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第14章 夏を迎える前に
85 あくまで安全のため
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まずは公設市場でお買い物から。
今週は砂糖30C、卵10個で30Cと牛乳4リットル40Cを購入。
在庫の小麦粉がぎりぎりという気がするけれど、ういろうの代わりにパンプディングやゼリーで凌げば大丈夫だろう。
出費を何とか100Cに抑えたので、残金は手持ちと口座あわせて2,300C。
これだけあれば、来週の奨学金700Cで、3,000C。
服と水着がそれぞれ1,200Cだとしても、600C余る。
スイーツ材料に200C使ったとしても、400Cは余る計算だ。
なら、買いたいものがある。
今週中でないと買えない、あれだ。
一応会計で預金をおろして、所持金を500Cにしておく。
多分これで買えるはずだ。
まだ物があったら、だけれども。
南出口から公設市場を出て、道を渡り、先を南へ向かう道へ。
目指すのはもう見えている白い建物、ヌローラ商業施設の2階だ。
ここでは3月いっぱいの間、冬・春物最終セールが実施中。
そして社会見学実習の後に見た時には、400Cで買える服があった。
もうセールも終盤だから、もっと安くなっているかもしれない。
もちろん品物がだいぶ減っている可能性もある。
それでも『多少ダサくてもいいから、施設の生徒だとわからない服』は残っているだろう。
そう、今回購入しようと思っているのはそういう服だ。
多少危うい場所に行っても、移民だとわかりにくい服。
手頃な服はあるだろうか。
今日も2階は混んでいる。
ならまだ掘り出し物があるかな。
期待しつつ、セール会場の中へ。
さて、前にもここに来たので、予習はある程度済んでいる。
買いたいのは、出来れば夏でもそこそこ着ることが出来る、3シーズン用としては薄手の服。
それも出来れば地味で、目立ちにくい服がいい。
色やデザイン的には周囲で服を漁っている皆さんを参考にすればいいだろう。
商品のほとんどはハンガーにかかった布地と、その布についている大きめの紙札という形で展示されている。
紙札には値段、仕上がり時のデザイン画、対応サイズ、材質、メーカー等が記載されている。
そう、こういった服は、すぐ着用出来る完成品ではない。
買った本人に合わせて此処で縫製し直す半製品の形だ。
完成品も少しはある。
けれど、全体の十分の一もない。
これは地球ほど人口が多くないからだろうか。
それとも縫製が魔法で裾直し以上に簡単に素早くできるからだろうか。
地球ほどの大規模な工場が無いから布が高価なのだろうか。
理由は色々ある気がする。
でも今は考察するべき時ではない。
獲物を探して狩るべき時だ。
さて、前回の予習で狩るべき場所はわかっている。
数が少ない完成品コーナーだ。
完成見本だの注文キャンセルだので完成してしまった服は、サイズや出来上がりの変更がしにくいので安い。
つまりサイズさえ合えば、他よりずっとお買い得。
そしてオーフでは、知識魔法が使える。
つまり『私にあうサイズの出来合いの服、500C以下』
と意識すれば、何処にどんな服があるか、すぐに分かる。
うん、合計4点確認。
具体的には、
① 基準1と同じ形の、グレーの長袖膝丈Tシャツみたいな服(300C)
② 上が淡青色の長袖のトレーナー風、下が紺色のイージーパンツ風のセットアップ(380C)
③ 基準2や4と似た形の、下が肘丈・膝下丈の白色Tシャツ風、上着が基準4よりやや薄い地の淡青色半袖のセットアップ(400C)
④ 淡青色で膝丈長袖、腰をベルトで少しだけ締めるゆるめのワンピースといったデザインの服(480C)
青色系統が多いのはなぜだろう。
そう思ったところで、例によって知識魔法が起動した。
『今冬の流行色が淡青色でした』
なるほど、なら問題ない。
そしてこの中では、③がデザイン的にもこれから着るにも無難な気がする。
①は下着か夏専用という感じで、かといって夏用にするには長袖というのがひっかかる。あと形がいまいち。
