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第13章 社会見学実習
74 実習の一部?
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『10年ほど前、出生数を増やすため、出産と育児に対する給付金を増やし、子供が義務教育学校に通うまでの間、母親の労働の義務を軽減するという法案が可決されました。しかし結果、働かずに子供を産み、給付金で生活するという未婚の女性が急増、国の財政を圧迫する状態となりました。結果、この法案は5年で廃止となり、以降は積極的な出産数増加政策はとられていません』
似たような話を、日本にいた時代に聞いた気がする。
確か20世紀後半あたりの、これもイギリスの話だ。
福祉が充実した結果、児童手当、保育料の補助等の支援で働かなくても生活可能になった。
結果、働くインセンティブがなくなり、生活を福祉に依存する層が増えて財政を圧迫。
その後制度は変わったが、今でもやっぱり似たような話はある様だ。
『イギリスでは、シングルマザーに対する福祉が充実しています。子供を持つ家庭には児童手当が支給され、さらに保育料の補助もあるため、働かなくても生活できるだけの支援を受けることが可能です』
『一方で、真面目に働く共働き家庭が最も厳しい経済状況にあるという現象が起こっています』
こんな事が書いてあるブログがあったと記憶しているし。
これと似たような話だろう、きっと。
ちょっと脱線してしまった。
取りあえず今は、移民がいないと成り立たないという状況がわかっていればいいだろう。
『ですが一部の貧困層には、新規移民を敵視する考え方が根強い状態です。以前の出産・育児奨励政策の廃止も、移民のせいだと一部勢力が喧伝しており、それを信じる者も少なからずいる状態となっています』
日本の場合は、移民に近い問題として、不法滞在外国人問題なんてのがあったなと思い出した。
正規滞在の外国人と不法滞在の外国人をわざと混同させるような言説を展開したり、どう考えてもおかしい権利を人権という名目で主張したりと、何だかなという主張を耳や目にした記憶がある。
『ペルリアでは不法移民という存在は、今のところ問題になっていません。移民であっても簡単な届け出で正規に滞在、居住が可能です。代わりに不法居住者が問題になっています。不法居住者は勤労や納税、更には子への教育の義務を果たさないだけではありません。不法居住以外の常習累犯的犯罪者が潜んでいる場合も往々にして見受けられます。ですので住民調査を行い、不法居住者の発見に努めています』
なるほど。
でもそういった層は不利益を被りそうになると、暴動とか起こしたりはしないだろうか。
海外ニュース、特にアメリカとかフランスとかからのニュースで時々見た記憶がある。
暴発的行動とかさっき説明していたけれど。
『多数の者による集団的違法行為は、大規模制圧魔法の対象となります。違法行為を行う意思をもって集合した時点で制圧は可能です。ですが個人が突如思い立って個人的犯行に走る場合は、魔法でも完全に防ぐことは出来ません。ですので新規移民と同様に住民調査で不満を持った者の攻撃対象となりやすい官庁は、警備態勢を強化しています』
「この状況下で社会見学実習をやるのも、意図的な可能性」
カタリナもきっと、似たようなことを知識魔法で知ったのだろう。
「かもね。工場見学だけじゃなくて」
私もそう、同意した。
さて、不穏ではあるにせよ、街中では騒ぎらしいものは見当たらない。
ならとりあえずは……
「危険そのものは無いみたいだね」
「同意。でも一応は警戒」
確かに警戒するにこしたことはないだろう。
ということで私は偵察魔法を起動して、上空から私を中心に20mくらいを視認出来る様にしておく。
さて、官庁街といってもポアノンは所詮、人口9,000人程度の地方都市。
5分も歩けば官庁街は終わり、公設市場が見えてくる。
ただこの大通りから見て公設市場の反対側に、微妙に不穏な空気を感じた。
場所そのものは、コリウ川の堤防に沿った小さい公園だ。
堤防に沿ってシダ系の樹木が植えられていて、中央部は砂地の広場になっている。
いつもならそれだけの、ごくなんてことない場所だ。
しかし今日は、そこそこ大勢の人が集まっている様だ。
それもあまり楽しそうな雰囲気では無い。
制服の警察官が周囲を警戒しているなんてのも含めて、不穏さありありだ。
あれも今回の住民調査に関する何かなのだろうか。
『住民調査反対派による抗議集会です』
そういった集会は、もっと煩そうな印象があるのだけれど。
『騒音は周囲に対する迷惑となるので、公園敷地外へ漏れない様に魔法を展開しています。ただし集会がある事を知っていて、話を聞きたいという意思がある者には知識魔法で確認可能になっています』
なるほど。
だから知らない人、聞く気がない人には声が聞こえない訳か。
魔法、謎技術だけれど便利でいい。
日本だと抗議の声と、その抗議に対する抗議の声でとんでもない騒音公害や治安低下を招くから。
ただ道路を挟んで移民である私達が集合するなんてのは、なかなか危ない状況という気がする。
あとやっぱり、実習を設定した者の意図も。
ただじっくりと近くで観察、なんて気は起きない。
今までの知識魔法の説明を鑑みるに、住民調査反対派には移民排斥派が多そうだ。
そして私は間違いなく移民だし、同じような服装の人間が集まっているとターゲットにもされやすいだろう。
「出来るだけ道路の右側に近寄らないで集合場所へ行くのが正解だよね、きっと」
