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番外編 IF 野猿な囚人 37-2.(セリウス外ルート)憧れの人 フェス視点
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《前半は、リーリアのお仲間、フェス視点でのお話です。》
僕の両親は、とても素晴らしい両親だった。
父さんは、狩人で、体格も良く、とても腕っぷしも強かった。
母さんは、料理が上手で、いつもいい匂いがして、とても美しい金髪をしていた。
その自慢の両親と僕は、森の奥の方で暮らしていたが、僕が10歳になり、そろそろ街で教育を受けさせようと、街へ引っ越してきた。
ところが、街は森以上に危険だったようで、両親は、運悪く事故で亡くなってしまった。
僕の両親は、結婚に反対をされて駆け落ちをしたと聞いていた。
だから、僕には頼れる親戚もいなかった。
両親が死んだ後、孤児になった僕は、役人だと名乗っていたが、怪しい大人達に連れていかれ、街から遠い孤児院に入れられた。
その孤児院は、何故か長くいる子供が少なく、食べ物自体もあまり食べさせてくれないうえに酷く不味くて、世話をしてくれる職員も冷たい人ばかりで、お腹も気持ちも寂しい毎日を過ごしていた。
特に、僕は美味しいものばかり食べて育ったせいか、他の子達のように、我慢して出される食事を食べることがあまりできず、他の子達にあげてしまっていたので、いつも飢えていた。
ある日、僕は職員の人達に、孤児院近くにある建物の広い地下室に連れて行かれ、僕でも持てる短剣や針みたいな武器を持たされた。
その地下の部屋には、鎖につながれた狂暴そうな獣が沢山いて、「そこで一晩、生き残ったら、美味しいものをお腹いっぱい食べさせてやる」といって、僕は1人だけ、その地下室に置いてかれた。
僕は、どういうことなのかと首を傾げたが、とりあえず、扉は施錠されて、明り取りの小さな窓があったけど開かなさそうだし、一晩はここから出してもらえないことは理解できた。
部屋の中にいる鎖につながれた獣達には近づきたくないから、獣達から一番離れた位置に移動して座り、やることもないから、獣の数を数えたり、どんな種類の獣がいるかを観察したりしていた。
獣の鎖は、獣の首元から1本の柱へつながっていて、獣達を留めているその柱は、沢山の獣に引っ張られて、ちょっとグラグラしていて、この柱が外れたら、獣達が自由になってしまいそうだなと少し不安になった。
しかも、獣達はやけにグルグル鳴いて、僕と同じで飢えているようで、思わず僕と飢えた仲間同士だなってくだらないことを考えながら、獣達をぼんやり眺めていた。
そして、夜もふけた頃に、突然、地獄が始まった。
外からも操作したのか、獣をつないでいた柱がとうとう倒れたのだ。
首元の鎖を引きずりながらも、地下室内は自由に動けるようになった獣達。
自由になった飢えた獣が何をするかなんて、決まっている。
自分より弱い生き物を狩って、食べるんだ。
生きるために……。
その地下で、一番弱い生き物だと思われたのは、当然、僕だ。
多くの自由になった獣達が僕に襲い掛かってきた。
なるほど、「一晩生き残れたら」と言った意味がやっとわかった。
生き残れなかったら、僕はこいつら獣の餌で、もし生き残れたら……。
その後、僕は両親への感謝の気持ちでいっぱいになりながら、持っている武器をフルに活用して、襲い掛かる獣達を捌いていった。
父さん、ありがとう!
物心ついた頃から、僕を森へ狩りに連れて行ってくれて。
まだ何もできない頃は、近くの木の上に避難して、父さんが狩りする姿を眺めて、やり方やコツを覚え、家でも夕方に母さんが料理している間に、小さな僕でもできる剣の使い方や獣の懐に入りこんで獣を狩る方法や攻撃魔法なども教えてくれた。
おかげで小さい頃から、父さんと一緒に狩りをしていた僕だから、今、この獣達を冷静に仕留められる。
母さん、ありがとう!
