86 / 322
第21章 馴染みの街
第177話 相談とは何だろう
しおりを挟む
翌日。家を仕舞って、ゴーレム車に乗ってローラッテへ。
「家が増えているね」
「新しい家ばかりですね」
「この辺、半年前までは単なる山の谷間だったんだよ。此処を出る前にトンネル入口近くまでぐるっと壁で囲ったけれどそれだけで」
どれだけ急速に発展しているのだ、本当に。
「人も荷車も多いし、やっぱり製鉄所がフル稼働した影響なのかな、これ。あとで図書館に寄って統計資料を見てみようかな。速報版ならある程度最近の事まで載っているし」
なるほど。そうやってリディナは知識をアップデートさせているのか。
そんな感じで話しながら他の通行者や荷車と速度をあわせ、ゆっくりとトンネルへ向かう。
トンネルへ向かう登り口の道も私が知っている時点より整備されている。私が作った時より1腕位幅が広くなっているし、崖になっている側に落下防止用の柵が出来ていたりもする。
更に崖が崩れないよう面はきっちり1対2斜面になっているし、土では無く岩盤化されている。どうやら私達が出た後、かなり手を入れたようだ。
「ミメイさんかな」
「違うと思う。あの男爵領から戻った時はアコチェーノエンジュの森林整備で大変だと言っていたし、その後すぐカレンさんとラツィオへ行った筈でしょ。
だから別の魔法使いだと思うよ。ミメイさんが作業できる時間は無かったと思うから」
なるほど、確かに。しかしそれならばだ。
「最低でもレベル6以上の土属性使い。しっかり一枚の岩盤になっている」
「ミメイさんレベルの土属性持ちって事ね。鉱山で土属性の魔法が必要だから新たに探して呼んだのかな」
確かにそうかもしれない。私は頷いて賛意を示す。
「そんなに高レベルの魔法使いが簡単に見つかるんでしょうか」
「鉱山経営は領主の管轄だからね。領主自ら探したり、冒険者ギルドで高い報酬を提示したりして専属を探したのかも。必要だと思えば気前よくお金を出すだろうしね、ここの領主なら」
確かにここの領主はその辺はケチらないだろう。その辺は私とリディナはよく知っている。
やはり広く直されていたトンネルを経由し向こう側へ。
出たらすぐに村だった。どうやらアコチェーノと同様にトンネル近くまで村として整備されたようだ。
いや、既に村という規模では無いか、これは。
ただ製鉄所は特徴的な巨大煙突がそのまま。だから迷うことはない。
煙突の下の、いかにも製鉄所直売店という感じの建物へ。
「いらっしゃいませ。どんな御用でしょうか」
「鉄のインゴットを購入したいのですけれど。あと一応このゴーレム製造者登録証があるのですけれど、使えますでしょうか」
「ええ、大丈夫です。あ、え、でもゴーレム製造者登録証という事は、ひょっとしてフェルマ伯爵家からの依頼を受けていらっしゃったのでしょうか」
依頼? 何だろうそれは。
「いえ、私達は移動中に単に立ち寄っただけですけれども」
「そうですか。申し訳ありませんでした。それでは現在の相場はこちらになります。登録証を提示されましたので2割引きとなります」
安い。ラツィオでの値段の7割くらいだ。思わず目一杯買いそうになってしまうが自制心で少し堪える。
ここは400重で妥協しよう。
本当はその10倍位は欲しい。しかしそんなの持ち歩ける自在袋なんて無い。どう言い訳しても無理がある。だから言い訳できる範囲で我慢だ。
正銀貨32枚を支払う。
「はい、ありがとうございました。それでは商品はこちらになります」
案内されたのは以前も来た事がある倉庫だ。
「1本が1重で、ロープで20本、20重ずつ束ねてあります。
400重《2,400kg》ですとここの横5個、上から4段目までを収納下さい」
かつてインゴット運びの依頼を受けた時と同じだな。そう思うと懐かしい。
「ところで本日はローラッテでお泊まりでしょうか。他の街へ出られますか?」
「アコチェーノで泊まる予定ですけれど」
リディナがそう返答する。しかし何だろう。
「実を申しますと鉱山のゴーレムの事で、ゴーレム製造技術を持つ方に相談したい件があるのです。勿論此処の鉱山の運営者でありますフェルマ伯爵家に相談した上での事になりますけれども。
このような田舎にゴーレム製造者がいらっしゃる事は滅多にありません。ですので大変無礼だとは思いますが、もし相談するならどちらへ伺えばよいか、教えて頂ければ有り難いです」
「フミノ、教えていいかな」
「問題無い」
今泊まっているのは森林組合の空き地だ。そして私達の家も森林組合の製品。だから点検等で分解して持ってきたと言えば問題無い。
それにここの領主は信頼してよさそうだと思っている。本人には会わない方がいいと言う話もあるけれども。性格では無く外見的な意味で。
「アコチェーノの、森林組合の裏庭の一部を借りています。ただ日中は買い物や調べ物等がありますので、戻る時間はわかりませんけれども」
「森林組合ですか。わかりました。どうもありがとうございました」
彼女は森林組合と聞いた時、一瞬驚いたような表情をした。
何か特別な意味があるのだろうか。そう思いつつ普通に挨拶をして製鉄所の倉庫を後にする。