「同意」
ただここの道路は、日本の道路のように車道と歩道がわかれている構造では無い。
走路の様に車線っぽいもので仕切っている訳でも無い。
どきどきしながら偵察魔法で四方を確認しつつ、集合場所である公設市場東側広場へと向かう。
似たような話を、日本にいた時代に聞いた気がする。
確か20世紀後半あたりの、これもイギリスの話だ。
福祉が充実した結果、児童手当、保育料の補助等の支援で働かなくても生活可能になった。
結果、働くインセンティブがなくなり、生活を福祉に依存する層が増えて財政を圧迫。
その後制度は変わったが、今でもやっぱり似たような話はある様だ。
『イギリスでは、シングルマザーに対する福祉が充実しています。子供を持つ家庭には児童手当が支給され、さらに保育料の補助もあるため、働かなくても生活できるだけの支援を受けることが可能です』
『一方で、真面目に働く共働き家庭が最も厳しい経済状況にあるという現象が起こっています』
こんな事が書いてあるブログがあったと記憶しているし。
これと似たような話だろう、きっと。
ちょっと脱線してしまった。
取りあえず今は、移民がいないと成り立たないという状況がわかっていればいいだろう。
『ですが一部の貧困層には、新規移民を敵視する考え方が根強い状態です。以前の出産・育児奨励政策の廃止も、移民のせいだと一部勢力が喧伝しており、それを信じる者も少なからずいる状態となっています』
日本の場合は、移民に近い問題として、不法滞在外国人問題なんてのがあったなと思い出した。
正規滞在の外国人と不法滞在の外国人をわざと混同させるような言説を展開したり、どう考えてもおかしい権利を人権という名目で主張したりと、何だかなという主張を耳や目にした記憶がある。
『ペルリアでは不法移民という存在は、今のところ問題になっていません。移民であっても簡単な届け出で正規に滞在、居住が可能です。代わりに不法居住者が問題になっています。不法居住者は勤労や納税、更には子への教育の義務を果たさないだけではありません。不法居住以外の常習累犯的犯罪者が潜んでいる場合も往々にして見受けられます。ですので住民調査を行い、不法居住者の発見に努めています』
なるほど。
でもそういった層は不利益を被りそうになると、暴動とか起こしたりはしないだろうか。
海外ニュース、特にアメリカとかフランスとかからのニュースで時々見た記憶がある。
暴発的行動とかさっき説明していたけれど。
『多数の者による集団的違法行為は、大規模制圧魔法の対象となります。違法行為を行う意思をもって集合した時点で制圧は可能です。ですが個人が突如思い立って個人的犯行に走る場合は、魔法でも完全に防ぐことは出来ません。ですので新規移民と同様に住民調査で不満を持った者の攻撃対象となりやすい官庁は、警備態勢を強化しています』
「この状況下で社会見学実習をやるのも、意図的な可能性」
カタリナもきっと、似たようなことを知識魔法で知ったのだろう。
「かもね。工場見学だけじゃなくて」
私もそう、同意した。
さて、不穏ではあるにせよ、街中では騒ぎらしいものは見当たらない。
ならとりあえずは……
「危険そのものは無いみたいだね」
「同意。でも一応は警戒」
確かに警戒するにこしたことはないだろう。
ということで私は偵察魔法を起動して、上空から私を中心に20mくらいを視認出来る様にしておく。
さて、官庁街といってもポアノンは所詮、人口9,000人程度の地方都市。
5分も歩けば官庁街は終わり、公設市場が見えてくる。
ただこの大通りから見て公設市場の反対側に、微妙に不穏な空気を感じた。
場所そのものは、コリウ川の堤防に沿った小さい公園だ。
堤防に沿ってシダ系の樹木が植えられていて、中央部は砂地の広場になっている。
いつもならそれだけの、ごくなんてことない場所だ。
しかし今日は、そこそこ大勢の人が集まっている様だ。
それもあまり楽しそうな雰囲気では無い。
制服の警察官が周囲を警戒しているなんてのも含めて、不穏さありありだ。
あれも今回の住民調査に関する何かなのだろうか。
『住民調査反対派による抗議集会です』
そういった集会は、もっと煩そうな印象があるのだけれど。
『騒音は周囲に対する迷惑となるので、公園敷地外へ漏れない様に魔法を展開しています。ただし集会がある事を知っていて、話を聞きたいという意思がある者には知識魔法で確認可能になっています』
なるほど。
だから知らない人、聞く気がない人には声が聞こえない訳か。
魔法、謎技術だけれど便利でいい。
日本だと抗議の声と、その抗議に対する抗議の声でとんでもない騒音公害や治安低下を招くから。
ただ道路を挟んで移民である私達が集合するなんてのは、なかなか危ない状況という気がする。
あとやっぱり、実習を設定した者の意図も。
ただじっくりと近くで観察、なんて気は起きない。
今までの知識魔法の説明を鑑みるに、住民調査反対派には移民排斥派が多そうだ。
そして私は間違いなく移民だし、同じような服装の人間が集まっているとターゲットにもされやすいだろう。
「出来るだけ道路の右側に近寄らないで集合場所へ行くのが正解だよね、きっと」
「同意」
ただここの道路は、日本の道路のように車道と歩道がわかれている構造では無い。
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どきどきしながら偵察魔法で四方を確認しつつ、集合場所である公設市場東側広場へと向かう。
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