一度倒れた獣が単に失神しただけで、捕まえたと思った後に襲い掛かってくる可能性もあるからと、その対策の防御魔法や、どうすれば獣が確実に息の根を止められるか、いろんな獣の急所などをよく教えてくれて。
おかげで、非力な僕でも、仕留めそびれた獣から防御魔法で身を守り、この渡された針のような武器で獣の急所を刺して、動きを止めて、短剣で息の根を止めることがスムーズにできた。
また、肉を捌くのも母さんとよく一緒にやったから、仕留めた獣をさっと美味しそうな部分をだすように瞬時に捌けば、その捌かれた獣の肉に他の獣はひきよせられて、僕を襲ってくる獣を減らせていった。
そのうち、残った獣達は、僕が弱いという認識が薄れたのか、もう僕には襲い掛からずに、既に死んだ獣を食べ始めたので、僕は獣にやられた傷を応急処置しながら休み休み、獣を仕留められるようになった。
さすがの僕でも、そこにいたるまで、かなり出血して、ちょっと死にかけていたから……。
一晩、明けて、僕をこの地下に閉じ込めた奴らが扉を開けて、僕が生きていることをとても喜んでいた。
「やった!生きてる!!こいつで二人目だな。『バーナル』以来の快挙だ!」
「しかも、こいつ、死にかけちゃいるが、全部の獣を確実に仕留めていやがる。
これは『バーナル』以上の暗殺者になるぞ!さすがだな~」
「だから、見込みがあるって言っただろう?
こいつが肉を捌くのを見た時から、腕のいい暗殺者になるって!」
そいつらは嬉しそうにして、出血でしんどい僕を連れて地下室を出て、知らない建物に連れて行って、丁寧に手当てしてくれた。
約束通り、美味しいものも食べさせてくれて、僕はこれから暗殺者として生きていかないといけないと教えられた。
拒否するなら、今度は僕を縛って、鎖なしの獣達の餌にすると脅された。
その時の僕は、奴らの言うことを半分しか聞いてなかったけど、ずっと、僕と同じ目にあったらしい「バーナル」という人物のことだけは、忘れられなかった。
そして、暗殺者として訓練させられ、何とか一人前になった僕は、やっとバーナルと出会えた。
バーナルは、父さんのように強く、母さんのように料理が上手く、とてもいい匂いがして、綺麗な金髪をしていた。
しかも、僕と同じ地獄をみたうえで、生き残った人だ。
こんな人に対して、僕が憧れないはずがない。
僕はバーナルの何もかもに憧れている。
それは昔から今でも変わらない。
フェスは、リーリアが「何故、フェスがバーナルに憧れているの?」と聞いたのをきっかけに、フェスの生い立ちを含めてリーリアに話してくれた。
フィスの昔話に、リーリアは「ひどい!!」とだーだーと涙を流した。
特に孤児院での飢えた時の話では、「わかる!」とヘッドバンキング並みの頷きを返していた。
「やだー、フェスあんた、私に両親を投影しているの?」とちょっと嫌そうにするバーナル。
「……いや、両親のように凄い人だって、憧れているけど、投影はしていない。
両親は両親だしね。
でも、あの地獄で、僕は正直、出血が多くてちょっと死にかけていたのに、バーナルはかすり傷だったって聞いたから、僕よりも子供の頃から強かったんだと思って、今でも尊敬している」
「あら、あの頃は強くなんかなかったわよ。
あたしのは、裏技というか、身を守る術を持っていたからよ」
「身を守る術って防御魔法ですか、バーナル?」と不思議に思い尋ねるリーリア。
「違うわ。その頃は今ほど魔法も使えなかったもん。
でも、私の亡くなった親が薬草や毒草関係の仕事をしていたから、私もそれを覚えて、身を守るために自分で薬草や毒草を採って、しびれ薬とか目くらましの薬とか作って、常に持ち歩いていたのよ」
「ほ~。子供の頃から、薬や毒にも詳しかったのですね~」
「まあね。ほら、今でこそこんなんだけど、昔のあたしは凄く華奢で可愛かったから、よくいじめられたリ、変態に襲われそうになったりしたから、身を守るために必要だったのよね」
「……あの獣たちを全部、しびれ薬や目くらましで防いだの?」と今度はフェスが不思議そうに尋ねる。
「ええ。あの部屋に入れられた時点で、嫌な予感がしたから、獣がまだ鎖につながれている間に、一晩は効くようなしびれ薬や、動けなくなる毒を塗った短剣や針で事前に刺しておいたのよ。
案の定、私の時も夜に鎖を外されたから、もし大人しくしてたら危なかったわ。
だから、まともに獣と戦ったフェスの時に比べたら、ずるよね?」
そう言って、フェスが憧れる程ではないのよ?とため息をつくバーナルに、リーリアは顔色が蒼くなる。
「いやいや、バーナルさん!?