「家が増えているね」
「新しい家ばかりですね」
「この辺、半年前までは単なる山の谷間だったんだよ。此処を出る前にトンネル入口近くまでぐるっと壁で囲ったけれどそれだけで」
どれだけ急速に発展しているのだ、本当に。
「人も荷車も多いし、やっぱり製鉄所がフル稼働した影響なのかな、これ。あとで図書館に寄って統計資料を見てみようかな。速報版ならある程度最近の事まで載っているし」
なるほど。そうやってリディナは知識をアップデートさせているのか。
そんな感じで話しながら他の通行者や荷車と速度をあわせ、ゆっくりとトンネルへ向かう。
トンネルへ向かう登り口の道も私が知っている時点より整備されている。私が作った時より1腕位幅が広くなっているし、崖になっている側に落下防止用の柵が出来ていたりもする。
更に崖が崩れないよう面はきっちり1対2斜面になっているし、土では無く岩盤化されている。どうやら私達が出た後、かなり手を入れたようだ。
「ミメイさんかな」
「違うと思う。あの男爵領から戻った時はアコチェーノエンジュの森林整備で大変だと言っていたし、その後すぐカレンさんとラツィオへ行った筈でしょ。
だから別の魔法使いだと思うよ。ミメイさんが作業できる時間は無かったと思うから」
なるほど、確かに。しかしそれならばだ。
「最低でもレベル6以上の土属性使い。しっかり一枚の岩盤になっている」
「ミメイさんレベルの土属性持ちって事ね。鉱山で土属性の魔法が必要だから新たに探して呼んだのかな」
確かにそうかもしれない。私は頷いて賛意を示す。
「そんなに高レベルの魔法使いが簡単に見つかるんでしょうか」
「鉱山経営は領主の管轄だからね。領主自ら探したり、冒険者ギルドで高い報酬を提示したりして専属を探したのかも。必要だと思えば気前よくお金を出すだろうしね、ここの領主なら」
確かにここの領主はその辺はケチらないだろう。その辺は私とリディナはよく知っている。
やはり広く直されていたトンネルを経由し向こう側へ。
出たらすぐに村だった。どうやらアコチェーノと同様にトンネル近くまで村として整備されたようだ。
いや、既に村という規模では無いか、これは。
ただ製鉄所は特徴的な巨大煙突がそのまま。だから迷うことはない。
煙突の下の、いかにも製鉄所直売店という感じの建物へ。
「いらっしゃいませ。どんな御用でしょうか」
「鉄のインゴットを購入したいのですけれど。あと一応このゴーレム製造者登録証があるのですけれど、使えますでしょうか」
「ええ、大丈夫です。あ、え、でもゴーレム製造者登録証という事は、ひょっとしてフェルマ伯爵家からの依頼を受けていらっしゃったのでしょうか」
依頼? 何だろうそれは。
「いえ、私達は移動中に単に立ち寄っただけですけれども」
「そうですか。申し訳ありませんでした。それでは現在の相場はこちらになります。登録証を提示されましたので2割引きとなります」
安い。ラツィオでの値段の7割くらいだ。思わず目一杯買いそうになってしまうが自制心で少し堪える。
ここは400重で妥協しよう。
本当はその10倍位は欲しい。しかしそんなの持ち歩ける自在袋なんて無い。どう言い訳しても無理がある。だから言い訳できる範囲で我慢だ。
正銀貨32枚を支払う。
「はい、ありがとうございました。それでは商品はこちらになります」
案内されたのは以前も来た事がある倉庫だ。
「1本が1重で、ロープで20本、20重ずつ束ねてあります。
400重《2,400kg》ですとここの横5個、上から4段目までを収納下さい」
かつてインゴット運びの依頼を受けた時と同じだな。そう思うと懐かしい。
「ところで本日はローラッテでお泊まりでしょうか。他の街へ出られますか?」
「アコチェーノで泊まる予定ですけれど」
リディナがそう返答する。しかし何だろう。
「実を申しますと鉱山のゴーレムの事で、ゴーレム製造技術を持つ方に相談したい件があるのです。勿論此処の鉱山の運営者でありますフェルマ伯爵家に相談した上での事になりますけれども。
このような田舎にゴーレム製造者がいらっしゃる事は滅多にありません。ですので大変無礼だとは思いますが、もし相談するならどちらへ伺えばよいか、教えて頂ければ有り難いです」
「フミノ、教えていいかな」
「問題無い」
今泊まっているのは森林組合の空き地だ。そして私達の家も森林組合の製品。だから点検等で分解して持ってきたと言えば問題無い。
それにここの領主は信頼してよさそうだと思っている。本人には会わない方がいいと言う話もあるけれども。性格では無く外見的な意味で。
「アコチェーノの、森林組合の裏庭の一部を借りています。ただ日中は買い物や調べ物等がありますので、戻る時間はわかりませんけれども」
「森林組合ですか。わかりました。どうもありがとうございました」
彼女は森林組合と聞いた時、一瞬驚いたような表情をした。
何か特別な意味があるのだろうか。そう思いつつ普通に挨拶をして製鉄所の倉庫を後にする。
529
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。