②は明らかにこれからの季節は暑い。あとだぼっとしていて好きじゃ無い。
④のデザインは、私が見た限りでは少数派だから。あとこういうデザインって往々にしてふと目に見える。
ということで③をハンガーごと確保し、レジの方へ。
あ、でも何か致命的な問題があるということはないよな。
知識魔法で念の為確認。
『マネキンに着せて展示する為に仕立てた服なので、一般的な体型より細く出来ています。ですので普通の大人用に仕立て直しが出来ない分、安くなっています。ですがチアキは年相応で身体が小さいので、着用に問題はありません。また服そのものには瑕疵はありません』
なら問題ないということで、レジの列に並ぶ。
5人ほど並んでいるけれど、会計兼受付は5箇所。
なのでそれほど待たないうちに、右から2番目の会計台に案内された。
「はい、400Cです。お客様ですと丈の微調整ができますが、どうしますか?」
『調整は無料です。この服の本来のサイズよりチアキさんの方が身長が低めなので、ちょうどいいサイズにするには5cmほど丈を縮めることになります』
確か私の身長、もう少し伸びるよな。
地球時代、17歳時の身長は160.2cm。
『現在の身長は、152.2cmです』
「このままでいいです」
そう言って、400Cを小銀貨4枚で支払う。
「わかりました」
服についている札に型押しスタンプで『会計済』を押して、服を渡してくれた。
受け取って魔法収納に入れ、店を出る。
これで施設の服以外でも外出出来るようになった。
しかもかなり安く買うことが出来た。
もちろん盛夏は、これでは少し暑いだろう。
水浴場開きの際に着る服は、別に購入するつもりだ。
この服は皆と同じ服が好きじゃないとか、もう少しおしゃれしたいという意味で購入したのではない。
外出時に移民とわかると危険な場合があるかもしれない。
だから安全の為に買ったのだ。
第二施設の皆は一斉試験の勉強をしているのだろうか。
そう思うとそこはかとない背徳感を感じる。
掲示板の、あのケイトの書き込み以上に空気を読まない行動をしている自覚もある。
あと新しい服を購入して、若干浮かれ気味というのも。
それでも安全の為だから必要なのだ。
そう自分に言い訳しつつ、私は施設への帰路をたどる。
今週は砂糖30C、卵10個で30Cと牛乳4リットル40Cを購入。
在庫の小麦粉がぎりぎりという気がするけれど、ういろうの代わりにパンプディングやゼリーで凌げば大丈夫だろう。
出費を何とか100Cに抑えたので、残金は手持ちと口座あわせて2,300C。
これだけあれば、来週の奨学金700Cで、3,000C。
服と水着がそれぞれ1,200Cだとしても、600C余る。
スイーツ材料に200C使ったとしても、400Cは余る計算だ。
なら、買いたいものがある。
今週中でないと買えない、あれだ。
一応会計で預金をおろして、所持金を500Cにしておく。
多分これで買えるはずだ。
まだ物があったら、だけれども。
南出口から公設市場を出て、道を渡り、先を南へ向かう道へ。
目指すのはもう見えている白い建物、ヌローラ商業施設の2階だ。
ここでは3月いっぱいの間、冬・春物最終セールが実施中。
そして社会見学実習の後に見た時には、400Cで買える服があった。
もうセールも終盤だから、もっと安くなっているかもしれない。
もちろん品物がだいぶ減っている可能性もある。
それでも『多少ダサくてもいいから、施設の生徒だとわからない服』は残っているだろう。
そう、今回購入しようと思っているのはそういう服だ。
多少危うい場所に行っても、移民だとわかりにくい服。
手頃な服はあるだろうか。
今日も2階は混んでいる。
ならまだ掘り出し物があるかな。
期待しつつ、セール会場の中へ。
さて、前にもここに来たので、予習はある程度済んでいる。
買いたいのは、出来れば夏でもそこそこ着ることが出来る、3シーズン用としては薄手の服。
それも出来れば地味で、目立ちにくい服がいい。
色やデザイン的には周囲で服を漁っている皆さんを参考にすればいいだろう。
商品のほとんどはハンガーにかかった布地と、その布についている大きめの紙札という形で展示されている。
紙札には値段、仕上がり時のデザイン画、対応サイズ、材質、メーカー等が記載されている。