普通の10歳そこそこの子供は、そんなことできませんよ。
まず飢えた獣に近づくっていう選択肢はないですからね。
それをできたバーナルは、子供の頃から察しが良いというか、危機管理能力が高過ぎですよ!」
「まあ、そうなのかしら?」
フェスとリーリアは、うんうん、凄すぎ!と強く頷いた。
「そもそも、あの獣を倒せるだけの数の毒を持っていたことも凄いな」と感嘆するようにバーナルを褒めるフェスに、今度はバーナルが首を傾げる。
「え?だって、獣って5匹位だったでしょう?」
「……5匹だったの?」と驚くフェス。
「ええ。フェスの時はもっといたのかしら?」
「……僕の時は確か13匹いた。
数えたから、覚えている」
「じゅ、じゅうさんだと~!?
あいつらめ!!
フェスを殺す気満々だったな!?」
「そういえば、僕が助かった後に、飼ってた獣の数が増えすぎて、共喰いをさせるつもりもあったって、あいつら言ってたな」
「あ・い・つ・ら~!!」
怒り心頭のバーナルに、ふっと微笑むフェス。
「それでも、僕のバーナルへの憧れはなくならないよ!」
「やだ!何、この子も可愛い~!!」
フェスの頭をなでるバーナルの横で、ふとリーリアは疑問が浮かんだ。
「ね、ねえ!そいつらって今も子供達に、そんなことしているの!?
それなら、すぐに止めさせないと!!」
「やだ~、そんな訳ないわよ~、野猿ちゃんったら!」
ねえ~とフェスと頷き合うバーナル。
「あいつらなんか、とっくの昔に、あたしたちで潰したに決まってるでしょう?」
「僕はバーナルに会えてすぐに、組織を潰したいって、バーナルに相談したんだ。
それで、二人だけだと難しかったから、新しい仲間も集めて、跡形もなくあの組織は消したよ」
「あいつらの組織って、マイナーな暗殺集団だったんだけど、死体の処理を獣にさせていて、死体がない時は、辺鄙なところにあったあの孤児院の子供達を餌にしていたところだったのよね~。
本当に残虐非道な組織だったわ……」
「僕達は、そこを潰したんでフリーの暗殺者になったんだ。
フリーになった後も、僕はずっとバーナルと一緒にいたかったんだけど、バーナルはいつも『いい男~』って変な男を追いかけて、僕を置いていくんだ。
でも、今はリーリアさんがバーナルのご主人様だから、僕も一緒にいられて嬉しい」
普段、大人しいフェスが、本当に嬉しそうに笑うので、バーナルばかりか、リーリアまでも(わ、笑い顔、可愛い!!)と思ってしまった。
その後、リーリアは、バーナルがフェスのことをどう思っているのかと、フェスやルイスが買い物で不在の際、バーナルに聞いてみた。
「ねえ、バーナル。フェスのことをどう思っているの?」
「ん?あら、唐突ね~野猿ちゃん」
「うん、この前、フェスの生い立ちを聞いた時に、フェスは今でも、バーナルのこと、凄く好きだよね?
