかずに絵画を取り戻す方法を考えたのでしょうね。

そして、自分以外にあの絵を盗んでもおかしくなくて文句を言わなさそうな相手を探した。
普通はそんな都合のいい人物は存在しないけれど、このケースでは当てはまる人物がいた。

それが…怪盗ジャックだった。


「ですから彼は美術研究クラブの仲間に頼み、絵画を盗んだのです。
彼らなら傷をつけずに盗み、隠すことができる愛情と技術が備わっている。
しばらくは美術倉庫かどこかに隠して、ほとぼりが覚めたら持ち帰るつもりでしたのよ。
まぁ、元の場所に戻っていると言うことは…どこかでバレて計画は失敗、
破損がなかったことでアカデミーは問題をもみ消した、違いますか?」


私はハロルドに自分の推理に問題がないか確認を求めた。
ハロルドは、相変わらずニヤニヤと笑いながら私に質問を投げかけます。


「なるほど、しかし妙な話ですね。
それなら怪盗ジャックの手紙はなんなのです?」


「ただの模倣ですわ、ルネ家には一度解答ジャックが盗難のため侵入しておりますわ。
その際、予告状もしっかり出されたとか…ならダレンツはその予告状を見たことがあるはず。
彼の技術なら、文字やマーク、紙までそれと同じように再現して作ることなど朝飯前。
一つだけ違うのは、予告状ではなく事後報告の内容だったと言うところ。
当然よね、警備なんか増やされたら運び出せないもの。」

「それが真相ですか?」

「えぇ。これが私の導き出した真相です。
でも、あなたの狙いは、私にこの答えを出させることではありませんね」

「おかしなことを言う、私は事件の謎を解けと言ったのですよ」

「…こんな謎、解かせてなんだと言うのです。
知って正解でした、で放置できる問題ではないでしょう?
だって、この事件は実際に起こった事件なのだもの。」


この事件の謎を解くことで明かされる事実は…それが意味することは…、
『アカデミーはこの事件の真相を隠蔽している』と言う事実だ。
つまり…


「三次試験の本当の内容はこうよ
『事件の謎を解いて、この事件をどう扱うか』あなたはその答えを望んでいる。」


そうでなければ、こんな無意味な余興を行う意味がわかりませんもの。
頭脳と知識だけじゃない…対応力も試されているのよ…きっと。

ハロルドは足を組み直すと、私を品定めでもするかのように全身を舐めるように見回した。


「そうだと思うのであれば、そう言うことにしましょう。
では、仮にそういう課題だったとして、あなたはこの事件の何を問題定義にして、答えを出すのです?」

「この問題は、大層な問題が起きていると言うのに処分せず箝口令を出して、もみ消したことですわ。
かわいそうではありますが、果たして処分をしないのはためになるのでしょうか」

「では、その生徒を今からでも処分しますか?」


そう、隠蔽していることが問題だと言うなら
これからするべきことは一つ。

この事件を公にして、生徒を叱るべき罰を受けてもらう。
一番正しく、誠実なことですわ。

これが一般人が思い描く正義。
でも…世の中は…そんなに単純なものかしら?


「…綺麗事…私は嫌い。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

乙女ゲームの中の≪喫茶店の店長≫というモブに転生したら、推しが来店しました。

千見るくら
恋愛
社畜OL、乙女ゲームの世界に転生!? でも私が転生したのは――女主人公でも攻略対象でもなく、ただの喫茶店の店長(モブ)だった。 舞台は大人気乙女ゲーム『ときめき☆青春学園~キミの隣は空いてますか?~』。 放課後、女主人公と攻略キャラがデートにやってくるこの店は、いわば恋愛イベントスポット。 そんな場所で私は、「選択肢C.おまかせメニュー」を選んでくる女主人公のため、飲料メーカーで培った知識を駆使して「魂の一杯」を提供する。 すると――攻略キャラ(推し)の様子が、なんかおかしい。 見覚えのないメッセージウインドウが見えるのですが……いやいや、そんな、私モブですが!? 転生モブ女子×攻略キャラの恋愛フラグが立ちすぎる喫茶店、ここに開店! ※20260116執筆中の連載作品のショート版です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...