そう、こういった服は、すぐ着用出来る完成品ではない。
買った本人に合わせて此処で縫製し直す半製品の形だ。
完成品も少しはある。
けれど、全体の十分の一もない。
これは地球ほど人口が多くないからだろうか。
それとも縫製が魔法で裾直し以上に簡単に素早くできるからだろうか。
地球ほどの大規模な工場が無いから布が高価なのだろうか。
理由は色々ある気がする。
でも今は考察するべき時ではない。
獲物を探して狩るべき時だ。
さて、前回の予習で狩るべき場所はわかっている。
数が少ない完成品コーナーだ。
完成見本だの注文キャンセルだので完成してしまった服は、サイズや出来上がりの変更がしにくいので安い。
つまりサイズさえ合えば、他よりずっとお買い得。
そしてオーフでは、知識魔法が使える。
つまり『私にあうサイズの出来合いの服、500C以下』
と意識すれば、何処にどんな服があるか、すぐに分かる。
うん、合計4点確認。
具体的には、
① 基準1と同じ形の、グレーの長袖膝丈Tシャツみたいな服(300C)
② 上が淡青色の長袖のトレーナー風、下が紺色のイージーパンツ風のセットアップ(380C)
③ 基準2や4と似た形の、下が肘丈・膝下丈の白色Tシャツ風、上着が基準4よりやや薄い地の淡青色半袖のセットアップ(400C)
④ 淡青色で膝丈長袖、腰をベルトで少しだけ締めるゆるめのワンピースといったデザインの服(480C)
青色系統が多いのはなぜだろう。
そう思ったところで、例によって知識魔法が起動した。
『今冬の流行色が淡青色でした』
なるほど、なら問題ない。
そしてこの中では、③がデザイン的にもこれから着るにも無難な気がする。
①は下着か夏専用という感じで、かといって夏用にするには長袖というのがひっかかる。あと形がいまいち。
②は明らかにこれからの季節は暑い。あとだぼっとしていて好きじゃ無い。
④のデザインは、私が見た限りでは少数派だから。あとこういうデザインって往々にしてふと目に見える。
ということで③をハンガーごと確保し、レジの方へ。
あ、でも何か致命的な問題があるということはないよな。
知識魔法で念の為確認。
『マネキンに着せて展示する為に仕立てた服なので、一般的な体型より細く出来ています。ですので普通の大人用に仕立て直しが出来ない分、安くなっています。ですがチアキは年相応で身体が小さいので、着用に問題はありません。また服そのものには瑕疵はありません』
なら問題ないということで、レジの列に並ぶ。
5人ほど並んでいるけれど、会計兼受付は5箇所。
なのでそれほど待たないうちに、右から2番目の会計台に案内された。
「はい、400Cです。お客様ですと丈の微調整ができますが、どうしますか?」
『調整は無料です。この服の本来のサイズよりチアキさんの方が身長が低めなので、ちょうどいいサイズにするには5cmほど丈を縮めることになります』
確か私の身長、もう少し伸びるよな。
地球時代、17歳時の身長は160.2cm。
『現在の身長は、152.2cmです』
「このままでいいです」
そう言って、400Cを小銀貨4枚で支払う。
「わかりました」
服についている札に型押しスタンプで『会計済』を押して、服を渡してくれた。
受け取って魔法収納に入れ、店を出る。
これで施設の服以外でも外出出来るようになった。
しかもかなり安く買うことが出来た。
もちろん盛夏は、これでは少し暑いだろう。
水浴場開きの際に着る服は、別に購入するつもりだ。
この服は皆と同じ服が好きじゃないとか、もう少しおしゃれしたいという意味で購入したのではない。
外出時に移民とわかると危険な場合があるかもしれない。
だから安全の為に買ったのだ。
第二施設の皆は一斉試験の勉強をしているのだろうか。
そう思うとそこはかとない背徳感を感じる。
掲示板の、あのケイトの書き込み以上に空気を読まない行動をしている自覚もある。
あと新しい服を購入して、若干浮かれ気味というのも。
それでも安全の為だから必要なのだ。
そう自分に言い訳しつつ、私は施設への帰路をたどる。
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