男同士だけど、将来、恋人になるのかなあと思ったの」
「そうねえ~。確かに慕われているけどね。
でも、家族的な好意でしょう?
まだあの子若いし、精神的にも幼いし、恋人には無理よ~」
「え?そうなの?
今は確かにまだ中身は幼いイメージがあるけど、あと数年でバーナルのストライクな年齢になるし、見た目も格好良くなりそうだけど、それでも?」
「う~ん、ずっと弟みたいに思っていたからな~」
「かっこよくなったらいい?」
「……そうねえ、もう少し私好みの男になったら考えてもいいわ~」
「わかった。じゃあ、バーナル好みになるよ」
「へっ!?」
何故か、買い物に行っていないはずのフェスが、二人の後ろに立って、会話に参加していた。
バーナルはびっくりして、リーリアは、あちゃーっという顔をする。
「ちょっ、フェス!?あんたいつから話を聞いていたの?」
「……『恋人には無理よ~』ってあたりから」
「ちょっと~、わりと始めから聞いていたのね!?」
「だって僕、バーナルがまた変な男についていって、置いてかれるのがもう嫌なんだ。
でも、そっか。僕がバーナル好みになればいいんだね!」
「そうだよ、フェス!バーナルも幸せになれるし、私も協力するね!!」と張り切るリーリア。
「ありがとう、リーリアさん。
でも、バーナルの好みって変なんだよね。
どうすればなれるんだろう?」と首を傾げるフェス。
「バーナルって美形好きだとは思っていたけど、男性の好み、変なんだ?」とリーリアも首を傾げる
「きぃー!あんた達!!
あたしの好みが変って何よ!?」
それから、3人でわーわー言い合いになって、その騒ぎは、ルイスが戻ってきて、止めに入るまで、楽しそうに続いた。
僕の両親は、とても素晴らしい両親だった。
父さんは、狩人で、体格も良く、とても腕っぷしも強かった。
母さんは、料理が上手で、いつもいい匂いがして、とても美しい金髪をしていた。
その自慢の両親と僕は、森の奥の方で暮らしていたが、僕が10歳になり、そろそろ街で教育を受けさせようと、街へ引っ越してきた。
ところが、街は森以上に危険だったようで、両親は、運悪く事故で亡くなってしまった。
僕の両親は、結婚に反対をされて駆け落ちをしたと聞いていた。
だから、僕には頼れる親戚もいなかった。
両親が死んだ後、孤児になった僕は、役人だと名乗っていたが、怪しい大人達に連れていかれ、街から遠い孤児院に入れられた。
その孤児院は、何故か長くいる子供が少なく、食べ物自体もあまり食べさせてくれないうえに酷く不味くて、世話をしてくれる職員も冷たい人ばかりで、お腹も気持ちも寂しい毎日を過ごしていた。
特に、僕は美味しいものばかり食べて育ったせいか、他の子達のように、我慢して出される食事を食べることがあまりできず、他の子達にあげてしまっていたので、いつも飢えていた。
ある日、僕は職員の人達に、孤児院近くにある建物の広い地下室に連れて行かれ、僕でも持てる短剣や針みたいな武器を持たされた。
その地下の部屋には、鎖につながれた狂暴そうな獣が沢山いて、「そこで一晩、生き残ったら、美味しいものをお腹いっぱい食べさせてやる」といって、僕は1人だけ、その地下室に置いてかれた。
僕は、どういうことなのかと首を傾げたが、とりあえず、扉は施錠されて、明り取りの小さな窓があったけど開かなさそうだし、一晩はここから出してもらえないことは理解できた。
