時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた

文字の大きさ
3 / 13

2.やり直し、そして分岐(2)

しおりを挟む
幸先悪く、定刻通り(正確には5分前)に着いたのになぜか公爵が不満そうです。

「ようやく来ましたか。リリア嬢。」
「遅かったなぁ?13時と書いてあっただろ?」

えっと…14時とありましたが、何なら今その手紙を持っていますが…喧嘩になりたくないので黙っておきます。
紹介すると、この揚げ足取りが婚約者デイヴィス・スーリアコフ。
特筆する特徴はない、強いて言えば目が細い。

「すみません、私の確認ミスでしたわ。気を付けます。」

そう笑顔で言うと2人は目を合わせて眉をしかめる。
学園で有名なかの悪女が自分の非を認めるなんて前代未聞だからな。

応接間に通され、ご丁寧にお茶まで出してくれる。

「それで、お話とは何ですの?」

僕が切り出すと公爵は深刻そうな顔をして口を開いた。

「率直に言うと、エルレルト家の令嬢にはうちの息子は少々合わないかと。」

早速…ありがとうございます!
そちらからさっさと破棄してくれて感謝しかない。

「つまり?」
「リリア、お前とは婚約破棄する。」

デイヴィスは父親の言葉に被せ、勝ち誇ったように言う。
普通ならばここで引き留めるかもしれないが…僕はで、一応公爵家の者だ。
こんなボンクラが傍にいなくても生きていける。

「分かりました。父にそのように伝えておきます。」
「は?」

そちらが持ち出した話なのにいざ軽く承諾されると逆ギレするのは貴族の習性なんでしょうか?

「まだ何かございますか?」

デイヴィスと公爵の顔は引き攣っている。いい気味だ。

「っつ…!お前のような高飛車な女と婚約してやっていたのにお礼もなしか?」
「婚約はいつでも破棄できましたし。別に私は貴方に頼んでいません。父が勝手に決めたことでしょう?」

公爵の方は顔を真っ赤にして項垂れている。
息子が一方的に婚約破棄して、簡単に捨てられて逆上している姿なんて誰の親も見たくない。
それでも彼は僕を捲し立てる。

「独断で破棄に承諾するなんて、父親になんて言われるだろうな?」
「知ったこっちゃありませんよ。それでは帰ります。」

僕は気にせず立ち上がり、スカートを正す。

「俺はエリスが好きだ。あの子を虐めるような真似は許さないからな!」
「どうぞご勝手に。」

エリスに選ばれるのは皇太子。
そのほかの男性がどれだけ健闘しても振り向かれることなんてないんだから勝手に浮かれていろ。
現実を知ることだな。
あまりにも話が短かったため外で待っていた送迎の人が驚いていたのは実に滑稽だった。








寮に帰ると一枚の手紙が届いていた。
その家紋はよく知っているものだ。

「タイミングを見計らったように…。」

開けて読んでみると叱咤の言葉が並び、スーリアコフの話もあった。
もちろん数行読んで捨てたが。
リリアから僕が大人しくなったことが父に伝わっていることがわかった以上、僕はさらに気を付けて生活しなければならない。
リリアは残念ながら賢いと言えるタイプではなく、皇太子獲得の計画もすべては父が影で彼女を操っている。
その計画の中でも僕の存在は重要で、リリアアルバートという駒を消えさせまいとまた何か仕掛けてくるに違いない。







しかし断罪日まであと3週間…そろそろ何か動きがあってもいい頃だろう。
と考えていると本当に部屋に深夜来るよう拙い手紙が届いた。

皆が寝静まっただろう夜中にエリスの部屋へ向かう。
玄関に入ると奥の部屋に豪勢で煌びやかな宝石やドレスがたくさん飾ってあるのが見える。こいつは性根からの浪費家だなぁ。
悠長な僕とは逆にリリアはイラつきが高まり玄関中をぐるぐるしている。

「お父様の言うとおりにしろよ…!そうしないと…あぁ!!」
「既に皇太子は貴方にぞっこんですよ。さん。」

その瞬間、リリアの頭に血が昇ったのを察知する。煽りすぎた。

「っつ…!あんた本当にリリア?私に歯向かうなんて生意気よ!」

そしてばつんと一発、平手打ちをかましてきた。
正直避けられた。だが、ここは食らった方が挑発になる。

「気が済みましたか?」

リリアは自分の手を見ていたがすぐに睨みを利かせる。
その目は憎悪にあふれていた。

「お前…絶対に陥れてやる……!」
「自分と同じ顔に言う気分はどうです?あぁ、やることを思い出しました!これにて失礼いたします。」

そう言ってエリスの部屋を後にし、静かにスキップで自室へと帰ったのだった。
あの顔、最高に面白い!
もうエリスリリアなんて怖くないんだ!















「どうしてなの!」

リリア・エルレルトは耐えられなかった。
計画はうまくいっていたはずだったのに、最近少しずつ嚙み合わなくなってきた。
いや、男達は自分に夢中なのは変わりない。
けれど人形が自我を持って私をあざ笑っているのだ、虫唾が走る。

「エリス…すまない。君が酷い目に合っていることは十も承知だ。だが、リリアが主犯だという確証が取れない。君たちは公爵家だ…何もなしに処罰を加えることはできない。」

カイオ・フェストゥム、学園一番のイケメンにしてこの国の皇太子。
この男の心は私の手中にあるといっても過言ではない。
だが、カイオの権力を以てしてもアルバートが尻尾を出さないかぎり断罪はできない。
あいつリリアが私の姉である事実は作り変えていないから。

「カイオ様…でも、私、あの人が学園にいると怖いわ…!あと1年も虐げられ続けなければならないの?」

ほら、うるうる上目遣いよ?
私の可憐さにもっと落ちなさい!

彼は真剣に考え、閃いた素振りをする。

「お父様は君に協力的なんだよね?」
「ええ。」
「なら1つ、リリアを追い出す方法はある。」
「何?」

カイオの頭は少々弱いが、今回ばかりは頼るしかない。

「辺境の貴族と結婚させる。結婚になると女性は男性の家に住まわなくてはならないだろう?」
「そんな都合よく相手が見つかるかしら?しかも、罰として嫁に出すんだからできるだけ相手は醜い人のほうがいいわ。」
「とっておきの人がいる。」

アルバート、女として生き一生嫁いだ先で虐げられるといいわ。
私とお父様を裏切ったこと絶対に許さない…。







しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【本編完結】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する

とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。 「隣国以外でお願いします!」 死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。 彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。 いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。 転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。 小説家になろう様にも掲載しております。  ※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

虐げられた令息の第二の人生はスローライフ

りまり
BL
 僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。  僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。  だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。  救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。  お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。        

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

処理中です...