部屋の中にいる鎖につながれた獣達には近づきたくないから、獣達から一番離れた位置に移動して座り、やることもないから、獣の数を数えたり、どんな種類の獣がいるかを観察したりしていた。
獣の鎖は、獣の首元から1本の柱へつながっていて、獣達を留めているその柱は、沢山の獣に引っ張られて、ちょっとグラグラしていて、この柱が外れたら、獣達が自由になってしまいそうだなと少し不安になった。
しかも、獣達はやけにグルグル鳴いて、僕と同じで飢えているようで、思わず僕と飢えた仲間同士だなってくだらないことを考えながら、獣達をぼんやり眺めていた。
そして、夜もふけた頃に、突然、地獄が始まった。
外からも操作したのか、獣をつないでいた柱がとうとう倒れたのだ。
首元の鎖を引きずりながらも、地下室内は自由に動けるようになった獣達。
自由になった飢えた獣が何をするかなんて、決まっている。
自分より弱い生き物を狩って、食べるんだ。
生きるために……。
その地下で、一番弱い生き物だと思われたのは、当然、僕だ。
多くの自由になった獣達が僕に襲い掛かってきた。
なるほど、「一晩生き残れたら」と言った意味がやっとわかった。
生き残れなかったら、僕はこいつら獣の餌で、もし生き残れたら……。
その後、僕は両親への感謝の気持ちでいっぱいになりながら、持っている武器をフルに活用して、襲い掛かる獣達を捌いていった。
父さん、ありがとう!
物心ついた頃から、僕を森へ狩りに連れて行ってくれて。
まだ何もできない頃は、近くの木の上に避難して、父さんが狩りする姿を眺めて、やり方やコツを覚え、家でも夕方に母さんが料理している間に、小さな僕でもできる剣の使い方や獣の懐に入りこんで獣を狩る方法や攻撃魔法なども教えてくれた。
おかげで小さい頃から、父さんと一緒に狩りをしていた僕だから、今、この獣達を冷静に仕留められる。
母さん、ありがとう!
一度倒れた獣が単に失神しただけで、捕まえたと思った後に襲い掛かってくる可能性もあるからと、その対策の防御魔法や、どうすれば獣が確実に息の根を止められるか、いろんな獣の急所などをよく教えてくれて。
おかげで、非力な僕でも、仕留めそびれた獣から防御魔法で身を守り、この渡された針のような武器で獣の急所を刺して、動きを止めて、短剣で息の根を止めることがスムーズにできた。
また、肉を捌くのも母さんとよく一緒にやったから、仕留めた獣をさっと美味しそうな部分をだすように瞬時に捌けば、その捌かれた獣の肉に他の獣はひきよせられて、僕を襲ってくる獣を減らせていった。
そのうち、残った獣達は、僕が弱いという認識が薄れたのか、もう僕には襲い掛からずに、既に死んだ獣を食べ始めたので、僕は獣にやられた傷を応急処置しながら休み休み、獣を仕留められるようになった。
さすがの僕でも、そこにいたるまで、かなり出血して、ちょっと死にかけていたから……。
一晩、明けて、僕をこの地下に閉じ込めた奴らが扉を開けて、僕が生きていることをとても喜んでいた。
「やった!生きてる!!こいつで二人目だな。『バーナル』以来の快挙だ!」
「しかも、こいつ、死にかけちゃいるが、全部の獣を確実に仕留めていやがる。
これは『バーナル』以上の暗殺者になるぞ!さすがだな~」
「だから、見込みがあるって言っただろう?
こいつが肉を捌くのを見た時から、腕のいい暗殺者になるって!」
そいつらは嬉しそうにして、出血でしんどい僕を連れて地下室を出て、知らない建物に連れて行って、丁寧に手当てしてくれた。
約束通り、美味しいものも食べさせてくれて、僕はこれから暗殺者として生きていかないといけないと教えられた。
拒否するなら、今度は僕を縛って、鎖なしの獣達の餌にすると脅された。
その時の僕は、奴らの言うことを半分しか聞いてなかったけど、ずっと、僕と同じ目にあったらしい「バーナル」という人物のことだけは、忘れられなかった。
そして、暗殺者として訓練させられ、何とか一人前になった僕は、やっとバーナルと出会えた。
バーナルは、父さんのように強く、母さんのように料理が上手く、とてもいい匂いがして、綺麗な金髪をしていた。
しかも、僕と同じ地獄をみたうえで、生き残った人だ。
こんな人に対して、僕が憧れないはずがない。
僕はバーナルの何もかもに憧れている。
それは昔から今でも変わらない。
フェスは、リーリアが「何故、フェスがバーナルに憧れているの?」と聞いたのをきっかけに、フェスの生い立ちを含めてリーリアに話してくれた。
フィスの昔話に、リーリアは「ひどい!!」とだーだーと涙を流した。
特に孤児院での飢えた時の話では、「わかる!」とヘッドバンキング並みの頷きを返していた。
「やだー、フェスあんた、私に両親を投影しているの?」とちょっと嫌そうにするバーナル。
「……いや、両親のように凄い人だって、憧れているけど、投影はしていない。
両親は両親だしね。
でも、あの地獄で、僕は正直、出血が多くてちょっと死にかけていたのに、バーナルはかすり傷だったって聞いたから、僕よりも子供の頃から強かったんだと思って、今でも尊敬している」
「あら、あの頃は強くなんかなかったわよ。
あたしのは、裏技というか、身を守る術を持っていたからよ」
「身を守る術って防御魔法ですか、バーナル?」と不思議に思い尋ねるリーリア。
「違うわ。その頃は今ほど魔法も使えなかったもん。
でも、私の亡くなった親が薬草や毒草関係の仕事をしていたから、私もそれを覚えて、身を守るために自分で薬草や毒草を採って、しびれ薬とか目くらましの薬とか作って、常に持ち歩いていたのよ」
「ほ~。子供の頃から、薬や毒にも詳しかったのですね~」
「まあね。ほら、今でこそこんなんだけど、昔のあたしは凄く華奢で可愛かったから、よくいじめられたリ、変態に襲われそうになったりしたから、身を守るために必要だったのよね」
「……あの獣たちを全部、しびれ薬や目くらましで防いだの?」と今度はフェスが不思議そうに尋ねる。
「ええ。あの部屋に入れられた時点で、嫌な予感がしたから、獣がまだ鎖につながれている間に、一晩は効くようなしびれ薬や、動けなくなる毒を塗った短剣や針で事前に刺しておいたのよ。
案の定、私の時も夜に鎖を外されたから、もし大人しくしてたら危なかったわ。
だから、まともに獣と戦ったフェスの時に比べたら、ずるよね?」
そう言って、フェスが憧れる程ではないのよ?とため息をつくバーナルに、リーリアは顔色が蒼くなる。
「いやいや、バーナルさん!?
普通の10歳そこそこの子供は、そんなことできませんよ。
まず飢えた獣に近づくっていう選択肢はないですからね。
それをできたバーナルは、子供の頃から察しが良いというか、危機管理能力が高過ぎですよ!」
「まあ、そうなのかしら?」
フェスとリーリアは、うんうん、凄すぎ!と強く頷いた。
「そもそも、あの獣を倒せるだけの数の毒を持っていたことも凄いな」と感嘆するようにバーナルを褒めるフェスに、今度はバーナルが首を傾げる。
「え?だって、獣って5匹位だったでしょう?」
「……5匹だったの?」と驚くフェス。
「ええ。フェスの時はもっといたのかしら?」
「……僕の時は確か13匹いた。
数えたから、覚えている」
「じゅ、じゅうさんだと~!?
あいつらめ!!
フェスを殺す気満々だったな!?」
「そういえば、僕が助かった後に、飼ってた獣の数が増えすぎて、共喰いをさせるつもりもあったって、あいつら言ってたな」
「あ・い・つ・ら~!!」
怒り心頭のバーナルに、ふっと微笑むフェス。
「それでも、僕のバーナルへの憧れはなくならないよ!」
「やだ!何、この子も可愛い~!!」
フェスの頭をなでるバーナルの横で、ふとリーリアは疑問が浮かんだ。
「ね、ねえ!そいつらって今も子供達に、そんなことしているの!?
それなら、すぐに止めさせないと!!」
「やだ~、そんな訳ないわよ~、野猿ちゃんったら!」
ねえ~とフェスと頷き合うバーナル。
「あいつらなんか、とっくの昔に、あたしたちで潰したに決まってるでしょう?」
「僕はバーナルに会えてすぐに、組織を潰したいって、バーナルに相談したんだ。
それで、二人だけだと難しかったから、新しい仲間も集めて、跡形もなくあの組織は消したよ」
「あいつらの組織って、マイナーな暗殺集団だったんだけど、死体の処理を獣にさせていて、死体がない時は、辺鄙なところにあったあの孤児院の子供達を餌にしていたところだったのよね~。
本当に残虐非道な組織だったわ……」
「僕達は、そこを潰したんでフリーの暗殺者になったんだ。
フリーになった後も、僕はずっとバーナルと一緒にいたかったんだけど、バーナルはいつも『いい男~』って変な男を追いかけて、僕を置いていくんだ。
でも、今はリーリアさんがバーナルのご主人様だから、僕も一緒にいられて嬉しい」
普段、大人しいフェスが、本当に嬉しそうに笑うので、バーナルばかりか、リーリアまでも(わ、笑い顔、可愛い!!)と思ってしまった。
その後、リーリアは、バーナルがフェスのことをどう思っているのかと、フェスやルイスが買い物で不在の際、バーナルに聞いてみた。
「ねえ、バーナル。フェスのことをどう思っているの?」
「ん?あら、唐突ね~野猿ちゃん」
「うん、この前、フェスの生い立ちを聞いた時に、フェスは今でも、バーナルのこと、凄く好きだよね?
男同士だけど、将来、恋人になるのかなあと思ったの」
「そうねえ~。確かに慕われているけどね。
でも、家族的な好意でしょう?
まだあの子若いし、精神的にも幼いし、恋人には無理よ~」
「え?そうなの?
今は確かにまだ中身は幼いイメージがあるけど、あと数年でバーナルのストライクな年齢になるし、見た目も格好良くなりそうだけど、それでも?」
「う~ん、ずっと弟みたいに思っていたからな~」
「かっこよくなったらいい?」
「……そうねえ、もう少し私好みの男になったら考えてもいいわ~」
「わかった。じゃあ、バーナル好みになるよ」
「へっ!?」
何故か、買い物に行っていないはずのフェスが、二人の後ろに立って、会話に参加していた。
バーナルはびっくりして、リーリアは、あちゃーっという顔をする。
「ちょっ、フェス!?あんたいつから話を聞いていたの?」
「……『恋人には無理よ~』ってあたりから」
「ちょっと~、わりと始めから聞いていたのね!?」
「だって僕、バーナルがまた変な男についていって、置いてかれるのがもう嫌なんだ。
でも、そっか。僕がバーナル好みになればいいんだね!」
「そうだよ、フェス!バーナルも幸せになれるし、私も協力するね!!」と張り切るリーリア。
「ありがとう、リーリアさん。
でも、バーナルの好みって変なんだよね。
どうすればなれるんだろう?」と首を傾げるフェス。
「バーナルって美形好きだとは思っていたけど、男性の好み、変なんだ?」とリーリアも首を傾げる
「きぃー!あんた達!!
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